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全ての災厄を
一想いに、呪符を破り捨てる。この里には、全ての災厄を封じると口伝だけが残る。
愚かと思うが、この手は止まらない。
禁書となった魔術書を漁る為だけに、国は私たちを捨てたのだ。
呪符は繭のように、神木からぶら下がって。
躊躇わず、散り散りに呪符を破り捨てる。
裂け目から紅い目が覗き混み――。
きゅんとそれは鳴いた。
「きゅん?」
龍の赤ん坊が、尾を振るのが見え――私は目をパチクリさせた。
龍の背に身を任せ、大空から見下ろす。私の里が全ての災厄を封じる神龍が眠る地と聞いたのは、つい最近のこと。
『どうせなら、全ての災厄を払おうじゃないか』
君がそう言うから――是も非もない。