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知る者、知らない者  作者: 螺旋の凡人
~第2章~
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第27話 共同作業

新キャラ登場です。

やっと正面玄関まで来れた。まったく。俺一人ならもっと早く来れたのにこんなにかかってしまったのは理由がある。“連れ”のせいだ。


「ほら、早くしろよ。こっからがむしろ本番なんだぞ」


俺は遅れてやってきた連れに言ってやった。


「うるせぇ!オレ(・・)だけだったら、てめぇがいなけりゃ周りの奴ら全員ブッ殺してもっと早く来れたんだ!」


そう声を荒げる彼女こそ、俺が来る前に大和コーポレーションの人工島に上陸し、警備に見つかって騒ぎを起こしていた張本人である。俺より頭一つ低い身長に暗くて見ずらいが髪はショートの銀髪だ。服は何かの鎧みたいなものだ。ちょっと露出が多い気がする。背中には自分の身長ほどもある大剣を背負っている。


彼女の名前はルカ。人ではない。彼女はあの北欧のオーディンに従う戦乙女ヴァルキリーだ。なんでも捕われているお姉ちゃんを助けに来たらしい。


半神のヴァルキリーを捕まえたってことは傀儡化ドールの実験に使われてるだろうから、早く助けないと手遅れになるな。幸い、捕まったのは最近らしいからまだ何とかなるだろう。


「じゃあお姉ちゃんのためにもっと頑張って早く行くぞ。あ、これからも人は殺さないようにな」


「なんでそんなに拘るんだよ?こんな奴ら皆殺しにしちまえばいいじゃねぇか」


「まあちょっとしたポリシーみたいなモンだ。それにここら辺にいるのは全員表の社会の人間だ。研究には関わっちゃいねぇよ」


「チッしょうがねぇ。じゃあ何処に行きゃあいいんだ?さっさと案内しろ」


ルカは渋々ながら納得してくれたようだ。


「まあ、ついて来てくれればいいよ。殺すの無しだけどある程度の迎撃は頼むよ」


「ったく、メンドくせぇな」


などと憎まれ口を叩きながらもちゃんとやってくれるあたり、いいツンデレ具合だ。ユウに紹介すれば泣いて喜ぶだろう。因みに後々面倒なことにならないように俺たちの顔には同じ道化の仮面が付けられていて、正体が分からないようになっている。


俺たちが玄関から研究所の中に入ると、銃を持った男たちのお出迎えが一斉に撃ってきた。俺は防弾の性質を付与したローブで俺とルカを包んで雨のように降り注ぐ銃弾をやり過ごすと、それぞれ左右に展開いて敵を無力化する。ルカもちゃんと相手を殺していない。


おっと、このあたりでいいかな。俺が足を止めるとルカが少し不機嫌な目で見てくる。

「ちょっと周りをよろしく。俺はやることがあるから」


「は?何だよそれ」


「いいから。よろしく」


俺はそう言い放つと意識を床に向ける。次に意識を自分の内側に向け俺の中を浮遊する何千という存在の中から目的ものを探す。いた。まあこいつは比較的協力的だから見つけやすいんだけどな。最後に指を鳴らす。


変化メタモルフォーゼ独奏ソロドラゴン


俺の様子に周りにいる奴らはルカを含め全員驚いている。


俺は周りの視線を受けながらドラゴンの右手で床を殴りつけた。殴った感触からして床の材質はただのコンクリじゃなくて特殊な金属だな。人外や覚醒者アウェイクンを封じ込めるためのものだろう。


一発じゃ壊せなかった。表面に罅が入ったがそれだけだ。


俺は右腕の筋肉が膨れ上がるまで力を入れ二発目を放った。一発目で脆くなっていたのだろう。今回は簡単に壊すことができた。勢いよく崩落する床を満足気に見ていると、ルカが声をかけてきた。そっちに顔を向けながら周りを見れば既に制圧済みだった。


「お前、その姿は何だよ?お前は人間なんだろ?」


「今更だな。俺のことならオーディンのジジイに聞いてるだろ。俺は覚醒者だ」


「だからってその姿は……」


ルカの目に俺はどんな風に映ってるんだろう。ただ特殊な力を持っただけの人間か?自分を助けてくれる救世主か?人間を殺しまくってる怪物か?


「そんなことより早くお姉ちゃんを助けに行こう。早くにないと俺でも助けられなくなっちまうぞ」

そう言ってさっき開けた穴に飛び込もうとするが、一つ言い忘れていたころがあるのを思い出してルカの方を向いた。


「何だよ」


「いや、この穴の先は裏の社会だ。そこにいるのは俺のように外道に堕ちた畜生か、お前のお姉ちゃんのように研究の実験台になった被害者だけだ。その被害者ももう手遅れだ。助けてやることはできない。俺たちにできることは肉体から解放してそいつらの魂を救うことだけだ」


「それがどうした?」


俺はルカの目を真正面から見つめた。ルカはそのことで少し怯んだ。


「こっから先は皆殺しだ。ネズミ一匹逃がすな」


俺はそれだけ言うと、指を鳴らして創り出した“真剣の”太刀と小太刀を腰に差して今度こそ穴に飛び込んだ。


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