第25話 真実
お久しぶりです。復活しました。
ミッチーが俺の家を出てから一週間が経った。成海さんにはミッチーは急な出張でしばらく帰ってこないと言ってあるが、さすがにもうきつくなってきた。三日目からは俺と顔を合わせるたびに道真はいつ帰るのか、と聞いてくる。
それで今後のことを相談するため俺たちは放課後に保健室で話し合うことになった。話し合いは成海さんに本当のことを話すという方向にまとまりつつある。だけど……
俺はパーカーのポケットの中にある紙切れを握り締めた。
「じゃあ今夜彼女にすべて話すってことでいいんだな?その上で二人の今後は成海さんに考えてもらうと」
先生が話し合いの内容をまとめ、俺に視線を送ってくる。
「心苦しいですがそうするしかないでしょう。一応俺から伝えるけどみんなもいてくれるよな?」
俺の問いかけにみんな無言で頷いてくれる。はあ、気が重い。
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あのあとそのまま俺の家に来ることになり、みんなで俺の家の前に居る。なんで自分の家に帰るのにこんな憂鬱な気持ちにならくちゃいけないんだ?これも全部ミッチーのせいだ。帰ってきたら覚えてろよ。俺がドアを開けるのを渋っていると、猛が肩を押してそれを促してきた。
俺が意を決して玄関のドアを開けるとそこには成海さんが居た。成海さんはドアが開いたことに顔を輝かせたが、入ってきたのが俺だと分かると一気に落胆した。まあ、気持ちは分からんではないが、そんなあからさまな反応をされるとこっちも傷付く。
「ただいま」
「……おかえりなさい」
俺が言うと成海さんはもの凄い低いトーンで返してくれた。こんなに落ち込んでいる人にさらに追い討ちを掛けろと?俺の後ろに控えてるメンバーも予想以上の反応に驚いてはいるが、俺のアイコンタクトを理解した奴は誰も居なかった。
「成海さん、居間に来てもらえますか?ミッチ…道真について話したいことがあります」
俺の言葉を聞いた途端、成海さんの目に光が戻った。
「道真さんに何かあったの!」
成海さんが俺の体に飛びついてきて前後に激しく揺らす。気持ち悪い……
「と、とりあえず、居間に行きましょう。ここでははにゃっ!」
痛い。舌咬んだ。俺が痛みに口を押さえると、ようやく成海さんも気付いてくれたようで、揺さぶり地獄から開放してくれた。
「す、すいません」
成海さんは申し訳なさそうに俺のことを見上げてくる。クソー上目遣いなんて反則だろ。そんな顔されたらなんでも許したくなる。ミッチーもいろいろ苦労したろうな。
「いいえ、いいですよ。それより居間に行きましょう」
「はい」
俺はみんなを居間に連れてくると、この前と同じように成海さんの正面に座り、みんなは成海さんを囲むように座った。成海さんは逃げ場がなくなり少し緊張しているようだ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。別に取って食おうってわけじゃないんですから」
「はい」
「道真についてと言いましたが、はじめに成海さんは神を信じますか?あるいは妖怪や悪魔でも構いません。貴女はそういった存在を信じていますか?」
「言っている意味が分からないのですが?それがあの人と何の関係があるのですか?」
「答えてください」
成海さんは怪訝そうな顔を浮かべ少し考えてから言った。
「いない、と思います」
「そうですか。ありがとうございます。まあそれが大半の人の答えだと思います」
俺は聞きたいことが聞けたので、一拍おいてから本題を切り出した。
「俺がこれから話しことはうそ偽りのない事実です。そして世の中の真実でもあり裏でもあります。いいですね?」
「分かりました」
「貴女の婚約者である道真は正真正銘の神です。聞いたことくらいあるでしょう?天満宮に祭られている学問を司り、雷神として恐れられている菅原道真公ですよ」
成海さんはポカンとしたままこちらを見ている。
「話を続けますが、彼は今仕事に失敗してとある研究所に囚われています。もしかしたら二度と彼と会うことが出来ないかもしれません」
「ちょ、ちょっと待ってください!いったい何の話をしてるんですか?」
「何のって貴女が聞きたがっていた道真に関することですよ。本当は本人が話した方がいいんですが、そうも言ってられなくなりましたから」
「道真さんが神?研究所?そんな突拍子もないことを信じろと?」
「別に信じてもらう必要はありません。ただ貴女には知っておいてほしかったんです」
成海さんは突然のことで混乱しているようだ。頭を抱えて考え込んでしまった。
「じゃあ成海さん、俺はこれから道真を助けに行きます。帰ってくるまでに考えておいてください」
「考えるって何をですか?」
「今後の身の振り方です。道真が帰ってきて人ではないことを隠してきた彼を受け入れるか。それとも拒絶するか。いですね?」
成海さんは黙ったままだったが、無言は肯定と取らせてもらおう。俺は立ち上がってみんなの方を向いた。
「じゃあ先生、俺が帰ってくるまで成海さんのことお願いします」
「でもいいのか?あいつからこの娘を預けられたのはお前だろう?」
「確かに俺はミッチーからその依頼を受けたけど、俺は俺たちで受けたと思ってますから」
「はっ!物は言い様だな。分かったよ。彼女のことは引き受けてやるから、お前はさっさと行って来い」
「はい」
俺は指を鳴らして道化師の姿となり、みんなの方へ向き直った。
「それじゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃーい♪」
「行って来い!」
「気をつけてね」
みんなが答えてくれる。上から雪奈、猛、委員長の順だ。
俺はドラゴンの翼だけを背中に生やして、居間の窓からすっかり暗くなった空へ飛び立った。




