第四話
前回、荊州を攻めてきた黄巾党は、孫策軍が撃退した。
しかし、それは黄巾党の暴乱の一部でしかなかった。爆発的な速度で、暴乱が拡大した。それを鎮圧するべく、漢王朝が官軍を形成し、黄巾党と解決した。
しかし、その数と、官軍の腰抜けぶりにより、官軍は各地で敗退。黄巾党はその勢いのまま、規模を拡大させていった。
しかし、その中でも、許昌の曹操。袁術の従姉である、北河の袁紹、幽州の公孫賛。義勇軍の結成し、各地で連戦連勝を収めている劉備が頭角を顕す。そんな英雄たちの活躍により、黄巾党の勢いも衰えの兆しを見せていた。
「あっ……孫策様が帰ってきましたよ。お帰りなさ~い♪」
「ただいま……」
「お帰り。……その顔だと、今回もまた何か無茶を言われたようね」
「黄巾党の本体を叩けだって。……無茶言ってくれるわよ。ホント」
本体を叩くだと?無茶がすぎる。噂では、今までの数とは比にならない聞いたぞ。
「本隊をじゃと?……話にならんぞ。大賢良師が率いる本隊は、噂では二十万とも三十万とも聞く。……適うわけがない」
「普通ならそう考えるんだけどね。……あのバカ二人はそんなこと考えてないみたい」
「あ~……あの二人って正真正銘のお馬鹿さんですもんねぇ」
「迷惑な話じゃな。……それで?策殿はどうするおつもりじゃ?」
「とりあえずみんなを呼び寄せてから考えるわ」
「みんな?ということは……旧臣を集めることに関して、袁術が許可をだしたのか」
「ええ。……バカよね、ホント」
「いくら何でも、馬鹿すぎる気がしますが」
「だが、その馬鹿さ加減は有り難い。……これで軍が増強できるというものだ」
これでやっと、少しはまともに本隊と戦えるか。でも、数は向こうが上なのは変わらないが。
「それでは~、早速興覇ちゃんに周泰ちゃんに凌統ちゃん、孫権様に尚香様に使者を出しますね~」
「頼む。……それで、出陣はいつにする」
「全ての準備が整うまで出陣しないわ。……袁術にも伝えてあるから、しばらくは何も言ってこないでしょう」
「それは有り難いですねぇ~。では私は使者の選定と兵站の準備に取りかかりますね」
「策殿と公謹には軍略の決定を頼もうかの」
「了解。部隊の合流は行軍の途中で行うから、そのつもりで居なさい」
「分かったわ。ならば軍の編成が終わり次第、出陣しましょう」
「了解」
ここからが正念場だ。この戦で勝てば、独立への道が開けてくる。
「いよいよ独立に向けて動き出せる。皆、私に力を貸してちょうだい」
「当然だ」
「うむ」
「はい♪」
「御意」
これを号令に各々が動き出した。それと、尚香様は、今回の戦には呼ばない事となった。理由は、今回のことで何かあっても、孫家を終わらせないためだ。
目的地は冀州。目標は、黄巾党主力部隊。圧倒的な兵力差で、各地に散っている旧臣たちが集まってくるが、時間が掛かるらしく、初戦は現状勢力で、出城に籠もっている黄巾党の殲滅という方針となった。
そして現在はその途中で昼食を食べていた。
「せーつな。ご飯はどう?美味しい?」
背中にくっつきながら、雪蓮様が声をかけてきた。背中の柔らかい感覚は気にしたら負けだ!
「はい、美味しいですよ」
戦う前にまともな食事をする事はそうそうない。そういえば、呉に帰ってきてから、まともな食事を食べているな。
「それより、何か用でもあるのでしょう?」
「分かる?」
「勘です」
「そう。それでね、もうすぐ蓮華が来るのよ」
「…………………」
「まあ、とりあえず知らせておいたからね」
そして、そのまま去っていった。何でだろう……前の冥琳殿の時の出来事と、同じようなことが起こりそうな気がする。
食事を終え、再び行軍を開始した。
「久しぶりの戦か……」
「どうした?」
「いえ、……ただ、しばらく戦ってないなと」
「そうだったな。お前は各地を転々と移動していたからな」
「まだ、起こっているのですか?」
「いや、別に。そろそろ斥候が帰ってくる。戦闘準備に取りかかろうか」
そう言った後、各部隊に指令を伝えるための伝令を各所に放った。だが――
「前方に黄巾党の分隊を発見しました!向こうもこちらに気付いているおうで、城をでて布陣するつもりのようですが、孫策様が……!」
「孫策がどうした?」
「前線部隊を率いて先行してしまって……!」
「何っ!?」
「おいおい……」
何をやっているんだあの人は!?
「全く、冥琳殿、俺が先行します」
「頼むぞ」
「御意。蒼流四神技 白虎!」
足の裏に氣を集め、それを爆発させ、加速した。
「見つけた!」
前方に雪蓮様の牙門旗を見つけた。この距離だと、冥琳殿たちが追いつくには時間が掛かるか。
「待ってください、雪蓮様!」
「無理だって。一度走りだした兵を止めたら、折角の突破力が無駄になるでしょ」
全く、仕方が無いお方だ!
「分かりました。同行します。ですが、無茶だけはしないでくださいよ」
「分かったわよ。際、刹那、行くわよ!」
「心得た!」
「御意!」
これだと、後で絶対に冥琳殿に怒られるな。だが、今は目の前の敵に集中する!
「蒼流抜刀術 刃!」
「ぐふっ!」
「ぐはっ!」
「ぐえっ!」
刃は攻撃力だけを追求した抜刀術で、氣で作った刃を飛ばす技。その刃は貫通性にも優れていて、一気に五人は貫ける。
「はあああぁぁぁ!」
雪蓮様も次々と敵を斬り続け、その背中を際殿が矢で援護している。
「破龍咆哮弾ッ!」
「ぐおっ!」
「爆ぜろ!」
ドンッ!
圧縮した氣を目の前の敵にぶつけて、その氣を爆発させる。その爆発で、周りにいた敵を巻き込み、一掃する。
「強くなったわね、刹那!」
ザクッ!
「雪蓮様こそッ!」
グシュ!
「借りるぞ」
殺した敵の剣を二本持ち、右手の指の間に挟む。(戦国BASARAの伊達政宗の六爪流の持ち方)
「破龍爆砕爪ッ!」
上に向けて斬り上げ、その斬撃を飛ばす。
「ぐふっ!」
「ぐはっ!」
「ぐえっ!」
斬撃は三方向に別れ、それぞれ敵を斬り裂く。
「爆ぜろ!」
そして、その斬撃が爆発を起こし、敵を巻き込む。
「チッ!この剣では、一発が限界か」
破龍爆砕爪は、氣を使う技で、高濃度に圧縮した氣を剣に纏わせ放つ。そのため、普通の剣では一発で剣が折れてしまう。斬冥は、氣を纏わせる事を前提に打たれた剣で、そう簡単には折れる事は無い。
「刹那!あれをやるわよ!」
「あれって……まさか……」
なんか、嫌な予感がするだが……
「そうよ。あれよ♪」
やっぱりかよ……
「でも、練習してないんですよ?」
「大丈夫よ。愛の力なら可能よ♪」
愛の力って……姉上の見よう見まねだけど、やってみせる。
「分かりました。やりましょう」
「そう来なくちゃ♪ちゃんと着いてきなさいよ!」
「御意!」
体勢を低くし、雪蓮様と同時に飛び出す。
ザシュ!
ザシュ!
ザクッ!
ザンッ!
ザシュ!
ザクッ!
ザクッ!
ザシュ!
ザンッ!
ザシュ!
「「烈・瞬功十刃牙!!」」
「ぐあっ!」
「ぐふっ!」
「があっ!」
一瞬にして、多数の賊を斬り、賊は数秒後に切断された。
この技は、姉上と雪蓮様が遊び心とひらめきによって編み出された技だ。お互いが、お互いを斬らないように高速で動き、敵を切り伏せる。この技の難しい所は、高速で動き、相手を斬らないように動かないといけない。そうするためには、お互いのタイミングに合わせないといけない所だ。まさか、一発本番で成功するとは……
「言ったでしょ。愛の力よ♪」
「冗談を言うよりも、敵を斬ってください!」
「結構本気で言ったのに……(ボソッ」
「何か言いましたか?」
「何も!」
さっきよりも、数は減ってはいる。そろそろ、冥琳殿も来るな。
「際殿。残りの矢の数は?」
「もう、ほとんど残っておらん!」
「もうすぐ冥琳殿が来ます。それまで持ちこたえてください!」
「分かっておる!」
「皆!もうすぐ援軍が来る。それまで持ちこたえろ!」
「「「「「応ッ!!」」」」」
士気は上がったものの、数ではこっちがまだ不利か。
「蒼流四神技 朱雀!」
氣で作った、朱雀で敵を薙ぎ払う。今更だが、俺たちは黄巾党に囲まれている。
「後方より砂塵を確認」
「旗は?」
「周、陸、の旗。周瑜様と陸遜様です」
やっと来たか。
「雪蓮様!」
「なに?」
「冥琳殿たちが来ました。ここは一旦、引きましょう」
「分かったわ。皆のもの、引くぞ」
「退路を拓く。蒼流四神技 青龍!」
斬冥に氣を集め、突きと同時に斬冥から氣でできた龍が現れ、敵を薙ぎ払う。青龍は、朱雀と同じだが、一撃の範囲が狭いが、その代わり射程距離が長いため、退路を拓くには効果的な技だ。
そして、俺たちが引いた事をいい事に、すぐに追撃をかけようと、攻めて来た。だが、それを援軍が許すはずも無く、矢の雨が黄巾党を次々と討ち取り、しばらく経つと黄巾党は殲滅された。
とりあえず、初戦は勝利はした。