表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いまどきサンタのハイテククリスマス事情

作者: 時田翔

 みなさんサンタクロースがどこから来るのか知っていますか?

 サンタさんは、じつは宇宙から、やって来ているのです。

 きょうは誰にも秘密のサンタさん事情を、ちょっとだけおはなししましょう。


 今日は十二月二十一日、日曜日。もうすぐクリスマスがやってきます。

 だれも起きていない朝はやく、一匹のトナカイが住宅街をあるいていました。


 かっぽ、かっぽ、かっぽ……


 日曜日ということで、道はだれもあるいていません。

 トナカイは、ゆっくりと歩きながら立ち並ぶ家々をながめていきます。


 かっぽ、かっぽ、かっぽ……


 わざわざ隠れながら歩くより、どうどうとあるいた方が、あやしまれないのを、トナカイは知っていました。

 なぜなら、すぐ近くに森があるからです。

 もし見つかってもシカのふりをしてあわてて逃げれば、それいじょうは追っかけてきません。


 トナカイは、サンタさんから、たいへんな役目をもらっていました。


「ここには子供が一人……二人。あっちには一人。部屋の大きさは……こんな感じか。しかし、そっちの家はずいぶん散らかってるな」


 そう、トナカイさんは、赤外線センサーとX線透過装置を使って、家に子供がなんにん居るかとか、へやの大きさとかをしらべていたのです。


「うむ、大体こんなもんだな」


 トナカイさんは角を曲がって、いつも人があまりいない広場に向かいます。

 そこには既に数匹のトナカイさんが役目を終えて待っていました。


「J国B-283地区の探査終了しました!」

「うむ、こちらも終了した。では基地に帰投するぞ!」

「イエッサー!」


 トナカイさんたちは、つぎつぎと空へ飛びあがって行きました。

 青空にトナカイさんの茶色は目立ちそうですが、そこは光学迷彩とステルス機能で万全です。

 視認もできません。


 しゃんしゃんしゃん……

 しゃんしゃんしゃん……


 首に付けた鈴を誇らしげに鳴らしながらトナカイさんたちが駆けて行きます。


 鳥よりも高く、雲をこえ、大気圏を抜けて、まだまだ走っていくと、やがて衛星軌道上にサンタさんたちの基地が見えてきました。

 もみの木のかたちをした基地は、ゆっくりと回りながら遠心力で内がわに重力を発生させています。

 トナカイさんたちは、影響の少ない根っこの部分から基地へと入っていきました。


 基地の中はクリスマスイブに備えて、準備でおおわらわです。


「R国の気象衛星を捕捉しました!」

「よし、飛行機が近づかないようにダミー低気圧のデータを送り込んでおけ! 二十四日だぞ、日付を間違えるなよ」


「A国のスペースシャトルが接近中です」

「着艦用のガイドビーコンを出せ! 港に誘導するんだ」


「C国のものと思われる探査衛星が接近中です」

「チャフを撒け、位置を気取られるなよ」


 みんな忙しそうに、いったりきたりしています。

 もうハチの巣をつついたようなおおさわぎです。


 もみの木の基地に、大きなスペースシャトルがはいってきました。

 クリスマスに配るプレゼントを運んできたのです。


 実はスペースシャトルには、設計図に書いてない部屋があって、そこにたくさんのプレゼントが入っています。

 そして、サンタさんたちにプレゼントをわたしたら、その代金をもらって地球へもどって行くのです。


 クリスマスが近づくにつれて、色んな国からこうしてロケットや衛星が入ってきます。

 もみの木の中は、子供たちにわたすプレゼントでいっぱいになりました。



 いよいよクリスマスイブの夜がやってきました。

 サンタさんたちも、トナカイさんたちも、いまかいまかと張り切っています。

 プレゼントを詰め込んだ袋を背負って、それぞれのソリ型突入艇に乗り込みました。


「さあ、いくぞ」


 サンタさんとトナカイさんを乗せたソリ型突入艇は、次々と大気圏に突入していきました。

 大気圏に突入するときは、とても暑いです。

 でもサンタさんが着ている服は耐熱・耐圧構造なのでへっちゃらです。


「反重力装置オンじゃ!」


 やがて雲を突き抜け、プレゼントを配る町が見えてきたことろで、サンタさんはソリについているボタンを押しました。

 すると、ソリの落ちる速さがゆっくりになり、なんと空で止まってしまったのです。


 ソリには反物質を閉じ込めた真空の部屋がついていて、これが重力と反発して浮かんでいられるのです。

 しかもに高度計と連動しているので、地表に近いほど強い力で反発するため、どんな高さでもおなじように浮いていられます。

 サンタさんたちの、じまんの機械のひとつです。


「さあトナカイたち! 仕事だぞ!」

「イエッサー!」


 サンタさんのかけごえに、トナカイさんたちは、げんき良くへんじをしました。

 そしてトナカイさんたちに引かれたソリは素晴らしいスピードで夜空を駆けていきます。


 しゃんしゃんしゃん……

 しゃんしゃんしゃん……


 トナカイたちは首につけた鈴を鳴らしながら、一生懸命ソリを引きます。

 前もって気象衛星に低気圧で雪がいっぱい降るぞとウソの情報を流しておいたので、飛行機も通りません。

 サンタさんたちは、それぞれ決められた町へと飛んでいきました。


「まずは、この家じゃな」


 すっかり夜もふけた町は、おとなも子供も、みんなすっかり眠っています。

 サンタさんは、とある家のまえでソリをとめました。

 この家には男の子がひとりいるはずです。


 いまの家は、むかしの家とちがってエントツがありません。

 でもだいじょうぶ。

 サンタさんには、こんなときに使う、ひみつの機械があります。


「部屋の広さは……ベッドがここで、机が……これでよし。いってくるぞ」


 サンタさんは、腕にはめたわっかのようなものをぶつぶつ言いながらいじっていたかと思うと、いきなりすがたが消えてしまいました。

 いえ姿が消えたのではありません。

 サンタさんは、あっというまに子供のいる部屋にいどうしてしまったのです。

 そとで待っているトナカイさんに、お部屋にあった、あたたかい空気がとどきました。


 これこそサンタさんのひみつの道具のひとつ、空間双転移装置です。

 決められた場所と、サンタさんのからだをそっくりいれかえて、サンタさんが好きなところに移動できる機械です。

 これがあれば、エントツがなくてもへいきです。

 しかもまったく音がしません。

 静音設計もばっちりです。


「ほっほっほ、メリークリスマスじゃ」


 よく眠ってる子供のかおを見ながら、サンタさんは机の上にプレゼントをおきました。

 おきたときの、よろこぶ顔が目にうかびます。

 サンタさんは、まっしろなヒゲをゆらして、にっこり笑いました。


 そして、またわっかをいじって、外にもどってきました。

 そとの空気がはいって、ちょっと寒かったかもしれませんが、これはしかたのない事です。


「さあトナカイや、つぎの家に向かおうかの」


 サンタさんたちは、一軒ずつ子供たちのところにプレゼントをくばって歩きました。

 こうして今年のクリスマスもぶじに終わりました。



 ところで。

 サンタさんたちは、プレゼントを買うお金をどうしてるのか知っていますか?


 じつはサンタさんたちは、朝になって起きてきた子供たちがプレゼントを見たときのよろこびのエネルギーを基地にためておくことができるのです。

 そしてそのエネルギーは色んな国が買っていって、じぶんの国でつかうのです。


 とくにJ国は、これで計画停電をしなくてよくなったと、おおよろこびです。



 だからみなさん。

 もしクリスマスの日の朝にプレゼントが置いてあるのを見つけたら、いっぱいよろこんであげてくださいね。

 きっとサンタさんも、まわりのみんなも幸せな気持ちになるでしょう。


 メリークリスマス!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] また立ち寄らせていただきました。 想像以上にハイテクで驚きました(笑)しかも昨年のイブに更新されたんですね。夢があります(笑) 世の中のハイテク機器が、全部こういう使い方をされたら、世界は平…
2015/06/21 18:27 退会済み
管理
[一言] どうも、marco8です。 覗きに来ました^ ^ サンタと言うよりは特殊部隊、または泥棒のような感じで笑いました。あと、トナカイの堂々たる行動もとても可笑しかったです。 かっぽかっぽ………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ