第11話 まさかの再会
奇跡の三日連続投稿です!!
俺は試合場に入り開始線で蹲踞をしてから、猛の“さっきの奴”という言葉を思い出したので、目の前にいる相手の垂を見て名前を確認した。
(えーと北湖高校の相坂、か。ん?どっかで見たような?)
「始め!」
そうこうしている内に審判の号令で試合が始まってしまった。
(まあ、これが終わってから猛に聞けばいいか)
相手選手――相坂は試合開始と同時に俺に突っ込んできた。
俺がそれを受け止めて鍔迫り合いとなったとき、相坂は審判に聞こえないように小声で話しかけてきた。
「よう。テメェはさっき的井のヤツと一緒にいたよな?アンタに恨みはねぇが、痛めつけさせてもらうぜ」
相坂はそう言うと俺から離れ、いくつもの打突を放ってくる。
しかし、その全てが打突部位には当たらず、脇や肩・腕といった防具の無いところに命中する。
どうやらこれが相坂の戦法らしい。
チッ!キタねぇ剣道しやがって!ムカつく野郎だ!
相坂の打突を凌ぎながら俺は相坂に対して胸中で悪態を吐いていたが、それが仇となり相坂の竹刀が四音の小手を捉えた。
「コオオオテエェェェ」
「小手有り!」
相坂側の旗が三本上がり、一本取られてしまった。
ヤベーこんな野郎に一本取られちまったよ。
俺は開始線に戻りながら恐る恐る猛と先生の方に顔を向けた。
「ひぃ!」
そこには俺に殺気を飛ばしている二体の鬼がいた。
確かに遅れをとったけど、あんなに怒ることはないだろ。でもあんな大見得を切って一回戦敗退じゃあ皆に殺されちまうからな。気は進まねぇが本気でやるしかないか。
「二本目!」
俺と相坂が開始線に戻ると主審が開始の合図を言った。
その瞬間、俺は大きく踏み出し、その勢いと全体重を竹刀の切っ先の一点に乗せて、得意な技の一つである予備動作無しの突きを放った。
「ツキイイイィィィィ」
「ぐぇ」
相坂は俺の動きを捉えることが出来ず、突きをまともに受けて呻き声を上げた。
「突き有り!」
俺はすぐに開始線まで戻ったが、相坂は未だに何が起こったのか理解できず、心配した副審の一人が声を掛けるまでしばらくの間呆けていた。
「勝負!」
二人が開始線まで戻ったのを確認した主審は、決着を付けるための一戦を始めた。
相坂は先程と同じように打突部位では無いところばかりを狙って打ち込んでくる。
俺はそれを竹刀で捌きながら、相坂が隙を見せるのを待っていた。
ガチャ ガギ ギャギ
しばらく続いた膠着状態は意外なことで破られることとなった。
バキッ!
相坂が渾身の力で打った逆胴(おそらく脇を狙った)を防いだとき、俺の竹刀がもの凄い音とともに砕け散った。
「止めっ!」
審判は慌てて試合を中断した。
俺はいったん納めてから代わりの竹刀を取りに猛のところへ向かった。
「だから気を付けろって言っただろ」
猛が壊れた竹刀を受け取りながら言った。
「ワリィ、さすがに油断してた」
「それにしても竹刀が割れる程の強さで打ってきたのか。どうかしてんな」
俺は丁度いいと思って今まで考えていたことを猛に聞くことにした。
「なあ、あいつ誰だかわかるか?なんか見覚えはあるんだけど…」
猛は俺のその言葉を聞いて、渡そうとしていた竹刀を落としかけた。
「はあ?何言ってんだよ。あいつは“さっきの奴”だよ」
「そうそれ!あいつにも言われたんだけど、全然思い出せねんだ」
猛はあまりのことに呆れてしまった。
「お前なあ、家族以外に関心無さ過ぎだろ。あいつは“さっき”薫の左手を潰した奴だよ」
猛は言ってから自分がどれだけ不味いことをしたのか気が付いた。
「……そうか、あいつが委員長をねぇ。そう言えばそうだったな」
おれは猛から奪うように新しい竹刀を受け取り、獲物を仕留めるために試合場へと向かった。
その背中にはまるで研ぎ澄まされた刃物のような殺気が溢れていた。




