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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん


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ユキの望み

『私の望みは、とある2人を探し出すこと。それだけよ。』


静かに話し始めるユキ。

声には覇気が感じられない。


『人探し…ということか?』


世界征服とどう関係があるというのか。

何かの隠語というわけでも無いだろうし、素直に言葉通りに受け取るしかない。


『ええ。私はある2人をずっと探している。探し続けているの。』


『それはどういう人かを聞いてもいいのか?』


『兄と姉。私の家族よ。』


『ユキは末っ子だったのか?』


『…そこ、気にするところかしら?相変わらず変わってるわね。』


軽く笑うユキ。

少し調子を取り戻したようだ。


『しっかりしているし、むしろ弟か妹がいたりするのかと思ってたからな。』


『それはありがとう。私たち3人は特別な存在としてこの世に産まれた。今になって思えばおかしな環境ではあったと思うけど、3人仲良く平和に過ごしていたわ。例のボロ小屋でね。』


『そうか。あのアジトはユキの実家だったんだな。』


3人仲良く…か。

人のことを言えた義理ではないし、口に出すつもりはないが、両親の存在はどうなっているのだろう。

いずれ、もっと心を開いてくれるようになればユキから話してくれるだろうか。


『ええ。優しく美しい姉と、泣き虫の兄と、わがままな私。私は2人が大好きだったの。当然よね。家族なんだから。』


それはどうだろうか。


世の中には実の家族を殺す者だっている。

恐らくユキの家族は良い人たちだったというだけのことだろう。

とはいえ、綺麗な思い出にわざわざ水を差す必要なんてない。


『2人がどこかに行ってしまったということか?』


『…ええ、本当に突然のことだった。()()()、私は体調を崩していて家で寝ていたの。姉と兄は友達に会いに行くと言っていたわ。私のことが心配だと言って、最初は行かないつもりだったのを、私が遠慮して、行かせたの。そして…』


『戻ってこなかったんだな。』


『…私はその日から独りぼっちだった。まだ幼い私は自分の食事だってまともに用意もできなかったし、その時は神通力も扱えなかった。地獄のような日々を経て、生き残り、成長して…家族の行方を捜して転々としていた時、やっと掴んだ情報。()()()に起きた大事件。それを引き起こしたと思われる【災厄の鬼】。そして唯一の生き残りにして、その鬼憑きと戦ったと言われている3人組の狩人たち。私はこの3人を必ず捕らえて詳細を吐かせる。狩人協会の一部の人間しか把握していない、極秘中の極秘扱いみたいでまだ3人の居所が分かっていない。だから狩人として協会に潜入したり、障害となる者を排除しつつ、情報を集めていたの。知らない間に殺してしまったら何の手掛かりも無くなってしまう。だから慎重にならざるを得ない。だから時間がかかる。…そこで私は別のやり方を模索することにしたの。』


『それが…世界征服?』


『そう。ユウトもさっき言っていたけれど、狩人協会は世界各国、政界…つまりは国を動かす連中とも密に連携している。立場で言っても同等。つまりは狩人という面倒なやつらと一々殺し合いなんかしなくても…』


『各国のトップ連中を脅すなり、エサで釣って傀儡にする。そいつらに狩人協会へ3人組の情報を開示するよう圧力をかけさせるってことか。』


組織というのは、基本的に誰かが抜けてもすぐに対応できるようお互いを補うことが可能だ。例えばどこぞの国の首相を殺したとして一時的な混乱は起こせるだろうが、速やかに選挙が行われるなり、直ぐ下の地位にいるものが繰り上がってその者の代わりとなり、組織は継続していく。

しかし、傀儡としてしまえば。

長を言いなりに動かすことができれば、それは即ちその組織を掌握したことに他ならない。


『ご名答。各国のトップを従えて裏から全てを操る作戦。それってもう、世界征服って言っても良いわよね?』


『確かに。スマートだし、無駄に犠牲も増やさないから目立たない。ユキの空間を転移する力は作戦との相性もいいだろう。想像していたよりとても良い作戦だと思う。』


『ありがとう、ユウト。あなたのお墨付きなら、私もなんだか安心だわ。今はこの作戦をつつがなく達成するために、いざという時の戦力を整えているところなの。それぞれの代表的立ち位置の人間には基本的に優秀な狩人もボディーガードについているし、使えるカードは多いほうがいいでしょう?』


『ああ。よく分かった。そう言うことなら俺も全力で手伝わせてもらう。一緒にユキのお兄さんとお姉さんを見つけよう。俺もユキの家族に会ってみたいしな。』


『娘さんをくださいって?』


『娘ってか、妹さんだな』


『ふふっ。』


『少しは調子が戻ってきたか?』


『ええ。あなたのおかげよ。あなたが手伝ってくれるなら、私は何でもできそうな気がしてくるわ。本当にユウトは、私にとって運命の王子様ね。』


『じゃあユキの期待を裏切らないよう、せいぜい頑張るとするかね。』


ユキの本当の望み。

それは家族との再会。

それさえ叶えればユキにも狩人と戦う理由は無くなるのではないか。

その後は姉さんにかたきをうってもらい、憂いを晴らしてもらう。

そして大切な2人との平和な日々を手に入れるんだ。

やってやる。

俺ならできる。

いや、俺にしかできないことだ。

俺以外の誰にも。


あやふやだった目標に具体的なイメージが加わったことで、より気合いが入るのを強く感じることができた。


『そうと決まれば善は急げだ。メグと俺との関係性なんだが…』


やりがい、目標、将来の夢。

俺が今まで馬鹿にしていたものは、とかく素晴らしいものであったと再認識できた。


他人の()()を否定し、見下してきた俺は愚かだったのだろう。

鈴木教諭も俺を傲慢と評価した。


全くその通りだ。


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