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知る者、知らない者  作者: 螺旋の凡人
~第2章~
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第23話 ミッチー

「いやー今日はセールだったからマジだ助かったよ。ありがとな」


「気にしないで。これは今晩のボクらの夕飯なんだから♪」


雪奈は屈託の無い四音には眩し過ぎる笑顔で答える。


「ああ、そうだな」


それを見て四音は少し暗い気持ちになる。日本に帰ってきてから再び家族を持ってからずっと自問してきていることが頭をよぎる。


「…オン、シオン」


「はっ!な、なんだ?」


「どうしたの?急に暗くなって、もしかしてどこか具合でも悪いの?」


雪奈は心配そうに四音の顔を覗き込んでくる。そのあまりの近さに四音は思わず身を引いた。


「あ、ああ、大丈夫だ。なに今日は何を作ろうかと思ってな。そうだ。雪奈は何が食べたい?」


「ボク?ボクはオムライスがいいな。シオンのオムライスは最高に美味しいから♪」


「最高にってのは言い過ぎだろ」


すると急に雪奈が空いている方の手で四音の手を握ってきた。


「シオン、ボクは誰がなんて言っても、ずっとシオンの家族だからね。絶対どこにも行かない。絶対シオンを独りにしないからね」


雪奈はじっと四音の目を見つめていた。


四音は自嘲的に笑い雪奈の手を握り返した。雪奈は一瞬驚いたが再び満面の笑みを浮かべ四音の手を引っ張ってた。


「ほら、早く帰ろう。ボクお腹すいちゃったよ」


「お腹すいたって食うのは猛たちが来てからだぞ」


四音は呆れながら雪奈に引っ張られていると、自宅の方から人の気配を感じて足を止めた。雪奈は四音が急に止まったせいでバランスを崩したが持ち前の運動神経の良さで転ぶことはなかった。


「どうしたの?」


「シッ!誰かが俺の家の前にいる」


そう言うと四音は荷物を雪奈に預けて気配を殺して自宅へ向かった。


こんな時間に四音の家を訪ねてくる者はいない。猛たちが来るにしては早すぎる。もし追手なら殺してしまえばいいが、四音の正体に気づいた警察なら面倒だ。最悪この街にはいられなくなるし、雪奈たちにも迷惑がかかる。


慎重に近づくと人影が見えてきた。四音は背後から声を掛けた。


「俺に何か用ですか?」


「ヒャッ!」


家の前にいた人物は急に声を掛けられたことに驚いて転んでしまった。よく見るとその人は女だった。近くには大きな荷物もある。しかし四音はこの女に見覚えがなかった。


「すいません。驚かせてしまいましたか」


四音は手を差し伸べて女を引き上げた。


「あ、ありがとうございます」


「いえいえ、元はといえば俺のせいですから。それで俺に何か用ですか?」


「あ、あのっ、そのっ」


「どうした!」


女が答えに言いよどんでいると、四音の家から男の声がした。四音はとっさに女から離れ警戒を強くした。こちらに向かってくる男から尋常でない気配を感じたからだ。


四音は指を鳴らして木刀を作り出して構えた。


「お前ら何者だ」


声と一緒に殺気を出してこのあたりの空間を四音の気で満たし、いつでも“空蝉”を発動できるようにした。


「ん?この感じ……四音君か」


その声が聞こえた途端、男の気配が小さくなり四音の前に姿を現した。男を見て四音は驚いた。その男を知っていたからだ。


「ミッチー?何でこんなところにいるんだ?」


するとミッチーと呼ばれた男は四音の頭を引っ叩いた。


「私はミッチーではないと言っているだろう」


「そんなことよりどうしてここにいるんだよ?それにあの人は誰だ?」


四音は叩かれたところを押さえながら聞いた。


「もちろん紹介しよう。だが、その前に君の後ろにいるお嬢さんを連れて来た方がいいんじゃないか?」


「そうだな」


四音は雪奈のところまで走っていくと、荷物を受け取って雪奈を家の前まで連れて来た。そのときには先程の女も男の隣に来ていた。


「雪奈、紹介するよ。この人はミッチーこと道真ミチザネさんだ。俺が日本に帰ってきてすぐの頃にお世話になった人だ。ミッチー、こっちは氷澄雪奈、俺の幼馴染で家族だ」


「私はミッチーでは…」


「ならちゃんと説明しようか?」


四音が自分の隣にいる女を見ていることに気付いた男は言葉を詰まらせた。


「よろしく雪奈さん」


「は、はい、こちらこそ」


二人ともぎこちなく会釈した。


「さあ、早くそっちの人を紹介してくれよ」


四音は悪戯を思いついた子供のような笑顔で男を急かした。男は四音の考えていることを読み取り、敢えて堂々と自分と女との関係を口にした。


「彼女は斉藤成海サイトウナルミ、私の婚約者だ。今日はその報告しようと四音君を訪ねたんだ」


「こんばんは、斉藤成海です。道真がお世話になっているようで」


成海は四音に会釈した。たったそれだけの動作なのにとても優雅でいいトコの育ちということが分かる。


「いえいえ、むしろこっちがお世話になったんですから。貴女のご主人のおかげで俺は命を救われました。それにしても狙ったようなタイミングだな。こっちでもめでたいことがあってな、今日ちょうどパーティーをやるんだよ」


「なら私たちはお邪魔かな?」


「気にしなくていい。宴は大人数でやったほうが楽しいから。それに……」


そこで四音は二人の荷物を見る。


「泊まる気満々らしいからな。客間を用意するから気兼ねなく使ってくれて構わないから」


四音は成海たちを促してドアの前に立つが、そのときになって重大なことを思い出した。


「雪奈、ドア開けてくれ」


「分かった♪」


そう言うと雪奈は鞄から鍵を取り出してドアを開けた。それを見ていたミッチーと成海は驚いていた。


「さあどうぞって、どうしたんだ?」


「いや、どうして雪奈さんが四音君の家の鍵を持ってるんだ?」


「その方が何かと都合がいいからだけど」


「「は、はあ」」


道長と成海は自分たちも最近同棲を始めたばかりなのに、ただの幼馴染が鍵を持っていることが不思議だった。


「じゃ、ボクは一回ウチに帰って着替えてくるね♪」


「おう。またあとで」


雪奈は太陽のような笑顔を残して帰っていった。


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