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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん


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44/45

手伝う理由

1ヶ月!

1ヶ月以上の期間を開けてしまいました…

年末年始ということもありましたが、仕事がトラブル続きでほとんどこちらが手付かずになってしまっておりました…。

結構、設定に絡んでくるってところで期間が開いてしまった上、会話シーンであることから大分長めになってしまい、矛盾点を細かく潰し、確認しながらやっていたらこんなことになってしまいました…(T-T)

ようやく仕事のほうも一段落といったところなので、心機一転頑張っていきたい所存でごさいまする。。。

『一体何をしでかしたのだっ⁉お主!!』


空間を破壊した直後、すごい勢いでやってきたババアにしばらくガン詰めされたが、姉さんがそれを宥めてくれてた。


帰り道での4人での帰宅中に、

あのババア、神通力の無力化(ニュートラライズ)の話はしただろうに、もうボケたのか?能力使って空間を破壊したに決まっているだろう。もう耄碌してるんじゃないか?


というのをかなり()()()()にして言ってみたが、3人とも


『1日2日で神通力をまともに扱えるほうがおかしい。とても信じられるものではない。』


という意見で纏まっていた。

ババアの反応も当然らしい…とのことで俺は黙るしかなかった。


帰宅して夕食後の話し合いにて、明日は神社には行かず家で過ごそうということになった。

修行も2日目にて一段落したし、()()に同じ修行を繰り返す必要などないだろう。

3人からまた鬼憑き、狩人に関する知識の補強をしてもらう予定である。

能力の使い方に関してはほぼ完全に理解したつもりだ。

有象無象は知らんが、俺は一度覚えたことは絶対に忘れることはない。

いずれかの機会で有効範囲の限界だけ調べておけばいい。

強いて言えば何かしら応用の必要性くらいは出てくるだろうが、今考えなくても良いことだ。


本日のことを振り返る。


とりあえずは展開を進めるために、あえてババアの空間を一方的に破壊(無力化)した。


こちらのためにわざわざ用意させた空間を一方的に消し去ることで、もう一度力を使って空間を作ってもらうことに罪悪感を生じさせる。(まぁ俺はなんとも思わんけど姉さんたちには有効だ)

それに加えてババア自身に、


『もう天地優人を捕えておくことはできない』


という認識を強く持たせるためだ。

ワザと、


『天地優人にはこの空間は破れない』


と騙し続けることも考慮したが、この3人(姉さんたち)は俺の修行の進捗なり、能力についてババアに聞かれたら俺のことを普通に言うだろうからあまり意味がないだろうと考え、前者で行くことにした。

ババアの能力でどういう応用ができるかを完全に想定することは出来ないが、俺なりにシミュレーションを重ねた結果、ババアが俺を害することはできないとひとまず判断した。


今回の一件で、もう俺を監禁しようなどと馬鹿な妄言は出てこなくなるだろう。

やってもいいが、即座に打ち消すだけだ。

ただ本当にそうなった場合はもう()として即座に排除を試みたほうが良いだろう。

俺がババアを無力化させてるうちに、メグにでもサクッ★と殺して(ヤって)もらうとするか。

ユキに名前だけ借りて、


『きっと闇女に殺されたんだ!』


とでも言っておけばいい。

ただ、そうなるための環境…俺が単独で行動できる環境が必要だ。

それに関しては急いで作戦を練らねばならない。

せっかく学生なんて無意味なことをやならくていい時間が与えられたのに、誰かしらの監視下に置かれていては結局無為に時間を過ごすことになってしまう。

明日は作戦を考えることに時間を使うとして、日常を今まで通りに過ごすことも当然忘れてはならない。

細かい所から巡り巡って、姉さんたちに違和感を持たせることだって考えられるからだ。

ベッドに転がり、スマホを手にしてトークアプリを立ち上げる。

そして文字を入力するが、送信前に一度思考する。


『昨日は悪かった。寝落ちしちゃってな。今日も忙しくって返信が遅れた。』


送信先はハルカだ。

昨日は寝落ちした、ということにしてメグのことをどう誤魔化すかだな。

今後の動き方次第であるが、メグは陣営はともかく狩人でも鬼憑きでもないが故に、いざという時には非常に有用な連絡員となってくれるだろう。

つまり学校連中や、姉さんたちと接触する可能性が無いわけではない…というか高い。

であれば、あえて接触を増やすようにしておけば色々と動きやすくなるのは間違いない。

問題はメグが『どういう存在なのか』ということだけだ。


ハルカは昨日、俺とメグの仲が良さそうなやり取りを直接的に視認している。

確かメグはユキの(つて)だか何かの能力だかで転校生としての手続きが完了していると言っていた。

つまり学校に転校生としてやって来る前に、俺と偶然機会があって仲良くなったというストーリーが必要になる。

ハルカにメッセージを送る前に一度すり合わせをしよう。

ユキに修行の成果のことも含めて今後の相談をするべきだな。


一旦ハルカのトーク画面を閉じ、SMSを立ち上げ、いつも通り手入力で番号を入力しメッセージを送る。


『今大丈夫か?』


短い文章であるが、無駄に飾る必要はない。

すぐに返信が届く。


『いつでも大丈夫。』


向こうも実にシンプルと言える返事だ。


『今日の修行で神通力の使い方はほぼマスターできたと思っている。それで今後の本格的な話をしたい。昨日みたいにユキと話すことはできるか?』


『確認するね。』


そう一言だけ返信が来て、3分程経過したところで唐突に頭の中にユキの声が聞こえた。


『待たせたわね。』

『いや、こっちこそ何回も手間をかけさせてスマンな。俺から何か連絡を取れる手段があれば良いんだが…。』

『あら?別に私への連絡はメグを通さなくても良いのよ?』

『…いや、そうしたい気持ちはあるが、やはりリスクが高い行動はやめたほうが良い。狩人に…というかアカネにユキとの関係性がまだ万が一にでもバレるわけにはいかないからな。ユキを危険に晒せない。』

『ふふっ。分かってるわ。そう言うと分かってたからメグに連絡役をお願いしたのだからね。』


答えが分かり切った問いかけをしたからか、自分で笑い出すユキ。

一拍置いて、本題に入る。


『さてっ…と。メグからは、ユウトが神通力をマスターしたー…と面白いことを言っていた気がするけど、実際どうなのかしら?普通なら笑うところか迷うけれど、ユウトのことだし、ただの自信過剰ってわけでもないのよね?』

『ああ。狩人協会にどれほどの強者がいるかは詳しく知らないが、少なくても最強であろうアカネに関しては近接戦闘を仕掛けることさえできれば勝てると確信している。アカネから見たら俺と敵対する理由は無いからな。わざわざ戦闘と言わずに、隙を突いて暗殺…なんてのも可能かもな。』

『…』


俺の言葉に少し考える様子をみせたユキだったが、やがて口を開く。


『あの怪物相手に近接戦闘というのも解せないけど…。龍堂茜はその気になったら動きを捉えることなんてできないわ。触れもしないで彼女をどう無力化するのか、詳しく教えてもらえるかしら?』


『もちろんだ。昨日言った俺のもう一つの能力(チカラ)のことを覚えているか?』


『ええ。感情が見えるとか、読めるみたいなことを言っていたわね。それも関係するのね?』


『面倒だから、読む力(リーディング)と名付けたんだが…』


俺は特訓の成果や内容、それら全てをユキに余すことなく全て伝えた。

攻撃に乗る感情や意思、神通力を俺の読む力(リーディング)で知覚し、ソレを神通力の無力化(ニュートラライズ)で消し去る。

遠距離での特訓でプロセスを理解できたため、少なく見積もって半径100mの範囲内で発生した神通力なら全て打ち消すことができ、試したことはないが読む力(リーディング)による知覚範囲内の神通力であれば複数であっても全て打ち消すことができると思われる。

アカネとの戦闘の流れに関しては想定のものもあるが、

俺の知覚内にいる場合なら常にアカネに対して神通力の無力化(ニュートラライズ)を発動させ続けることで普通の…何なら普通よりかなり打たれ弱いだけの女に成り下がることになる。

つまり不意を打てば確実に勝てるが、逆に言うと感づかれて逃げられた場合はもう手出し出来なくなる。

それどころか恐らくアカネのフルパワーで遠距離から固いもの、言ってしまえばそこらへんの大きめの石なんかでも乱投されたら何もできずに殺される可能性もあるだろう。

これも予想だが、アカネの手から離れた段階で神通力を打ち消そうが、慣性で動くものは止められないと思われるからだ。


少し長くはなってしまったが、ユキは頭が良いようだし問題なく伝わるだろう。

しばらく無言が続いたが、一気に入った情報を整理していると言ったところか。


『…今の話を聞いて思ったのは、』


唐突に、抑揚のない声で話し始める。


『それが真実であるなら、もうユウトは私の手には負えないかもしれないわね。』


寂しいような、はたまた呆れているかのような。

よく分からない雰囲気で語りだすユキ。


『ユキが実際どういう戦い方をするのかは知らないが、何かしらの方法だとしても神通力によるゴリ押しみたいな物では無理だと俺も思う。』


『ユウトが…』


少し、言い辛そうにしている。


『もしユウトが、私を見限ったら…私は破滅ね。』


そう、少し笑いながらユキは言った。


『ユウトが嘘をついてないのは分かる。ユウトが規格外なのも分かっていた。でも…たった二日でこんなことになるなんてね。いくら何でも流石に想定外だわ。』


『想定外か。一応、誉め言葉として受け取っておこう。』


『そうね、褒めてるわ。だけど今一度だけ…確認させてほしいの。メグからも聞いたけど、ユウトは私の望みを手伝ってくれると言った。それはとても嬉しいし、私にとっておそらく大きい助けとなるわ。でも、その理由が分からないの。』


『…理由というのはつまり、俺がユキを手伝おうとする理由ということだよな?』


『ええ。ユウトのことは信じているけど、それでも不安なの。あなたにとって最も大切なのはお姉さんなのでしょう?そしてお姉さんは狩人。私は敵なのよ?敵対をしないと言ってくれるだけなら理解できるし、納得もできるの。ただ、私を手伝うと言ってくれるのは、正直何故だか分からないの。だから教えて、ユウト。』


『何故、私を手伝うの?』


『…なぜ、と聞かれるのは正直困るんだが、ユキのことが気になっている…というのは理由として納得できないってことだよな?』


『ええ。偶然会った女の子のことばかりを気にかけて、自分のお姉さんを蔑ろにするような人ではないでしょう?ユウトは。もっと明確な理由があるのなら、それを知りたい…聞きたいの。』


『明確な理由ねぇ…』


考える。

考えて、考えて、考える。


『初めて会ったとき…俺は、運命だ…なんて歯の浮くようなセリフを言ったな。』


『ええ。覚えているわ。とてもこそばゆかったけど、私もそう感じていた。』


『俺の性格から分かるかもしれんが、俺は今までの人生で、そんな言葉を本気で口にしたことなんか一度も無かった。』


『そうでしょうね。』


『俺が出会ったばかりの女を気にして姉さんを蔑ろにするわけないっていうのもその通りだ。』


『そう思うわ。だからこそ分からないの。』


不安そうに言うユキ。


『そうだな。俺自身ですらハッキリとした切っ掛けみたいなものは分からない。だが、一つだけ確信していることはある。』


『それは、何?』


俺は今から、猛烈に恥ずかしいこと言う。

こんなことはおそらく、今後何かの罰ゲームでも言うことはないだろうが、ユキの心細い声を聞いた上ではそんな恥などどうでもいい。


『確かに出会ったばかりだとしても。今の俺にとっては、ユキは…』


『私は…?』


『俺が、世界で一番大切だと思っている姉さんと…優劣がつけられないくらいに、大事にしたいと心から思ってるんだ。』


『世界で、一番…?』


『ああ。だから助けたいと思うし、ずっと…一緒に居たいとも思っている。それじゃ納得できないか?』


『な、なんだかプロポーズみたいね…。』


『そんなに間違ってはないかもな。』


『ええっ!?』


『今、俺には夢がある。』


『……??』


急に何を言い出すんだ?

とでも思われているだろうが、言葉は挟んでこないようなので続ける。


『俺にとって、最も大切な存在である姉さん、ユキ。そして2人が信頼する人と、平和に日々を過ごすことだ。家族という形が理想だな。長女として姉さん。弟の俺。ユキとメグは姉妹ってことにして…2人にも俺の大事な人を義姉さんと呼んでもらえたら嬉しいと思っている。まだ俺の気持ちが本当に恋愛感情なのかは確信はないが、大切に思っていることは間違いない。勿論ユキが良ければという前提だが、夫婦という未来も選択肢にはあると考える。』


『昔の俺は…色々あって他人を信用しようとしていなかったし、なにより読む力(リーディング)のせいで人間という生き物は嘘つきで自分の利益のことしか考えない醜いやつばかりだと思っていた。いや、()()していた。当初は姉さんのことも、同じだと思っていた。』


『…でも、違ったのね?』


『ああ。姉さんも他の人間と同様、やっぱり嘘つきだった。しかし、嘘の理由がそれまで見てきた人間とまるで違った。全部、俺のための嘘だった。俺を元気付けるための嘘。俺を悲しませないための嘘。いっぱい嘘をついていたが、読む力リーディングなんかが無くても確かに分かる愛情と、その裏には異常な…執念と呼べる感情があった。』


『執念?』


『当初は執念という言葉も知らなかったが、単語を理解した瞬間から姉さんの『あの感情』は執念という言葉が最も近いと思った。俺を大事にする、俺を守る。そのためなら…おそらく、姉さんは()()()してしまうんじゃないか、と感じるほどだった。その執念の理由は今になってもよく分っていないが、愛情が偽物って訳でもなし。一緒に過ごすうちに、姉さんに無理をさせたくないと思うようになって、俺は姉さんを支えつつ、心配をかけないよう自分をあらゆる面で鍛えようと誓った。知識に腕っぷし。金の稼ぎ方、面倒ごとへの対処方法なんかをな。それで姉さんが俺と二人、平和に末永く暮らしていくか。…あるいは、姉さんが心から認めた男になら嫁に行ってもらうって言うのもなしではなかった。俺が寂しいが、それが姉さんの幸せになるなら…かまわなかった。俺が幸せにするか、誰かが姉さんを幸せにするか。それだけの差であって、姉さんが幸せと感じられればそれでいい。それだけが俺の目標で、夢だったんだ。』


『過去形なのね。…ひょっとして、私のせいかしら。』


やはりユキは頭の回転が速い。

だがユキが悪いというのは違う。


『姉さんは俺を守るのと同じくらいに、狩人として鬼憑きを倒すことを強く望んでいる。そもそも鬼憑きや狩人の存在すら知らなかった俺に、姉さんを幸せにするどころか姉さんの望みを叶えることすらできるはずなかったんだ。そして知るきっかけをくれたのはユキだ。』


『…なおさら私を手伝う理由なんか無いんじゃないかしら?今のユウトなら私を殺せるかもしれないわ。鬼憑きの首魁を打ち倒してお姉さんと仲良く暮らせばあなたの望みもお姉さんの望みも叶えられるわよ。』


『正直に言えば、それを考えなかったわけではない。だが、姉さんたちと話していて分かったことが二つある。一つは、姉さんが戦いを望んでいないということだ。』


姉さんは自分の力を『傲慢』と評した。

その言葉からも戦いを好いていないのは明らかだ。


『鬼憑きを倒したいのに戦いたくない?それは矛盾してないかしら?』


『その通り。矛盾しているんだ。鬼憑きを倒したい、強い憎しみがあるようだが…けれど戦いたくはない。それは姉さんが優しすぎるからだ。倒したいと思っている敵の、憎んでいるはずの鬼憑きにすら同情してしまう優しさがその矛盾を生んでいる。では何故、姉さんは鬼憑きを憎んでいるのかという疑問だが、これが分かったことの二つ目、姉さんは身近な大切な人、恐らくは師のような存在を鬼憑きによって殺されているようだ。とは言ってもこれに関してはあくまで可能性の高い予想と言ったところだが、ほぼ間違いと思っている。』


『大事な存在を鬼憑きによって殺されてしまった。だから恨んでいるけど、優しい性格が災いして冷徹になり切れない…まぁ筋は通っているのかしら?』


『だから俺は考えた。どうすれば姉さんの最も望む形に落ち着けるかを。そして一つの答えを導き出した。姉さんにとって大事な人間を害したと思われる鬼憑きとの決着、その舞台を整え、姉さんを勝利させること。そして狩人と鬼憑きの戦いそのもの、システムを破壊することだ。』


『…また面白いことを言い出したわね。前者は理解できたけど、システムを破壊するっていうのが全く分からないわ。』


『なぜ鬼憑きと狩人は戦っている?』


『それは…狩人が正義で、鬼憑きが悪だから?』


『違うな。それは表面的な理由で本質はそこじゃない。』


『なら何故かしら?』


『人は存在する以上、必ずどこかで争いが生まれる。それは人それぞれ考え方、感じ方が異なるからだ。二人以上いればいずれ必ず諍いを起こす。大なり小なり違いがあってもな。それは鬼憑きと狩人も本質的には何も変わらない。』


『ふふっ。滅茶苦茶ね。それは極論よ。それならどうすると言うの?』


『簡単だ。鬼憑きも狩人もみんないなくなればいい。』


『…ごめんなさい。私はユウトほど頭が良くないから、もう少し分かりやすく言ってもらえると助かるわ。』


『別に深く考える必要はない。狩人の組織を瓦解させ、鬼憑きも可能な限りこの世から消し去る。皆殺しというのが最も確実だが、現実的ではない。狩人も世界に数多く支部があるようだし、それに応じてユキの支配下ではない鬼憑きも相応にいるんだろう。それぞれの代表やトップ近い存在を優先して消していく。アカネの祖母なんかがそうだ。ヤツは政界にもかなりのコネや発言力があるようだし、ヤツを排除するだけでも日本の狩人にはかなりの痛手になるだろう。鬼憑きも同じだ。鬼憑きってのは聞いて察するに、欲望に忠実なやつが多いんだろ?ユキが特別なだけであって、普通は統率なんてできないんじゃないか?恐らく各地域に潜んでいる強い個体が幅を利かせているだけで、そいつからコソコソ隠れ潜んでいる弱いのが少しずついる程度だろう。』


『まるで見てきたみたいな言い方をするのね。…合ってるけど。』


『だからその影響の強いボスだけ消せばいい。残った雑魚にはそいつの首でもぶら下げて、騒ぎを起こしたら殺す、とでも言って脅せばいい。』


『…騒ぎを起こすなとは言ってもそれができるようならそもそも鬼憑きになっていないと思うわ。事故に見せかけたり、事件を装ったりくらいはできるでしょうけど、普通の一般人とかが襲われれば殺されるだけよ。それは良いの?』


『別に良いんじゃないか?』


『えっ?』


『いや、知らん人間が生きようが死のうが別にどうでもいいし。成長して厄介になりそうだったらその時にまた見せしめで潰しに行けばいいさ。いや、もういっそのことユキのように支配下に置いてどうにか管理してみるのも良いかもしれない。鬼憑きに関してはユキからもっと詳しく話を聞いてから決めたいな。』


『…ユウトが凄いのは分かる。でも流石に舐めすぎというか、無謀じゃないかしら。消すって簡単に言うけれど、手段は?そもそも絶対に勝てるの?龍堂茜以外にも、怪物と呼ばれる狩人も何人かいるわ。無論鬼憑きにも。それに…私も鬼憑きなのだけど、私のことは一体どうするの?』


『勿論、ユキを排除しようなんて全く思っていない。だが、闇女には消えてもらう必要がある。』


『闇女…つまり私のことよね。どういうこと?』


『狩人にとって、ユキ…つまり闇女の存在は目下のところ、一番の討伐対象だろう。ユキが他の鬼憑きを束ねて組織していることは狩人側は知っているのか?』


『ええ。ビビらせたら来なくなるかと思って、死体の記憶を覗けるっていう男に敢えて情報を残したことがあるわ。あんまり意味は無かったけれどね。』


『よし。それなら好都合だ。』


『好都合?』


『ああ。狩人側はユキのことを恐ろしい力を持ち、かつ他の鬼憑きを束ねて組織する危険過ぎる存在として認知している。アカネでも討伐できていないという事実がそれを更に後押ししている。だが誰もその姿をハッキリと見ていない。だったらコッチで闇女を作ればいい。最終的な形としては狩人と鬼憑きの互いの総力をかけた決戦の場を用意し、見事狩人は鬼憑きの首魁である闇女とその配下たちを打倒する。その後は各地の鬼憑き達も自然と鳴りを潜めていき、やがて鬼憑きを確認することは無くなった。そういうストーリーが良いな。』


『私の配下と、私の…影武者のような存在を用意して決戦を演出するってことね?でも配下はともかく私の偽物を用意したところで、私と同程度の力が無いとすぐに疑われるんじゃないかしら?』


『そうだな。だからユキの偽物としてふさわしいやつを発掘して、さらに極限まで育て上げる必要がある。それだけじゃない。アカネがいる以上、ユキ以外では話にもならないんだろ?戦闘を成立させるにはアカネを引きはがすか、俺が何かしらの工作をする必要があるだろうな。まぁそれは後で考えるとして、狩人が鬼憑き達を壊滅させ、勝利したという事実を作り、2つの陣営の戦いを終結させる。姉さんの大事な人間を害したという鬼憑きの正体が判明していないのなら、それも偽闇女か適当に強めのやつを見繕って役をやってもらおう。そうすれば姉さんの憂いも晴れるだろう。姉さんの戦いを完全に終わらせることができる。』


『ユウトの考えは一応理解したわ。でもやっぱり不可能だ思う。さっきも聞いたけど、一体どうやって狩人の上位陣や各地にいる強力な鬼憑きを始末していくと言うの?どこに誰がいるかもわかっているわけでもない。そもそも相手の能力も知らない。危険すぎるわ。』


『そうだな。』


それはそう。

俺はつい最近まで狩人のことも鬼憑きのことも、何も知らなかった。

力も得たばかりだし、修行はともかく実戦の経験もない。

消そうという相手がどういう能力なのかはもちろん、顔も名前も知らない。

普通なら無謀とも呼べない絵空事だ。

普通なら。


『だからユキが手伝ってくれ。』


自分を特別スペシャルと言い、アカネにも対抗できるほどの力を持ち、鬼憑きの集団を支配下に置くユキがサポートしてくれるなら、必ずできる。

俺はそう確信している。


『私にメリットがないわ。そもそも私の望みを忘れたの?』


『世界征服だよな。もちろん覚えているぞ。』


『そうよ。狩人を消していくってだけなら私にも都合が良いわ。でも配下ではないとはいえ、鬼憑きを減らされるのは困る。最終的に負けるようにするなんて、私の望みの逆を行く結果になるわ。ユウトのお願いでも、それを許容することはできない。』


『当然だな。だから俺はユキに協力してもらうために、()()ユキの望みを手伝おうと思う。…そうだな。それが、俺がユキを手伝う理由だ。今喋りながら思いついたことだが、嘘はない。ユキの()()()望みを叶える手伝いをさせてくれ。』


『…私の本当の望み、ですって?』


『ユキは頭の良い女だ。世界征服なんて馬鹿みたいなことを言うが、それが最終的な目的ではないんだろ?それは手段だ。世界を征服して、その後にやりたいことがある。違うか?』


『………。』


ユキは言葉を発しない。


『それを俺に手伝わせてくれ。世界征服なんて面倒なことしなくても、俺が必ずユキの望みを叶えてみせる。もし、無理だと判断したら…責任を取って、姉さんの命を脅かさないものに限り、ユキの言うことに全て全力で従うと誓う。俺を信じて話してくれないか?』


ユキの、本当の望みを。

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