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ポイ活ディストピア。  作者: さんまぐ


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4/8

第4話 納得のいく終わり方。

市川明彦が帰宅すると、嫁の朋美が「お義父さん?厚労省から電話が来ましたよ?脱走老人に絡まれていたんですか?」と聞いてきた。


「あ…、ああ。嶋田と名乗っていたな。神社にいたんだ」

「変な事とか吹き込まれちゃダメですよ?」

「ああ、平気さ」


市川明彦は部屋に戻ってパソコンで求人広告を見ようとすると、後ろから「連れていって貰えて、ポイントも貰えたら良かったのに」と、聞こえるか聞こえないかのギリギリで聞こえてきて吐きそうになった。



今、老人にできる仕事は限られている。

AIの登場で単純労働も限られていて、しかも更生施設帰りの若者達や、強制的な安楽死を恐れた若者が安い仕事でも関係なく飛び付いていていて、中々老人に割り振れる仕事が回ってこない。


こんな事なら去年の夏に見かけたベーリング海峡のカニ漁に応募しておけばよかったと本気で思ったし、限界集落の古民家とも呼べない中途半端な廃屋の取り壊しの仕事、廃炉の清掃員など、危険な仕事も受ければよかったと後悔してしまう。


1日は無情に進み、孫達は高校と中学校から帰ってくると、遠くから「お母さん、お爺ちゃん決めた?」、「ポイ活ー」なんて聞こえてくる。


吐きそうになりながら聞こえないふりをすると、足音と共に「お爺ちゃんただいま」とだけは言ってくれる。

これは子供の頃からの教育の賜物。


そう、教育が間違っているんだという気持ちになりながら返事をする。


「ああ、お帰り。怪我はないかい?困ったことはないかい?」


市川明彦が声をかけると、「うん。平気ー」、「あ、友達の綾乃ちゃんのお爺ちゃんが決めたって〜」と返ってきて、またポイ活かと肩を落とした。



・・・



夕方のウォーキングを済ませて帰宅すると夕ご飯。

覚悟を決めて食卓に着くが、この日はポイ活の話はされなかった。


夢を見ているような、狐に化かされているような気持ちのまま、翌日を迎えるが、小言やチクリと言われることはあっても、夕飯の時に追い詰められることはなかった。


息子の朋彦が思い直してくれて、嫁の朋美と孫の月と星を説得してくれたのか?


そんな事を思い始め、ラジオ体操で顔の暗い仲間達との温度差を感じながら、肩を組んで「頑張れー、負けるなー」と声を合わせていると、土曜日の昼に家に客が来た。


それは先日、嶋田白雄を連れて行ったあの職員だった。


「どうも、私は厚労省の佐藤太郎と申します」


慌てて家族の顔を見る市川明彦に、息子の朋彦が言う。


「父さん、一度よく話し合うべきだと思うんだ」


この後に嫁の朋美が続く。


「お義父さん、この前佐藤さんからお電話をいただいた時に、佐藤さんがお父さんの事を心配してくれたから、相談したの。そうしたら、一度よく話し合うべきだと言ってもらえたのよ」


話し合い?

何を言う?

コソコソと根回しをしただけだろう?


佐藤太郎は改めて職員証を見せながら自己紹介をしてくる。


「市川さん。私達は無理やり連行なんて真似はしたくありません。納得いただいて日本の為に安楽死という道を選んで貰いたいのです」


納得?

そもそも、【生きたい】と【死んで欲しい】ではスタートが違う。

【死なないで済む話し合い】と【死んでもらう話し合い】ではゴールも違う。


話し合いなんて何があるんだ?


市川明彦は呆れながらも、生真面目な性格が災いし、話だけは聞いてしまう。


「まず初めに、制度開始時の事ですが、頑なに拒否をされた方がいて、理由を聞くと【相続税】を問題にされたんです。なので我々は厚労省にその話を持ち帰り、各省庁と話し合う事で、安楽死を選んだ方は家族に相続税の税率を一律8%にする事にできました」

「次の方は、貯金がないから相続税が良くなっても、家族に遺せるものがない。だから働いて家族に遺せるモノを用意したいと言って、頑なに拒否をされた方でした。なので我々は厚労省にその話を持ち帰り、期間はついてしまいますが、一定のコンタポイントを家族の方に遺せるようにしました」


周りを見ると、息子の朋彦も嫁の朋美もありがたい話だという顔で、ウンウンと頷いている。


「市川さんのご意見は、きっと市川さんのものだけではありません。市川さんのご意見を元に、お互いに遺恨なく、満足いく形で安楽死を受け入れてもらいたいのです」


市川明彦はそれならと言って、3個の意見を出した。


「素晴らしいです!ありがとうございます!持ち帰って上司に掛け合います!ご報告にまた伺います。市川さんもそれまで前向きにお考えください!」


佐藤太郎はそう言って帰っていく。


息子の朋彦は市川明彦の部屋を訪れて、「良かったよ、父さんの気持ちが聞けて安心した。俺たちも父さんの思いを受けて、父さんのいないところで4人で話し合ってみるよ」と言って部屋を後にした。


少しこれで好転してくれればいいと思いながら数日を過ごす。


ラジオ体操の時にその話をすると、濱野磯子は「それ、確かに考えて欲しいわ」と言っていたが、髙成卓は「馬鹿野郎、それを叶えたら死ねと言われているんだぞ?なんで話なんて聞いたんだ!逃げなきゃダメなんだよ!」と怒り混じりに話していた。

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