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騎士には王が必要で
王子が連れ帰った貧民街の剣客に興味があった。
先王崩御後、宰相が政を動かす。宰相は王子が何をしても興味ないという無礼な素振りで。
仕えるべき王がいない現実が苦い。
鬱憤を晴らしたかったのだ。
手合わせを申し入れ――彼女はあっさりと承諾をする。
近衛騎士と勝負をする気なのかと呆れたが――その数刻後、土を舐めさせられたのは私だった。
「まぁまぁだね」
と彼女は言う。蝶が舞うような所作は見事で。
「あの子の害になるなら切り捨てようと思ったけど、あなたは違うのね」
試されたのは、私と言うことか。
と、それを見ていた王子が手を伸ばす。勿体無いと思いながら、私はその掌に触れた。
仕えるべき王ならここにいる。
第39回Twitter300字SS参加作品
「試す」でした。




