まだ彼の物語は終わらない
最近夜勤が続いておりますが、ソコソコ間見て書けてるので、なんか日勤よりとても進みが良いです(笑)
とはいえ、仕事内容が大変なのは間違いないので無理せず続けていきたいと思っています。
やったことは当然ないが、ヘリにしがみついて移動したらこんな感じなのかな?と思いつつ、とんでもない速度で噴水広場に戻ると見慣れた人間が1人、ポツンと立っていた。
「来たか、2人とも。」
龍堂菊にとっては見慣れた光景なのか。
まぁ孫だし、いちいちアカネのことには驚かないんだろうな。
「報告を聞こう。」
ババアはそう言って俺を見る。
まぁ姉さんには内緒にしているが、こいつには俺が対処する旨を杏かアカネから聞いているとのことだし、特に気にする必要はないか。
「こいつの能力は無機物、有機物に関わらず標的の構造を好きなように変質させることができるらしい。噴水広場の被害者は言うなれば、『噴水縁のコンクリートに尻がくっついた人』ではなく、『コンクリートから人が生えてる』ようなもんだな。」
「…む?すまん、どういうことだ?」
「そういう生物だってことだ。昨夜の被害者で言うと、『混ぜられた被害者2名』ではなく、『手足が4本ずつと頭が2つ付いてる1体』ということだ。だから治療しようにもその生物として正常だから治りようがないんだ。だから実質、こいつにしか治すことが…分離させることができない。」
「なるほど、そういうカラクリか。」
「ああ。腕も潰してるし、足も折っているがコレでもいけるはずだ。待ってくれ、今叩き起こす。」
ババアも理解したようなのでとっとと鬼憑きを起こすとしよう。
ペチペチと両頬を軽く叩く。
「う…あれ?ここは…痛っ!!」
「おう。ここはさっきお前がやらかした噴水広場だ。さっさと被害者たちを治せ。でなければ殺す。」
無駄話をする意味もないのですぐに治すように促す。
「ユウト、殺したら治せないぞ。」
そんな分かりきったことを言うな。
ババアも呆れたように溜め息をついている。
『殺されない』に付け込まれたら面倒だから殺すと脅したのに、アカネには口に出す前に考えることを教えないといけないな。
「よかったな。治すまでは殺さないってよ。でもそれだと俺が納得しないから、無駄口や口答えの度にお前の折れた足を踏み潰していくわ。それかどうせ治せるんだ。目でも抉ってみたり、鼻を少しずつ削いでいくのも面白そうだな。」
笑っていってやると、自分で想像したのか一気に顔が青ざめ、ブンブンと首を縦に振る。
「な、治す!治します!!すぐにっ!!」
脅しがしっかり効いたようで、寝転がったまま神通力を噴水広場のほうへと伸ばしていく。
そのまま気を失っている被害者たちの身体を包んでいくと、無事に分離できた故か。
被害者たちは次第に横に倒れていった。
「これで後は被害者たちの記憶を弄る?のをやって解放で無事に解決か。」
「まだ龍堂神社に被害者が残ってるぞ、ユウト。」
「わぁってるよ。でも姉さんがいるから俺は着いていけないぞ?後は任せる。ババアの結界張って閉じ込めてたら悪さもできんだろ。治した後、お前が処理して終わりだ。」
「いや、ユウトも着いてきたらいい。」
何を言い出すかと思えば、お前が内緒で俺を連れ出したんだろうが。
「今回のことは姉さんには秘密なんだろ?」
「そうだけど、アタシが速攻で解決して神社にコイツを連れて向かう途中にユウトに会ったから拾ったって言えばいい。連れてきた理由も『勉強』で大丈夫だ。」
「たしかに…」
単純すぎて考えもしなかったが、姉さんがいない以上はコッチで口裏を合わせればバレようがないか。
まだ最後の仕事も残っているし、ここは乗っておくとしよう。
むしろやりやすくなったとも言える。
「良い案だ。それで行こう。」
ババアも特に反対しない…むしろ同意と言った様子だ。
その後噴水広場を囲む結界を解いた。
人払いの効果により、全くいなかった人たちがチラホラとこの場を通り始め、遠目で被害者たちが身を起こし始めるのを確認してからババア手配の車に乗り込んだ。
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「流石アカネね。ものすごいスピード解決じゃない。」
「ワッハッハッハ。まぁな。もっと褒めて良いぞ。」
「はいはい。アカネはすごいわ。」
「うむうむ。実に気分が良い。」
本当はそこのポジションは俺のものだったはずなのに。
このクソゴリラをぶちのめしたいが、俺自身も姉さんに内緒にして行動していたので下手なことは言えない。
「ユウ君もちょうど良かったわ。私たち以外の神通力も見ておくのも良い経験になると思う。…今回の被害者を見たら気分は良くないと思うけど、それも含めての勉強ね。」
「はい。姉さん。」
姉さんは俺を心配してくれている。
確かに今から見る被害者はもう『普通の人』とはかけ離れた存在になっているはずだ。
かなりショッキングな見た目をしていることだろう。
ババア、俺、姉さんと鬼憑きを担いだアカネ。
4人で神社の廊下を歩いていくと、まだ距離はあるが正面に見える扉から凄まじく強い感情の波が感じられた。
悲しみ、苦しみ、恐怖。
しかし、顔には出せない。
努めて冷静な顔を保つ。
「この扉よ。気をしっかりと持ってね。」
扉の前にたどり着き、姉さんが扉を開ける。
「……………。」
そこには俺が想像していた姿とは違う生命体がいた。
2人の人間が混ざり合うと聞いていたが、手足や頭が生えている場所がいくらなんでもバラバラすぎる。
尻から手が。
頭から足が。
服がはだけた背中と思われる場所には女性の乳房が1つ。
そしてその生命体からは絶えず、
苦しい、苦しい
ともはや感情ではなく声が聞こえてきそうなほどであった。
しかし、ソレが発する声は言葉になっていない。
「正直、この人たちが正気を保っているのかも分からないのだけど、生きているのは間違いないわ。」
正気が吹き飛んでしまえば、どれだけ幸せだっただろうか。
ここまで名前も知らない他人に同情したのは初めてかもしれない。
他人のことは基本どうでも良いと考えている俺だが、ここまで悲惨だと流石に可哀想だと思うし、こんな生物は存在してはいけないと強く思った。
「おいお前。早く治してやれ。」
アカネが殺気を強く込めて言う。
「は、はい!すぐにっ!!」
鬼憑きが慌てて返事をして、直ぐ様神通力を発動させて被害者に力を纏わせてしまっている。
よほどぐちゃぐちゃにしたせいか、明らかに噴水広場の時より時間がかかっているが、混ざり合った彼らは少しずつ人間としての形に戻っていく。
やがて分離が完了し、そこには若い男女の姿があった。
分離中に意識が途絶えたようで、今も気は失ってはいるものの、命に支障は無いようだ。
「この人たちにも念のため、記憶に処理を施すわ。起きた後に少しだけ様子を確認して、問題なければすぐに解放してあげましょう。」
姉さんがそう言うと、鬼憑きが申し訳なさそうに話し始める。
「あ、あの…俺はこのあとどうすれば…?」
答えるのはアカネだ。
「用済みだから処分するよ。」
当然だろう。
結果的に誰も死んでいないだけで、非常に凶悪な能力だし、狩人としては生かしておく理由がない。
「そ、そんな!元に戻せばって…」
「元に戻せばなんだ?誰も助けるとか言ってないだろ?元に戻さないと殺すとか痛め付けると言っただけだ。」
アカネはもうコイツを人として見ていない。
人を脅かす害虫としか見ていないのだろう。
見た目は人そのものなので、そう考えるのが心にとっては正解な気はする。
俺がそんなことを考えていると、俺に気を配ってくれていた姉さんが俺の表情に気付く。
「ユウ君。ここから先はまだ早いわ。後は私たちに任せて、もう家に帰って大丈夫よ。」
俺が、見た目が人でしかないその鬼憑きを殺すのを不安に思っている、あるいは恐怖していると感じているのだろう。
俺はありがたく、その提案に乗らせてもらうことにした。
「ごめん。情けないけどまだここまで覚悟はしてなかった。無理はしないでおくよ。」
「そうした方が良いだろうな。」
俺が同意し、ババアも賛同する。
絶望する鬼憑きを一目視界に納め、しかし特に言うことも無い。
3人に一言だけ別れの挨拶をして扉から出る。
扉を出て5秒程したところで、異変が起こる。
「うわあああぁぁ!?」
俺は異変に対し、大声をあげることしかできなかった。




