未熟な凶悪
設定、自分の表記の確認のため自分の投稿を見直すことがありますが、
Ep.21 会議1
にて神楽、茜が『神通力の無力化』を
まるで見たことがないような表記になってしまっている(ように感じた)ので、一部の台詞や表現を修正いたしました。
書いてるときや投稿前にも確認しているはずなんですがねぇ…
時刻は20時過ぎ。
俺は1人で駅前を散策していた。
夕方ほどではないが、帰宅中の社会人なども多く、かなりの人間が行き交っている。
『今回の鬼憑きは結界を使わずに事件を起こした。使うのが面倒であったか、あるいは使えないのか。深夜という時間帯から考えれば人目を避けようとするくらいの意思はあるのか、たまたまなのか。正直分からないことが多いの。だからひとまずは怪しい存在を片っ端からチェックしていく必要があるわ。どんなに細かいことでも良いから何かあったらすぐに教えてね。』
右側に装着したインカムから杏の声が聴こえてくる。
相手の力量次第だが相手の力が具体的に分かっていない以上、杏は戦闘に参加するのは危険であるということで後方支援…具体的には指示やアドバイスに徹することになった。
映像に関しても胸ポケットに忍ばせてある小型カメラでリビングから常に状況を監視している。
ルーキーの足を引っ張るなんて惨めなことになりたくないからね。
インカムを俺に渡す時に少し寂しそうにそう言っていた杏を思い出す。
ちなみにアカネは現在、駅前のビル屋上から俺を監視している。
先ほどチラ見したが、あいつはビルや高い建物の上を普通に跳び跳ねて移動し、俺をかなりの距離から監視していた。
お前はス○イダーマンか?と心の中で突っ込むが、残念ながらヤツはヒーローでもなんでもなく、むしろ世界を滅ぼしうる怪物級の存在で、しかもそれが将来的に俺の障害となるのだから全く笑えない。
アカネもインカムを持っているため、こちらの音声も共有できている。
こちらから見ても米粒程度にしか見えないアカネは俺の様子をハッキリ認識できているらしい。
まぁアイツの性能に一々驚いていたらキリがないので深くは考えないでおこう。
「今のところは怪しいと思うような人物などはいないです。しかし、見た目すら分からないとなるとかなり厄介ですね。怪しかったところで普通の不審者の可能性もあるし。」
『…とりあえず異常はなし、ということね。』
『普通の不審者ってなんだよ?』
アカネのツッコミに関しては無視しておく。
俺だって言ってからそう思ったが、そうとしか言いようがないのだ。
俺は常に読む力を周囲に巡らせ、神通力の残滓や悪意などを探っているが神通力感じる先は2つだけだ。
1つはアカネ、そして…
「…ん?」
感じる違和感。
今の気配は…神通力か?
訓練を通して気づいたのだが、一般人と狩人…つまり神通力を扱う者には気配に差がある。
言葉にはしづらいが、強いて言うなら一般人は平面に対し、神通力にはそれに厚みのような物が加わるような…立体的というか、情報量が増えるというか、とにかく明確とまでは言えないが確実に差があるのは間違いない。
今、一瞬だけ感じた違和感。
かなり弱いが、確実に普通の気配ではなかった。
しかしもうその気配は全く感じられない。
『あの女か…?』
振り返って先ほど気配を感じ取った方向に目をやると、若い女の後ろ姿。
かなり目を引く髪の色をしている。
青みがかった美しい緑色で、その長い髪をきらびやかになびかせて歩いている。
注視するがやはり神通力の気配は感じない。
訓練中に限らず、姉さんや杏からも必ず感じられた物がその女からは感じられなかった。
『気のせい…、それか素質がある人間なのかもしれないな。どちらにせよ今回の事件とは無関係だろう。』
俺が立ち止まって振り返ったことを疑問視したアカネから通信が入る。
『おいユウト。お前が歩みを止めてまで女に目を奪われるなんて珍しいな?緑の髪が好きなのか?アタシも染めてやろうか?』
「お前が毛の色変えたところで色違いのド○キーとしか思わんからやめとけ。」
某対戦ゲームを思い出して鼻で笑ってやると不機嫌そうに『フンッ!』と言って通信は切れた。
「杏さん。いつも結界を使わない鬼憑きを相手にするときはこんな風に足で探すしかないんですかね?何か策というか、合理的に捜索ができる方法なんかは無いんでしょうか?」
「今は人が多い時間だから数撃ちゃ当たる戦法を取らざるを得ないのだけど、深夜になって人も減ったら取れる手段が増えるわ。ただ今回は既に被害も出ているし、無駄になるとしても早いうちから細かく見回ることが大切なの。これも大切な仕事よ。」
「なるほど、了解です。人が減るまでは根気良く行くしかないってことですね。」
正直、周りを注意深く観察しながら歩いていても俺自身に悪意が向けられない限り、よほど大きい力でなければ普通に見逃す可能性だってある。
おそらくはこの時間はあまり意味の無いものになりそうだが、こういうのは初心が大事だ。
今は真面目に…
『ユウト!噴水広場だ!!』
俺の現在地は駅の西口。
噴水広場は東口を出てすぐにあり、景観もよく分かりやすいため待ち合わせによく使用される場所だ。
かなり高所からこちらを監視しているアカネには、反対側出口の様子が見えたのだろう。
「すぐに向かう。何があった?」
『ハッキリとは分からんが、噴水の縁に座っている人たちの様子が明らかにおかしい。何か叫んでいるようにも見える。すぐに行って確認してくれ。私も少し近くに寄る。』
「了解。」
アカネが俺と一緒に行動しないのは、俺の試験的な意味合いもあるだろうが、それ以外にも敵に警戒させないことを目的としている。
相手が分かっているなら隠れる意味はないが、ハッキリしないうちからアカネが堂々と身を晒せばアカネを恐れて身を隠される可能性が高い。
アカネは有名人だしな。
人混みを避けつつ、小走りで反対出口へと向かう。
まだ離れているが、人々のざわめく様子がハッキリと見て取れた。
噴水広場を視界に収めると、縁にいる者たちが座ったまま阿鼻叫喚としていた。
「な、なんなんだよこれ!なんで動けないんだ!?」
「お尻が!お尻が離れないの!!誰か助けて!」
「尻がくっついて、動けないんだ!!」
座ったままということではなく、立ち上がれないという状況のようだ。
「杏さん、見えてますね?かなりの高確率で今回の星の仕業だと思います。立ち上がれない…というより下半身が腰かけてるコンクリートにくっついているようです。これも『混ぜる』能力によるものでしょうか。」
『ええ、見ているわ。昨夜の被害者も殺されていないことからも予想していたけれど、今回の鬼憑きは愉快犯的な側面が強い印象を受けるわね。結果は悲惨だけど…。ユウト君、まだ付近に犯人の鬼憑きがいる可能性が高いわ。怪しい人物はいる?』
「確認します。アカネも見た目で変なヤツがいたら教えてくれ。」
『OK。今んとこそれらしいのはいないな。』
事を引き起こした後、即座に逃げ出したというならもう既に離れてしまっているかもしれないが…
これだけ人が集まり、しかも群衆の注目もこの噴水広場1点に集まってしまっているから読む力も過剰に反応して神通力の残滓を絞りこめない。
せめてあたりを付けなければ何も…
そう思い、周囲をよく見渡すが特に見て分かる不振な人物はいない。
アカネの報告もないことから、この場にいたとしても普通の人間と見た目が何も変わらないということだろう。
となると、やはり俺の読む力頼りになってしまうが…
驚愕、好奇、恐怖…そんな感情ばかりでなんとか好奇の方に絞ろうとするも、この場に渦巻く感情に行き先を遮られる。
このままでは何も分からない…
一か八か、目立つ上に頭がおかしいと思われるだろうが、また大声でも出して一時的な静寂を…
そう諦めにも近い心境に陥ったところで一筋の違和感に気付けた。
今この場にある、多くの人から流れる感情。
それは言うなら一人一人から出てくる紐がこの場に向かい、複雑に絡まりあい、混沌を生み出している。
しかし、その中に1本だけ…
『色』の違う紐がある。
この感情は、愉悦だ
この状況で愉悦…こいつか?
愉悦の先を追っていく。
噴水広場を取り囲むように出来た人の列。
その最前列のすぐ後ろにいるスーツを着た男。
何も変哲がない。
むしろ特徴がないのが特徴と言ってもいい、どこにでもいそうな普通の男。
その男の周囲には神通力の残滓が僅かに…しかし、確実に漂っていた。
「星を見つけた。杏さん、どうすればいいですか?」
俺の言葉に驚き、杏が聞き返してくる?
『えっ!?怪しいとかじゃなくて星確定なの?』
「間違いありません。少なくてもヤツは神通力を扱える存在です。見た目は普通の男ですが、2人が知らないなら鬼憑きなのは確定ではないですか?無視する理由はありません。」
『…杏。アタシにも正直さっぱりだけど、ユウトがマジな話をしている時の断言で間違ったことはほとんどない。動こう。』
『…分かったわ!チームはもう呼んでる。確保してポイントに移動して!』
『OK』
「ポイント?」
『アタシが討伐に出張ることは協会の指示だ。当然一般人に見られたり悪影響を与えないように対策しないといけない。何が起きてもいい場所を既に用意してあるんだよ。』
「…初耳だな。」
『ごめんなさい、ユウト君。正直こんな早くに鬼憑きを見つけられると思ってなかったから、本命の深夜帯での作戦時に説明しようとしてたの。この噴水広場にもすぐに私が呼んだチームが来て簡易的な結界で人払い、そして被害者を強制的に眠らせるわ。解決した後、記憶を操作して解放という流れよ。』
「便利ですね。分かりました。アカネ、敵の確保ってのはどうするんだ?あとポイントの場所を教えてほしいんだが。」
『心配ない。どれが星かだけ教えてくれ。』
「…?俺が見ている方角で最前列くらいにいる黒のスーツを来ている男、金髪のギャルっぽい女の隣にいるやつだ。」
『…確認した。少なくても私の知ってるここらの狩人にあんな普通のサラリーマンやってるやつなんていない。じゃあ今からユウトと星を回収する。ユウト、神通力の無力化は使うなよ?』
「え?」
疑問に思うと同時に噴水広場に突如として突風が巻き起こった。
星の隣にいたギャルの捲れたスカートの中身を一応確認すると同時に、一瞬だけアカネの姿を視認した…かと思えば急速に視界が歪み、とてつもない暴風に晒される。
「アババババッ!??」
目が開かない、というか開けられない。
なんだ?と言葉を出すことすらできず、開けた口を閉めることすら許されない風圧に何もできずにいると、激しい衝撃とともにどこぞに停止した。
そして力が抜けると同時に地面に倒れる。
アカネが俺を放したのだ。
「よしっ。」
「よしじゃねぇ!!殺す気か!?」
犯人のバケモノを殴り付ける。
「痛てっ!?何するんだ!?」
「こっちの台詞だ!こんな無茶するなら先に言え!」
しっかり神通力の無力化を使用して殴り付けたので、アカネは涙目になっている。
周りを見渡すと雑木林の中のようで少しだけ開けた場所だが、ハッキリとは分からない。
ここにいるのは俺とアカネ、そして…
「い、一体何だ…?何が起こったんだ?」
声の聞こえる方向を見る。
ヤツは何が起こったのかまるで把握できておらず、ひどく混乱しているようだ。
「お前が噴水広場での騒ぎの現況だな?オマケに昨夜に男女を混ぜ合わせた犯人、そうだろ?」
俺を視認したヤツは一瞬慌てた様子を見せたが、すぐに取り繕うかのように落ち着いた様子で語り始めた。
「えっ?一体何を言ってるんですか?よく分かりませんが、ここはどこなんでしょうか?」
そう口にしながらキョロキョロと周りを見渡し始める。
誤魔化そうとしているのだろうが、俺にはなんの意味もない。
ヤツが犯人であることは俺の中で既に確定している。
表情や言葉ではなく、その感情の流れによって。
「演技はいらん。嘘なのはもう分かってる。」
「ユウトに嘘は通じないぞ。諦めて被害者を元に戻せ。」
全く迷いのないこちらの断言に諦めたのか、舌打ちをして本性を見せ始めた。
「クソッ!なんで分かったんだ!?誰にも見られて…というより見ても分からない力のはずなのにっ!!」
バレるはずが無い、とでも言いたいのだろうがそれは甘すぎるだろう。
こいつも鬼憑きである以上、儀式を通っているはずだ。
であれば無論、狩人の存在も認知しているはず。
なぜバレないと思うのかが理解できないほどだ。
「なんでかどうかなんてどうでもいい。さっさと被害者を元に戻すと言えカス。」
「ちっ、さっきから上から目線で生意気言いやがるなぁ?このクソガキ。お前の身体もぐちゃぐちゃに醜くしてやんよ。」
煽り耐性は低いようで、俺の言葉に一々腹を立てている。
「へへっ。お前をバケモノにした後、お前の彼女を目の前で犯してやるよ。かなり好みだから楽しみ………………あれ?」
「なんだ?やるなら早くやってみろよカス。」
「ユウト、アタシがユウトの彼女だって。見る目はあるのかもしれないぞ。」
いや、それは節穴にもほどがある。
と心の中だけでツッコミをいれておく。
めんどくさいから。
「な、なんでお前…!?俺の力が効かないんだっ!?」
先ほどからコイツのものであろう神通力の力が俺を取り囲もうと渦を巻いている。
まぁ俺に触れた瞬間に全て消し去っているので何も問題ないのだが。
「じゃあ勿体ねーが…女!お前を醜いバケモノに改造して彼氏を絶望させてやるよ!」
「そ、そんな…。助けて!彼氏!!」
「誰が彼氏だ。ってか彼氏を『彼氏』と呼ぶ女がいるか。」
こいつがふざけるせいで一々ペースが狂わされるな…。
「このっ…!舐めやがってクソがっ!!せいぜい余裕ぶって…………なんだこれ!?か、固てぇ!?」
アカネの方に力を行使しようとしているようだが、アカネの膨大な神通力にヤツの神通力が押し出されている。
これではヤツは何もできないだろう。
「おい、面倒だから抵抗するな。どうせ無理なんだからさっさと諦めろ。」
「そーだそーだ。無駄な抵抗はやめて、大人しく投降しなさーい。」
本当に投降する気にでもなったのか。
ヤツから力が抜けていく。
「くっ、くくく…。上等だよ…、もうめんどうだ。ぶっ殺してやるぜ…。本気にさせたテメーらが悪いんだぜ。」
しかし次第にその身体に神通力を纏わせていく。
先ほどまでは俺たちの身体を改造し、いたぶってやろうとでも考えていたのだろうが、目論見が外れた上に挑発されてぶちギレたってことか。
ヤツが無造作に隣にそびえ立つ気に掌を当てる。
木の中にヤツの神通力が浸透していったかと思うと、急激に木が変質する。いや、させられる。
メキメキと音を立てて木が変形していき、ヤツの両腕に巻き付いてくように動く。
「へえ…。そういう力なんだな、面白い。」
「へっ、分かった口聞きやがってクソガキが!串刺しにしてやるよ!!」
串刺し…と言うだけあってヤツの両腕はまるで巨大な槍のようになっていて、万が一アレに貫かれでもしたら大怪我では済まないだろう。
「ユウト、手伝うか?」
「いや、俺のデビュー戦なんだろ?まぁ下がって見とけ。」
「了解。油断はするなよ。」
そう言うと後ろに飛んで距離を取るアカネ。
「いつまでくっちゃべんてんだクソガキがぁ!!」
そう叫びながら巨大な槍の腕を構えながら走って距離を詰めてくる。
見た目で判断するならばあの両腕はかなりの質量のはずであるが、形状だけでなく重さなども自由自在なのだろうか?
「死ねぇえええ!!!!」
右腕を鋭く突き出してくる。
予想通りにもほどがあるが、とりあえず左に身体を半歩程ずらして避ける。
「そんな見え見えの攻撃喰らうわけねーだろバァカ。」
おそらく無駄だろうが、空振ったヤツの右腕目掛けて神通力の無力化の力を込めて思い切り殴りつける。
「うおっ!?」
やはり見た目よりかなり軽い。
思い切り殴り飛ばされた腕に身体を持っていかれたヤツは体勢を崩す。
見た目にそぐわない軽さであることから、やはりコイツは操作した物の質量なんかもコントロールできる能力があるんだろう。
そして予想通り。
「やはり元の木には戻らないか。」
ヤツの大槍の腕は神通力で作られた物であるのは疑いようがない。
しかし神通力の無力化の力で殴っても元に戻る様子もない。
これを説明できる論理は1つしかない。
ヤツの腕は神通力で維持している物ではなく…神通力で造り変えられた、あくまでもヤツの腕なのだ。
腕に槍を着けたのではなく、槍のような腕を持つ生物に成ったのだ。
昨夜の被害者に治療を施そうとも無駄なのも納得だ。
身体が混ざってしまっている2人…ではなく、
頭が2つ、腕が4本、足が4本。
そういう生物なのだ。
当然、異常がないのだから治療もなにも必要がない。
それは正常でしかないのだから。
「凶悪な力だ。お前みたいにバカじゃなければかなり応用も効きそうだし、利便性も高そうだ。羨ましいくらいだが…お前、よく今まで無事だったな。」
これほどの神通力で悪さをしていれば本来すぐに狩人に捕捉、討伐されていたはずだ。
結界も貼らずに昨夜、今日と続けて事件を引き起こしておくような大胆さでありながら、思慮も浅く、神通力のみによる攻撃も効かないと分かると、残った手段もひどく単調で何故今まで無事に過ごせてきたのか激しく疑問だ。
神通力を使えるようになったのが最近であると考えるのが普通だが…他にも気になることもある。
アカネのことを全く知らない様子であることだ。
鬼憑きとなった以上、一番警戒しないといけないのがアカネの存在だろう。
ましてこの町にいるのならなおのこと。
ここまでの状況を考えると、やはりコイツは…。
「舐めてんじゃねぇぞクソガキがっ!!さっさと死にやがれ!!」
突き刺そうというのは諦めたのか、鋭く尖った槍の先端をブンブンとガキのように振り回しながら近づいてくる。
「アホくさ…」
両腕の攻撃を全て掻い潜りつつ、ヤツの正面に立つ。
「クソッ!なんで当たらねーんだっ!?」
焦りや怒りで塗り潰されていくヤツの攻撃はどんどん単調になっていく。
もはやそれは駄々をこねるでかい子供だ。
再びこちらを突き刺そうとしたや右腕を躱してそのまま腕を捕まえる。
「えっ?」
姿勢を低くし、強引に腕を引いて重心を前に崩したところで思い切り担ぎ上げる。
そのままの勢いで背中から思い切り地面に叩きつけてやる。
つまりは背負い投げだ。
「ぐあぁあっ!?」
全く受け身も取れてないからさぞかし痛いだろう。
叩きつけられた場所だってあちこちに小石が転がってるような地面だしな。
悶え苦しんでいるが、ワザワザ痛みが引くのを待つ理由はない。
「まずは足か」
仰向けなっているヤツの足、その右膝目掛けて本気で足を垂直に蹴り下ろす。
全力で人を蹴ったのは初めてだが、とりあえず骨は逝ってるだろう。
「ギャあああああぁ!!!???」
「うるさい。」
続けて左もだ。
同じ要領で蹴り下ろし、膝を折る。
「あ、あ、あああぁぁあ………」
言葉にならない声を上げて目からは涙、口から涎をダラダラと溢しながら呆然としている。
どうやら戦意も完全に喪失しているようだ。
だが、両腕がまだ健在なのでそちらも同じように蹴り潰してやろうとしたが硬すぎて無理だった。
「アカネ、もうコイツはまともに動けないだろうが念のため両腕も潰しておいてくれ。俺の力じゃ無理だ。」
「アタシなら潰せるけどいいのか?それで被害者を戻せなくなったら手の打ちようがなくなるぞ?」
「いや、絶対に大丈夫だ。俺たちに神通力の攻撃をしかけてきたときも遠距離だっただろ?俺の感触では発動のプロセスは杏さんの不可視の衝撃にかなり近い。相手からすれば離れたところから自分の身体を改造されるんだからたまったもんじゃないな。かなり凶悪な力だ。」
「なるほどな、流石ユウトだ!…でもそれだと逆に両手両足を潰したところで危険はあるんじゃないか?そもそもコイツなら自力ですぐに治せそうだ。」
「そこまで分かってるならもう少し自分で考えろ。すぐに治せるのに治ってないのは何故だ?」
「…ユウトが防いでるのか。」
「そういうことだ。何回も自分の身体に神通力を通そうとしていたが俺が全て消し飛ばした。手足を治したいなら俺の言うことを聞かないと無理だということをコイツはもう理解してるだろう。怪しい動きを見せたらすぐに殺すと言って脅せば良い。」
「納得だ。すごいなユウトは。」
アカネは既に気を失っているヤツの両腕を踏みつける。
パキパキッ…ミシッ…
まるで木を折っているような音だが、生物学的にヤツの腕が一体どうなっているのか、非常に興味がある。
とはいえ調べる時間なんてないからさっさと仕事を済ませるとしますかね。
「杏さん。鬼憑きの無力化に成功しました。とりあえず先に噴水広場の方に行けば良いですかね?」
『ザザ、ザー……』
「あれ?おーい。聞こえますかー?」
反応がない。
戦闘の際にインカムを掠めでもしたのか、それとも性能の問題か?
「よし、じゃあ行くか。」
「えっ?」
どこに?と聞く前に、
行く時と同様の馬鹿げたGを味わいながらムリヤリ移動させられるのであった。
杏の不可視の衝撃のルビ振りが
インパクトまで付けることができないので(文字数制限)、もうインビジブルのみで変更しようと思います。
→とか言ってますが、
不可視/の/衝撃
でそれぞれ分けて付ければ良いだけということに気付きまちた!てへっ!




