40:マイルーム・ジャングル
「ちょっとー!!」
叫び声と共に、部屋の扉を開ける。
住み慣れた我が部屋、我が居城。
モノトーンで纏めたシンプルな空間が、気付けば青々とした蔦と葉に覆われていた。
「……は?」
目の前の光景が理解出来ず、上擦った声を上げる。
なんで、部屋が一面緑に覆われているわけぇ?
私はジャングルに生息していた記憶はないんだが。
──その答えは、部屋の中央にあった。
「ププププププププッ」
勢いよく粒を吐き出す花弁。
何を言っているんだと思われそうだが、本当にそうとしか言いようがない。
部屋の中央、ベッドの上に鎮座した植木鉢が、勢いよく粒──小さな種をまき散らしていた。
「なんでええぇぇぇ!?」
私の悲鳴に気付いたのか、ようやく植木鉢──に植えられたベビアの花が、動きを止める。
そう、前にヴィルベルから贈られた、あの食中花だ。
可愛らしい薄ピンク色の花びら。
しかし、今はその花から、めまぐるしい怨嗟の声が響いてきた。
「ごめん、ごめんってばぁ!!」
堪らず、声を上げる。
だって、大音量の声が突然頭の中に響いてきたんだもの。
どうして私を置いていったの。
どうしてほったらかしにするの。
なんで傍に居てくれないの。
さみしい。構って。一人にしないで。
……知らなかった。
花って、寂しがり屋だったんだ。
だから、種をまき散らして仲間を増やそうとしていたの?
私の部屋をこんな風にして、怒りたい……けど、怒るに怒れない。
「毎日の水やりは、ちゃんとレムスにお願いしておいたから、それで大丈夫かなって思ったのに……」
水やりだけじゃ、ダメなんだ。
植物にも、心があるんだね……。
……って、こんな例は稀だと思いますけど!!
私の部屋を覗き込んだジェレミーさんが、ぽかーんと口を開けている。
「べ、ベビアの花の種が、あんなに大量に……この部屋だけで、ロドニー王国の国家予算以上の価値があるぞ……」
ジェレミーさんの言葉に、エルフの長老が言っていたことを思い出した。
そういえば、この種が万病に効くとかなんとか言ってたっけ。
これだけ大量にまき散らされていると、希少価値も何も感じられない。
今度エルフの皆にお裾分けしてあげようっと。
「俺は何も見なかった、何も見ていないんだ……」
ジェレミーさんが、自分に言い聞かせるように、ブツブツと呟いている。
自分の中の常識を保つのに、精一杯みたい。
「そうしておいていただけると、助かります」
下手に広まったら、面倒だものね。
それにしても、暫く留守にしただけで、部屋が大変なことになってしまった。
掃除が大変だなぁ、こりゃ。
なーんて、暢気なことを考えていたのも束の間。
平和? な地下99階に、またもショッキングなニュースが飛び込んできた。









