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第75話 特殊能力解除訓練

「はぁ〜〜〜〜〜……ストレンスはダメダメなのです」

「悪かったなぁ……いや、実際、お前には面倒をかけてるんだけどな、インディ」

「まったくなのです。コウバイの『からいぼう』をさらにヨウキュウするのです」

「マジかよ……まあいいけどよぉ」


 時は放課後で場所はグラウンドの魔法練習用の的前。

 ストレンスはガックリと項垂れていた。

 と、いうのも……彼は今、とある訓練をしていたのだ。


「にしても、『特殊能力の解除』なんて本当に出来んのかよ……」

「まーだうたがっているのですか、このアンポンタン。ワタシがジッサイにみせてあげたではないですか」


 そう、彼がやっていたのは『特殊能力の解除訓練』。普段無意識に発動している能力を意識的に『発動しないようにする』訓練だ。

 そして、ソレを教えているのが……。


「そうだけどよぉ、それ、お前の能力だけ出来るって可能性も……」

「ならとっととあきらめるといいのです。ワタシもヒマじゃあないのですよ」

「うぐ……俺が悪かった」


 インディ・C・レバー。一年生で五番目の成績を誇る、緑髪金眼の美幼女。

 その特殊能力は『増幅』。周囲の魔法や物理攻撃、特殊能力などの『力』を増幅させるという凄まじいものである。

 しかし、強力すぎる上に常に発動する能力だったため、色々と面倒事に巻き込まれることが多く……『意識的に発動しない方法』を編み出したのである。

 ……ちなみに、去年の歓迎遠足のときにナウンスの特殊能力を増幅してオレたちに声が届くようにしてもらったり、ゼション戦の時にケアフとカインの特殊能力を増幅してもらったりと、オレは彼女にとてもお世話になっている。

 足を向けて眠れないな。


「ゆるしてあげるのです。『からいぼう』をさらにかうなら」

「たかってきやがってるな……」

「あはは、インディさんは本当に『辛い棒』が好きですね……」


 辛い棒とは、学校の購買や屋台で売っている辛い味付けのスナック菓子だ。前世でもこういうお菓子があったよな。十数円で買えるヤツ。


「ええ、すきですよ。イエではたべさせてもらえないので、いまのうちにたらふくたかってやるのです」

「マジで容赦ねぇな……」


 ケーキだったりアイスだったりの甘いものよりも辛いものが好きらしいが、家族からは健康に悪いと止められているようだ。


「……それで、ストレンスさんは今のところコツを掴めていないみたいですね」

「ああ、難しいんだよなぁ……『意識する』ってのはわかるが、『当然』を意識するってのはよくわかんねぇんだよ」

「聞いている感じだと『呼吸を意識的に止める』のと原理は同じように思えますけど……」

「サスガはエンドリィなのです。ソレのオウヨウにすぎないのです」

「そうは言ってもよぉ……呼吸ってのは鼻でするものだし、最悪ソレを塞げば呼吸はできなくなるだろ? 俺からすりゃあ、心臓をしばらく止めてみろって言われてるようなもんだぜ」

「うーん、心臓の鼓動は逆に意識しやすい気がしますけどね……止めろと言われたら無理ですけど」


 正確にはアレか、血液中の白血球とか赤血球だとかの動きを把握するようなものか。

 ソレはなかなかに厳しいぞ。


「そうなのです。ふだんイシキしていないモノをイシキしろといっているです。そこをはきちがえればシュウトクなんてユメのまたユメなのですよ」

「なるほどなぁ……けど、魔法が使えねぇってのはやっぱり不便だからよぉ。やるしかねぇッ!」


 両の拳をガツンと合わせ、気合いを入れるストレンス……気合いは十分だが。


「ハアアアアアァァァッ!!」

「いたずらにりきんでもギャクコウカなのです」

「……………………ああッ、クソッ!」

「あきらめがはやいのです」

「やっぱりよぉ、ぶん殴るようなわかりやすさがねぇのはつれぇよッ!」


 まあ、たしかに、言わんとしていることはわかるが……。


「……あっ、そうだ。それじゃあ、『特殊能力が使えない状態』を一度経験してみるのはどうですか? それで明らかな変化がある保証もないですけど」

「あぁ? 経験つっても……あぁ、そうか、監獄塔ッ!」

「ああ、たしかに……そこのアルジなら、ストレンスのトクシュノウリョクをムコウカさせることができるのです」


 オレ……というか正確にはエンドリィの『ユアーレディーゴー!』の魔法名検知要素は常時発動に当てはまるのだが、監獄塔の主に近づいても何も感じなかった。

 だが、俺の場合、事情が事情だし……もしかしたらエンドリィが違和感を感じていたかもしれないので、絶対に意味がないとは言えない説で。

 だとすれば、言わないわけにはいかなかった。


「なるほどなぁッ! 今度ひいじいちゃんと相談して行けるか試してみるぜッ!!」

「ワタシもソレがいいとおもうのです……はい、それじゃあコウバイにゴー! なのですよ!」

「わかったわかった。何本でも買ってやるからよぉ!」

「あ、私はアイスが食べたいです」

「お前まで奢られようとすんなよ……いや、でも出てきた案は悪くねぇからなぁ」

「あははっ、冗談ですってば」


 ひとまずの解決策候補が浮かんだので、オレたちは談笑しながら購買へと向かって、おやつタイムを満喫するのだった。

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