第72話 事の経緯
「お前たちッ! 無事だったかッ!」
「ええ、なんとか……」
「エンドリィとワタクシがいれば負けることなんてありませんわっ!」
「私の方はストレンス様が解決してくださいました」
学校通信室に連絡を入れたところ、内務省職員が瞬間移動魔法で飛んできて……オレたちは監獄塔まで瞬間移動魔法で運ばれた。
ストレンスは魔法が効かないので、彼だけ現地解散になったが……無事に王都へ戻れているだろうか。
「ストレンスは……そうか、魔法が効かんからなぁ。まあ、あの子なら大丈夫だろうッ!」
「というか、ビックリしましたわ! あの囚人たちが素直に戻るだなんて!」
そう、オレたちが捕まえた姉妹も、ストレンスたちが捕まえた男も、目覚めるとやけに素直に『監獄塔の主』の元へ集まり、大人しく『魔法封じの首輪』を着けられたのだ。
「うむ、あの子たちは『模範囚』だからなッ! 本来は好戦的な性格ではないようだッ!」
「模範囚……本来はってことは」
「……あっ、おーい! 金髪と銀髪の子〜っ!」
オレが思考を巡らせる前に、ラピファから呼ばれる。
手を振る彼女の方へおそるおそる近づくと、ラピファは凄い勢いで頭を下げた。
「さっきはごめんっ! 止めてくれてありがとうっ!」
「えーっと、一体何が……」
「先ほどはごめんなさいね。事情は私から説明するわ」
ラピファと同じように頭を下げた後、姉が口を開く。
「私はタンネ・エデュット。特殊能力は『魔力供給』……そしてこの子が妹のラピファ。特殊能力は先ほど見せた通り、『連続宣言』よ」
タンネが名前と特殊能力を明らかにする。この行為は相手に対して全てを露わにする意思を示していて、基本的には穏和に話したい相手に対して行われる。
……『魔力供給』。
自分の魔力を倍増させ相手に与えることができる特殊能力だ。先ほどの戦闘でラピファが惜しみなく極大魔法を発動できていたのはこれが理由なんだな。
監獄塔へ入れられるほどの能力ではないが、なるほど、『連続宣言』ができる妹と組むことを考えるとたしかに収監される理由は……いや、それならラピファは監獄塔へ、タンネは奴隷にしていた方が安全ではないか?
「私たちの罪状は『尊属殺』……父親を殺したこと。虐待を受けていた、という理由を考慮されて、二人で監獄塔の同じ階に収監されたの」
「……なるほど」
この世界での尊属殺は即殺処分が下される重い罪だが、虐待を理由に減刑されたのか。
ともすれば、姉妹を監獄塔に収監するのは保護の意味合いもあったのかもしれない。
「今日も私たちは二人で何気ない話をしていたわけだけど……突然、激しい揺れが起きてね。突然、塔が倒れて、私たちは意識を失った」
「凄かったんだよっ! グラグラ揺れてさ〜っ!」
規格外の地震と突風……原因は解明できたのだろうか。
「そして、気がついた時にはラピファとあの村にいたんだけど、怯える村人に石を投げられた瞬間、身体と心の制御が出来なくなって……そこからは貴女たちの知るところね」
「アタシたちも一応頑張って抵抗したんだよ? 強い魔法は使わないようにーって! でも、キミたちが来てからは無理だったの!」
……たしかに。彼女たちは『極大級魔法』が使えるはずなのに、オレたちと闘うまでは『大級魔法』に抑えていたよな。
「……つまり、貴女たちは何者かに『操られていた』と?」
「そう。証明する手段はないけれど……」
「あ、あのっ、ここからはワタシに説明させてくださいっ!」
「……?」
姉妹と男に囲まれていた耳長族の女性が口を開く……つまり、監獄塔の主だ。想像よりもオドオドとした雰囲気を纏っているが。
「まず、こ、この人たちの『魔封じの首輪』が外れていたのは『絶対開錠』の特殊能力を持った囚人、『オーエン・P』によるものだと、おっ、思われます!」
なるほど、『絶対開錠』……以前銀行強盗に遭遇したときに王都学校の生徒が使っていた『何でも開けられる』能力だ。
「そ、そして、操る……という特殊能力についても、見当がついています。その名の通り、さ、『催眠』という特殊能力を持った『ヒノシス・P』という囚人がいまして」
「その辺りの話は小職が詳しく聞こう」
「「ナウンス先生!?」」
「『エンドリィ・F・リガール』、『エスト・A・スー』、無事で何よりだ。小職は校長及び教頭の代理としてこの場に事情聴取のためやって来た」
「それはお疲れさまです……」
休みだというのに大変だな、この人……。
「なるほど……そんな囚人もいたのね。とにかく、私たちに殺されないでくれてありがとう。止めてくれてありがとうね」
「ありがとねーっ!」
穏やかな笑みで感謝の言葉を述べられる。
こんな人たちを凶暴化させるなんて……催眠、厄介な能力だな。
オレたちはタンネたちにお辞儀をして、エイバーさんのところへと戻る。
「まさか村を二つ救うとはなッ! 危ない真似はしてほしくなかったが、襲われる場面を見れば放っておけないのが人情というものッ! お前たち、よくやったなッ!!」
褒められたオレたちは顔を見合わせて微笑む。
「ストレンスにもそう伝えておいてくれッ!」
「ええ、わかりましたわ!」
「それでは、帰りましょう、お嬢様、エンドリィ様」
「そうですねっ!」
そういうわけで、オレたちは馬車に乗りこむ。
……いやぁ、疲れる一日だったな。




