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追放召喚者のダンジョンには、最強竜と魔狼(もふもふ)が住んでいます ~魔力SSSで始めるスロー・ダンジョンライフ~  作者: 黒猫ている


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14:彼等の事情

地下99階にエルフ達を纏めて転移させようとしたら、ヴィルベルに止められてしまった。

彼はいまだ、私に剣を向けたことを許していないらしい。

今も私の後方で腕を組み、エルフ達を睨め付けている。


それは、ガルムも同じ。

低く身構え、唸り声を上げている。

ちょっと前までは子犬っぽくて可愛かったのに、今ではいっぱしの狼みたいになってしまった。

鋭い爪も、長い牙も、立派な凶器だ。

こうしていると、毎晩一緒に寝ている可愛いもふもふの面影は消えてしまう。


その様子に、エルフ達はすっかり怯えてしまったようだ。

唯一リーダー格の青年だけが、気丈な態度で応じている。


急遽(きゅうきょ)設けられた、会談の場。

天然の岩肌のダンジョンに負傷したエルフ達を座らせ、その傍らで立ったまま話し合いを行うことになった。


「……で、貴様は何者だ」


青年の言葉に、ヴィルベルのこめかみが僅かに引き()る。

こんなことで目くじら立てていたら、きりがないでしょうに。

ま、天下の死黒竜様にこんな口を利く奴なんて、誰も居なかったんだろうね。


「私はスズカ・ミツモリ。このダンジョンのマスターをしているの」

「ダンジョンの、マスターだと……!?」


青年の目が、丸く見開かれる。

耳を(そばだ)てていたらしいエルフ達から、どよめきが広がる。


「そちらの男……ではなく、か?」

「あ、うん。彼は、居候(いそうろう)みたいなものだから」


エルフの警戒は、明らかにヴィルベルに向けられていた。

そりゃ、これだけ大きなダンジョンだもんね。

私みたいなちんちくりんがマスターだなんて、誰も思うまい。


「貴方達がダンジョンに侵入したのは知っていたのだけれど、様子が気になって……それで、見に来たの」


もう、こうなったら素直に話すことにした。

変に隠し立てをしたところで、話が進まないものね。

ま、いざとなったら、ヴィルベルがどうにかしてくれるでしょ。


「貴方達は、どうしてこのダンジョンにやってきたの?」


私が問うと、エルフ達は一瞬だけ目を見合わせた。

やがて、リーダー格の青年が、ゆっくりと口を開く。


「……里から、逃げてきたんだ」

「やっぱり」


薄々、そうじゃないかとは思っていた。

女性と子供ばかりの集団……沈痛な面持ちは、まるで戦地から疎開するかのような悲痛さに満ちていた。


この世界は、決して平和ではない。

分かっていたけれど、こうして里から逃げてきたという彼等を目の当たりにすると、改めてそれを実感してしまう。


「でも、どうして?」

「ロドニー王国の奴等のせいだ!!」


一人の少年の口から、憎しみの籠もった言葉が迸った。

その勢いに圧され、思わず身を竦める。

まさか……ここでロドニー王国の名を聞くことになるとは思わなかった。


「王国が、どうしたの……?」


エルフ達に問う声は、僅かに震えていた。


「あいつら、魔王降臨の神託を良いことに、皆を自国の軍隊に所属させようとしているんだ!」

「そうだ、どうせそんな理由、嘘に決まっている」


彼等の言葉の端々から、ロドニー王国への不信感が滲み出ている。

それだけの反感を買うことを、あの国は今までにもしてきたのだろう。

そう──勝手に私をこの世界に召喚し、そして殺そうとした時のように。


「ロドニー王国は、長年ベサント帝国といがみ合っていると聞く。我等は……戦争の駒になど、なりたくない」


リーダー格の青年が、苦い口調で告げた。

噛みしめた唇から、うっすらと血が滲んでいる。


「だから……子供と女性だけ、避難出来る場所を探していたと?」

「ああ、このダンジョンに精霊が入っていくのが見えたから」

「エルフ族は、精霊と共に生きる種族だ。彼等は精霊と契約し、魔法を行使する。その力に、目を付けたのだろうな」


キョトンとする私に、ヴィルベルが解説を入れてくれる。


なるほど。

世界樹が成長して、ますますこのダンジョンに住み着く精霊は増えてきた。

そんな精霊達の姿を見かけて、精霊と親しいエルフ族までダンジョンを訪れた訳か。


「しかし、入ってみれば、中はごく普通のダンジョンだ。精霊の姿も、見えやしない」


そりゃ、大半の精霊はかなりの下層──地下81階から90階に位置する聖域に(たむろ)しているからね。

精霊の種族によっては他のフロアを好んで住み着くこともあるようだけれど、大半の精霊は世界樹の側が居心地が良いみたい。


「それで、精霊の姿を探してダンジョンの奥を目指していたと?」

「その通りだ」


エルフの青年が頷く。

精霊を探してのこととはいえ、侵入者には間違いない。

でも──彼等はロドニー王国によって行き場を失い、このダンジョンを訪れたのだ。


「スズカ、どうするつもりだ?」

「どうするも何も……」


ヴィルベルが半目でこちらを見つめている。

呆れたような視線は、私が何を考えているか、理解しているようだ。


だってさぁ。

彼等は私と同じ、ロドニー王国の被害者なんだよ?

こんなの、放っておける訳がないじゃない。


「貴方達は、避難する場所を探していた……と考えて良いのよね?」

「あ、あぁ」


私の言葉に、戸惑いながらエルフの青年が頷く。

その表情には躊躇いと──僅かな期待が滲んでいた。


「仕方ないなぁ。じゃ、ついてきて」


呆れているのは、ヴィルベルだけではない。

ガルムだってまだ彼等への警戒を解いていないし、管理室で成り行きを見守っているだろうレムスにも、きっとお説教されることになるのだろう。


でも、私には彼等を助ける力がある。

このダンジョンには、彼等が安全に暮らせるフロアがある。

利益追求、合理的な考えは勿論大事だが、人としての情を忘れてはならないって、多岐川専務がいつも言っていた。


ここで彼等を見捨てては、女が廃るってもんよ。

誰に何を言われようと、構うものですか。

このダンジョンのマスターは、私なんだから。

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