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空が欲しい
頬杖をついて、僕はぼんやりと城下を見やる。目を盗んでは抜け出して、束の間の自由を楽しんだ日々。それすら籠の中の鳥だった、と今なら思う。
はるか彼方、地平線。その向こう側まで、行けたら――。
「なに、考えこんでるの?」
さりげなく彼女は紅茶を淹れてくれる。近衛騎士としての自覚が足りないと言う輩もいるが彼女は意に介さない。そんな彼女の奔放さはまるで、青が眩しいこの空のようで。
君の自由さはまるで広い空のようだね――。そう言うと彼女は小さく笑んだ。
「君は贅沢だね、よその国が欲しいとか言わないで、空を欲するんだね」
本当に欲しいのは君なんだけど――その言葉が漏れるより早く、僕は紅茶を飲み込んだ。
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第43回参加作品
お題は「空」でした。




