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知る者、知らない者  作者: 螺旋の凡人
~第1章~
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第7話 大会Ⅲ

「カオルちゃーん時間だよー、あり?いない。シオンまで…何処行ったんだろ?…トイレかな?」


頼んでいた時間になり雪奈ちゃんが呼びに来たが、丁度死角になる位置にいる私に雪奈ちゃんは気が付かない。


「―っ」


「?いまカオルちゃんの声…気のせいかな?さてとトイレにでも行ってるのかなー」


私の周りには囲むように数人の人影がある。


「んーんー」


「ハハッ、行っちまったな」


私の口を塞いだ男があざ笑いながら言った。


「パッ、何よあなた達!!こんなことして何のつもりよ!!」


「まあ、そんな怒んなよ。別にあんたに何かしようってわけじゃねぇんだからよ」


「じゃあ何が目的なの?」


「その前に、まずは自己紹介といこうぜ。オレは北湖(きたうみ)高校の相坂(あいさか)ってんだ。アンタは天ノ上高校の化灰薫だよな?」


男――相坂は私の拘束を解いてそう言った。


「そうよ。それで目的は何?」


「なーに、チョットばかしアンタに頼みごとがあってな。それさえ聞いてくれりゃあ、オレ達は何もするつもりはねぇ」


「…何よ頼み事って」


「おっ。聞いてくれる気になってくれたみてぇだな。いや実はな、次のお前の対戦相手ってのが今日初試合のオレの彼女なんだわ。だから、オレとしては恋人に勝って欲しいわけですよ」


「それが…何?」


「さっきまでは何とか勝てたけど、アンタの試合見たらかなり強いから、たぶん京子―ああオレの彼女の名前な―だとアンタに勝てねぇと思うんだ。そこで初めの頼み事に戻るわけよ。アンタが棄権すれば京子は不戦勝でベスト8入りするんだ。初陣で入賞なんてなかなか魅力的だろ?」


初めは言っていることが理解できなかった。

つまりなに?こいつは私に試合に出るなって言いたいわけ?

でも、そんなことしたら私たちは条件を満たせなくて廃部になっちゃう!!


「絶対にイヤ!!こっちにはこっちの事情があるの!!」


「そこを何とかできねぇか?アンタ左手怪我してあと一試合しかできねぇんだろ?」


なんで?なんでこいつがそのことを知ってるの?四音君は誰にも言うはずがないし…


「何のこと?」


「隠さなくたっていいんだぜ。実は、さっきアンタともう一人男が話してるのをたまたま聞いちまってな。それで、どうせなら一試合しかできないヤツより、勝てるかは分からねぇ全力で試合に臨めるヤツが出場した方が道理ってもんじゃね?って思ってよ」


それを聞いて私の体は緊張した。


話を聞かれてた!?まずい…でもここで引くわけにはいかない。


「だから何?私がその一試合を全力でやれば、道理に反しないから何の問題もないわ」


「チッ、テメェ自分の立場理解できてんの?こんな誰も来ねぇ所でナマ言ってっと、こっちも何するか分かんねぇぞ?最悪、力づくになっちまうぞ?」


「ふんっ。私はそんな脅しには絶対に屈しなんっ!」


「あんまりデカい声出すんじゃねぇよ。黙ってねぇとこの左手二度と使えなくなっちまうぞ?」


「―っーっ」


(こんな奴等に…)


「ハッ!!みんな見てみろよ。コイツ泣いてやがんぜ。」


「「「ハハハハハ」」」


周りの男達も一斉に笑い出す。


「さっきまでの威勢はどこ行っちまったんですかー」


相坂がまた私の口を手で塞いできた。


「っ!っ!」


「しっかしどうすっかなぁ。折角の頼み事を跳ね返されちゃあ、実力行使でテメェを試合に出られねぇようにしねぇといけねぇ事になっちまったな」


「…」


相坂がまるで品定めをするかのように私の体を見る。


「だがまあ。幸いにして、テエェのその体なら、十分オレ等全員楽しませられるだろう」


「!!」


「暴れんな。それともホントにテメェの左手潰すぞ?」


私が抵抗すると、相坂は私の左手を握る手の力を強めた。


「っ!!」


(イヤ!!こんな奴等に…)


「んーんんー」


「それじゃあ、いただきまーす」


相坂のふざけた号令に合わせて、周りの男達の手が私の体に伸びてくる。


(だれか、誰か助けて!!四音君…雪奈ちゃん……猛…)


そんな私の願いが通じたのか、相坂達の後ろから知っている声がした。


「おっ委員長。ったく、こんなトコにいたら見つけらんねぇだろ。おかげで俺も雪奈も会場中探し回るハメになったんだからな。あれ?そいつら誰だ?委員長の知り合いか?」


相坂達が手を止め、声がした方に振り向くと、そこには四音君が呆れ顔で立っていた。


「ッンパ!!四音君お願い助けて」


私は私の口を塞いでいる相坂の手を無理やり外して四音君に助けを求めた。


相坂は不機嫌をそのまま顔に出していた。


「あー誰だテメェ?コイツの男か?」


相坂が私を指しながら言った。


「いや。お前こそ誰だよ。それに委員長の男は俺じゃなくてこいつだし」


そう言って四音君は自分の後ろにいる人物を指し示した。

そこにいたのは―


「た、猛…」


昔私を助けてくれた人、私の愛する人。

昨日私が木刀で殴った傷に絆創膏を貼っている猛だった。


「よう、テメェら。俺の女に何してんだ?」

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