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小さな灯り
蝋燭にマッチで火を灯す。火と表すにはあまりにも弱々しい灯火で、王宮の燦々としたランタンの明かりから考えたら、なんて弱々しいんだろうと思う。
でも、この弱い光だからこそ、肩を寄せるようにみんなが寄り添う。この瞬間は、城ではとうてい味わえない。
「物好きだね」
と彼女は笑う。王城ではパーティーのまっただ中。影武者が今頃四苦八苦しながら、僕に向けて呪詛を送っているに違いない。
孤児院で育った君は、僕の騎士となったが――僕はこの国の貧困を、まだまだ何も解決できずにいる。
火を灯すのだ。民の生活に――そんな王にならないといけない。
でも今は――。
「メリークリスマス!」
無邪気に声が重なった。
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第49回テーマ「灯す」でした。




