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おかしな転生プロジェクト  作者:
侯爵令嬢リオレッタ
8/12

6話 困ったちゃんの押し付け合い

 キラキラとエドワードの運命の出会いだ!

 などと三次元にときめかないリオレッタが浮かれるはずもない。

 リオレッタは頭の回転が鈍いわりに、悪知恵がよく働く、ということもないので、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

 そんな様子のリオレッタを、不貞の場を暴かれて呆然としていると捉えたエドワードは苦々しく呟いた。


「よりにもよって相手がセドリックの従僕とはな」


 人払いまでしていたのだ。何かあると疑われても仕方のない状況であり、弁解の余地もなかった。それでもこれを認めてしまえばまずいことになる。

 このままでは二人とも危険だ。リオレッタは滅多に使わない頭をフル回転させた。

 そうだ、原作では二人は恋に落ちるのだから、決して相性は悪くないはず。この場を乗り切るためにはキラキラにエドワードの相手をしてもらおう。

 リオレッタはキラキラの中身が由樹であることを全く考慮していなかった……。


「逢引ではありません。ゲキカワさまに相談に乗って頂いていただけです」

「ほう?」

「ご覧の通り、ゲキカワさまは見目麗しいお方。是非エドワードさまのお話相手になっていただければと……」


 エドワードは顔がよければ男でも女でも構わず食う無節操な奴だ。この提案にもきっと乗るに違いない。リオレッタは確信していた。

 しかし肝心のエドワードは喜ぶどころか無表情になっていた。


「つまり、お前が私の遊び相手を探してくれたと言うわけか?」

「はい!」

「ふざけるな!!」


 突然激昂したエドワードは、リオレッタに向かって拳を振り上げた。まさか怒るとは思っていなかったリオレッタは為す術もなく殴られてしまった……りはしなかった。

 キラキラがすんでの所でエドワードの拳を受け止めていたのだ。


「いくらリンスター公とはいえ、女性に乱暴はおやめください」


 エドワードはキラキラを睨みつけると、掴まれていた拳を振り払った。


「人の婚約者に手を出す恥知らずが、私に対して意見する気か。ふてぶてしい下郎め」


 キラキラはエドワードの言葉に反論することなく、神妙な顔を作ってリオレッタを振り返った。


「こうなったら本当のことを言いましょう。よろしいですね、ダークサイド嬢。恥ずかしがっている場合ではないのですから」

「え? あ、はい……」


 キラキラの鬼気迫る声音に気圧されて、リオレッタは反射的に頷いてしまった。

 ここが莉緒の小説が元になった世界で、自分たちは転生者ということを話すつもりだろうか。そんなことを言っても頭のおかしい奴としか思われないだろう。もしかしてそれを狙って話すつもりだろうか。ものすごく屈辱ではあるが、そうすればエドワードから解放されるかもしれない。でも恥ずかしいって何のことだろう。いや、確かに恥ずかしい話には違いないが……。


「ダークサイド嬢はリンスター公とのことでお悩みでした」

(は!?)


 一体何を言い出すんだと、リオレッタはぎょっとした。いやな予感しかしない。


「私とのことだと?」

「リンスター公との仲を深めたいが、上手くいかぬと。それで僭越ながら私が男心と言うものをお教えしていたのです」

(何て事を言ってくれるんだ! ヨッシーの裏切り者!)


 リオレッタは、キラキラをエドワードに差し出そうとしていたことを棚に上げて憤った。

 しかしキラキラの言い訳は、エドワードの怒りを一先ず静めるのに役立ったようだ。エドワードは胡乱な眼差しをリオレッタに向けていた。

 どうしてくれよう、どうしよう、と慌てふためくリオレッタに、キラキラの無情な指示が小声で入る。


『恥ずかしそうに俯け!』

『ええー……』


 もうやけくそだ! と指示に従おうとしてリオレッタは顔を俯けた。その直後、リオレッタは突然の目眩に襲われくずおれてしまった。


『マリオ!』

「リオレッタ!」

(あ、あれ……何で……)


 リオレッタが倒れる寸前、キラキラが支えたので事なきを得たが、エドワードも支えようとしたらしく、差し出した手が行き場を失っていた。

 おかげでエドワードの怒りがぶり返したようだ。拳を握り締め、今にも殴りかかりそうな雰囲気になっている。

 二人はそんなエドワードの様子にまるで気がついてはいなかった。キラキラは慌てていたし、リオレッタは目眩でぐらぐらしていてそれどころではなかったのだ。


 大人しくキラキラの胸に身をゆだねるリオレッタ。そして彼女をやさしく抱きかかえ、何事かを熱心に呟く見目麗しい男。エドワードの目には、二人がこの上なく仲睦まじい恋人同士に見えた。


「やはりセドリックの手の者が言うことなど信じられぬ。貴様ら、二度と私の前に姿を現すな!」


 そう言い残し、エドワードは乱暴に扉を閉めて去っていった。


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