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霧の輪舞
雨季が一年の半分を占めるここスチームシティーでは、霧が晴れることはない。
「ジョン、準備はいいかい?」
とアーサーは鹿追帽を被りなおしながら僕に言う。君が決めたのなら僕はそれに従うだけだ。
「ここで間違いない?」
「煙草の銘柄、赤土を踏みしめた革靴、全て明確な推理の結果だよ」
霧が街灯の光を吸い上げるようで。
その刹那、朧げに影が揺れたのを僕は見逃さなかった。外殻を脱ぎ捨て、僕は吠える。
「ジョン、上出来だよ」
「なんで、バスカヴィルの魔犬が――」
吸血鬼が呻くのもお構い無しに僕は噛み砕く。吸血鬼風情が僕を知っていることに驚くが、それもどうでもいい。
君は本当に僕を退屈させない。
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第48回テーマ「霧」でした。
ちょっと余談。
アーサーは、
アーサー・コナン・ドイルをモチーフに。
ジョンは、ジョン・ワトスン博士を当然モチーフに。
そしてスチームシティーは、18世紀のロンドンをモチーフにしたのでした。
うん、この子たちはまた書きたいなぁ。




