42/99
君のご飯が食べたい
今時ね、男の人だって、ご飯を作れた方がいいと思うよ。
そう君が言っていたことを、今さら思い出す。
君の料理が一番美味しいからね、と僕は笑った。夫婦は共同作業だから、私だけ料理をするのはオカシイと言うので、僕もしぶしぶ料理を憶えた。
惚れた弱みってヤツだった。
不器用ながら、君のレシピを少しずつ憶えていったんだ。
「美味しいです」
君は言った。
「どなたか、存じませんが」
よかった、と僕は答える。懐かしい感じがしますと君が言う。それだけで充分。君に教えてもらった煮魚だ。できれば、もっと早く作ってあげたらよかった。
――君が僕を忘れてしまう、その前に。
「おいしい」
その言葉があるから、次も頑張れる。
twitter300字SS参加作品
第47回テーマ「食べる」でした。