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追放召喚者のダンジョンには、最強竜と魔狼(もふもふ)が住んでいます ~魔力SSSで始めるスロー・ダンジョンライフ~  作者: 黒猫ている


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35:手柄は誰のもの?

冒険者ギルドに辿り着いた頃には、すっかり陽が暮れていた。

受付カウンターに並ぶ冒険者達の姿もすっかりまばらになり、酒場の方が賑わっている。

依頼から戻った私達は、早速受付カウンターのお姉さんに依頼達成を証明する布袋を渡した。


「……え?」


布袋を受け取り、話を聞いたお姉さんは、笑顔のままで硬直した。


「えぇと……なんですって?」

「だから、メドゥーサ討伐を完了しました。三体分の首が入っていますから、確認をお願いします」


カウンターに置いたギルドカードと、私の顔との間を、お姉さんの視線が数度往復する。

その口は、呆けたように開きっぱなしだ。


「あの、貴女……昨日冒険者登録に来ていた人よね?」

「あ、はい、そうです」


覚えていてくれたんだろうか。

騒動があったから、その影響かなぁ。


「それが、メドゥーサの討伐? しかも三体? 一体どういうことなの……」


ああ、なるほど。

登録したての冒険者が、いきなり高難易度の依頼を達成してきたものだから、唖然としていた訳か。


「そもそも、どうしてFランクの貴女がCランクの依頼を──」

「ああ、それは俺が一緒だったからです」


話の風向きがおかしいと見て、背後からジェレミーさんが声を掛けてきた。

その姿を見た瞬間、お姉さんの顔がパッと輝く。


「ああ、なぁんだ! 全部ジェレミーさんがやってくれたことなのね」


突然、受付カウンターのお姉さんが大声で笑い出した。

その声に、ギルド内に居た人達が驚いて視線を向ける。


「おかしいと思ったわ、登録したての冒険者がメドゥーサだなんて。それならそうと、さっさと言ってくれればいいのに」


笑いながら書類を取りだし、筆を走らせるギルドのお姉さん。

……なんだか、もやもやする。

確かにジェレミーさんにはすごくお世話になっているけれど、そんな“お前には出来るはずない”みたいな扱い、しなくても良くない?

私がカウンターに座ったまま俯いていると、頭上に影が差した──ジェレミーさんだ。


「違います。今回の討伐は、彼女のおかげです」

「……は?」


ジェレミーさんの言葉に、受付のお姉さんが再び目を点にする。


「彼女は冒険者としては新人ですが、俺にとっては世話になった人であり、命の恩人です。先ほどの発言は、撤回してください」

「え……な、なによぉ、そんな怖い顔しちゃって……」


笑って誤魔化そうとするお姉さんを、ジェレミーさんが鋭い目で睨み据える。


「依頼達成の報告に来た冒険者に対して“他の冒険者の手柄だ”などと、それが冒険者ギルドの応対ですか。彼女に対して失礼だ。それに、俺が人の手柄を横取りするような男だと思われるのも御免だ。」


あ……ジェレミーさん、本気で怒ってくれているんだ……。

その剣幕に、カウンターの向こうで様子を見守っていた他の職員さん達までもが、ざわめいている。


「ご、ごめんなさい、そんなつもりはなかったの。ただ、ちょっと信じられなくて……」

「討伐の証拠品を持参しているのに、信じられないと。では、貴女は俺や彼女が他冒険者の戦果をかすめ取ったとでも思っているんですか?」

「ちがっ、そういうつもりじゃ──」


一触即発の空気が漂う冒険者ギルドに、カツン、カツン──と硬質な音が響く。

見れば、カウンターの奥、事務所に通じる扉から、赤毛を高いところで纏めたポニーテールの女性がこちらに歩み寄ってきていた。

浅黒い肌と、勝ち気な瞳──如何にも仕事の出来そうな人だ。


「キーリー副長……」


彼女の姿を目にしたジェレミーさんが、小さく呟く。

その声には、どことなくうんざりしたような響きが含まれていた。


「やあ、ジェレミー。昨日ぶり」


赤毛の女性が、カウンター越しに笑顔を浮かべ、ジェレミーさんに話しかける。


「昨日というより、解放されたのはほとんど今朝でしたがね」


なるほど、彼女がジェレミーさんを拘束してたっぷり話を聞いていた張本人というわけか。

そんなに遅い時間までかかったんだ……そりゃ、うんざりした表情になるのも納得だ。


「すまないね、うちの職員が粗相をしたようで」

「謝るべきは俺ではありません」


ジェレミーさんの言葉に、女性の視線がこちらへと向く。

う、なんだか気まずい。

副長と呼ばれた女性を前に、つい縮こまってしまう。


「どんな冒険者でも、最初は初心者だ。初心者だからと軽んじるべきではないし、それに初心者のうちから実力を発揮する冒険者だって、少なくはない」

「はい……」


受付に座っていた女性が、しゅんと肩を落とす。


「すまなかったな。えぇと……」


副長さんが私に声を掛けようとして、逡巡した。

慌ててギルドカードを指し示し、頭を下げる。


「スズです。スズ・フォレスト」

「そうか、スズか。良い名前だ」


副長の口元が、にんまりと弧を描く。


「今後も同じようなことがあれば、遠慮なく私に声を掛けてほしい。職員達の指導は、徹底しておこう」

「はい、ありがとうございます」


ニコニコ笑顔の副長さんとは裏腹に、カウンター向こうの職員達は怯えた表情を浮かべていた。

ま、ギルドの偉い人と知り合えたのは、良かったかもしれない。

職員さん達には申し訳ないけれど、今後も同じようなことがあった時は、遠慮なく頼らせてもらおう。


一悶着あったけれど、無事に初めての依頼は達成。

メドゥーサの瞳は貴重な素材になるらしく、討伐報酬と素材の買い取り報酬合わせて、かなり懐が潤った。

初めての依頼は大成功と言っていいんじゃないかな。


さーて、宿に戻って、今夜は奮発ディナーにしよう。

上機嫌でギルドを出る私の背に、憎々しげな視線が向けられていたことに、この時の私はまだ気付いてはいなかった──。

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