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あなたに渡したいものがあるのに
丁寧に包み込まれた貢物は、過剰な想いがこめられているのを実感する。
送り主は、どれ程の気持ちをこめて贈答しようとしたのか。包装に触れるだけで、電流が走るのを感じる。
美しい金糸に織り込んだ感情は溢れんばかりの――嫉妬で。
「呪いの解除が完了しました」
その瞬間、火の粉が舞い、激しく燃え上がった。
「君は寄せられる感情をもう少し疑うべきだと思うよ」
「無下に断るわけにも行かないだろ?」
そんなやり取りを聞きながら、宮廷魔術師は小さく息をつく。近衛騎士たる彼女を陛下は寵愛しているのは見るに明らかで。貴族達が面白い訳がない。
(私だってそうなんですよ?)
昔から慕っていても、陛下にこの想いは届かない。
第34回twitter300字SS参加作品
テーマ「渡す」




