第71話 魔法を解く攻撃
「──勇者様、魔法を消したあの剣の一振りは特殊能力ではないんですわよね?」
「ああ、そうだッ!! さっきも言ったように、『魔法という力の流れを上手いこと断ち切って元の魔素に戻しているだけ』だッ!」
「ど、どうすればそんなことを……」
「わははッ! 言葉では説明しづらいなぁッ! 魔法を解く……と言っても伝わらんだろうし」
ゼション戦後の馬車での会話を思い出す。
ソレ、氷を水にするくらいのノリで語ってるけど、ダイヤモンドを空気中の炭素に分解するような技じゃないか? という感想を抱いていたなぁ……。
おそらく、今やっている基本的な修行が終わればこれについても実践しながら教えてもらえるのだろうと思っていたが……。
「すごい……出来ていますよエストさんッ!」
エストは言葉の説明とゼション戦で見た剣の振り方だけでやってのけたのだ。
「見様見真似でしたが……やればできるものですわねッ!」
そんなわけあるか。天才すぎる故に出来ているだけだ。
「……え? お姉ちゃん、今アイツ、魔法を斬った?」
「え、ええ……そうとしか考えられないわ」
困惑する姉妹。そりゃそうだろう。こんな芸当をするヤツなんて普通はいるはずがないのだから。
……さて、相手の特殊能力はおそらく『連続で宣言できる』というモノ。オレの『ユアーレディーゴー!』で奪れるか試してみるか。
「エンドリィ、勝手なお願いですけれど、万が一の時以外はワタクシに任せてくださる?」
「え? ……わかりました」
エストはこの戦闘を糧に成長することができると感じているんだ。それならばオレは見守ろう。
「でも、全部は斬れないみたいッ! それならもっともっと攻撃を重ねればッ!! レディーレディーレディーレディーレディーレディーレディーレディーレディーレディーッ!!」
「……ッ! 様々な種類の極大風属性魔法が来ますッ!!」
十回連続宣言だって!? 魔力量はどうなっているんだッ!?
「『極大風属性拡散魔法』ッ! 『極大風属性拡散魔法』ッ! 『極大風属性拡散魔法』ッ! 『極大竜巻魔法』ッ! 『極大竜巻魔法』ッ! 『極大竜巻魔法』ッ! 『極大風属性追跡魔法』ッ! 『極大風属性追跡魔法』ッ! 『極大風属性追跡魔法』ッ!! 『極大風属性魔法』ーッッ!!!」
先ほどと同じ壁のような弾幕から、波状攻撃のように押し寄せる竜巻やら追跡してくる風……エスト一人でどうにかできるものなのか?
「ハアアアアアァァァッッ!!」
エストが槍を何度も何度も振るう。
壁のような拡散魔法の一部は即座に消えたが、続いてやってくる竜巻の一部は少し消えるのが遅く……追跡するようにやって来た風は寸前のところで消えて。
「……くッ! レディー! 『大上昇魔法』ッ!!」
エストはオレを抱えて上昇魔法を発動し、消しきれなかった最後の極大風属性魔法二つを回避する。
「逃がさないわッ! レディー!」
極大闇属性魔法が来る……そして今エストは両手が塞がっており宣言できないッ!
ここは発動するしかないッ!
「……えッ!?」
「なっ!? 私の、魔法を……!?」
オレは大闇属性魔法を上空に向かって放つ。
「助かりましたわエンドリィッ! それでは、離しますわよッ!」
「ええッ! お願いしますッ! ……レディー! 『中上昇魔法』ッ!」
オレは上昇魔法で距離を取る。
「レディー、『大上昇魔法』ッ!」
そしてエストは大上昇魔法で姉妹へ突っ込んでいく。
「へぇー? 二対一でも勝てるって言いたいんだぁ? 余裕だねっ! レディーレディーレディーレディーレディー!」
「ハアアアアアァァァァァァッ!!」
「『極大風属性魔法』ッ!『極大風属性魔法』ッ! 『極大風属性魔法』ッ! 『極大風属性魔法』ッ!
『極大風属性魔法』ッ!!」
エストに向かって放たれる風属性魔法。
ソレを彼女は突撃しながら槍を振って消していく!
「嘘でしょッ!? 落ちながらもできるの!?」
「レディー! ……まただわ!」
姉の宣言、極大闇属性魔法をオレは奪ることにした。万が一のことがあっては遅いからな。
「ハアアアアアァァァァァァッ!!」
「うっ……キャアアアアアァァァッ!!」
「ラピファァァァッ!! うッ!? あああああぁぁぁッ!!」
エストがラピファの左腕を切断する。そして、着地した勢いそのままに姉の右腕を切断して……!
「さあ、これでアナタたちの宣言は封じましたわッ! まだ抵抗する気がありまして?」
彼女は槍先を姉妹に向ける。姉の特殊能力がわからないのが気がかりだが、勝負あったと言っていいはずだ。
「……負けちゃった」
「そうね、私たちの負け……」
「……!?」
エストが驚愕の表情を見せる。
それもそのはず、姉妹は負けを認めた瞬間ガクリと気絶したのだから。
「な、何が起きたのでしょう?」
「わかりませんわ……!」
「おーい、エンドリィ、エストォーッ!!」
「……あっ、ストレンスさんッ! セツナさんッ!!」
疑問符が頭に浮かぶ中、ストレンスを乗せた馬車がこちらにやってきた。
「そちらはどんな感じでした?」
「村を燃やしまくるわで大変だったけどよぉ! それはセツナがなんとか消火してくれて、オレは殴るのに専念できたぜッ! 厄介な能力を持っていたが、俺の方が強ぇッ!!」
「最後の悪あがきで『自爆魔法』を使おうとしたので、肝が冷えましたけれどね……」
セツナが長くため息を吐く。なるほど、向こうも大変だったようだ。
「セツナもストレンスもお疲れさまでしたわ! ……ひとまず『学校通信室』に連絡して、この方達の処遇を決めてもらいましょう!」




