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第68話 ウィンドロッド

「──よしよしッ! 杖を使った基本的な動作はそんな感じだッ!」


 エイバーさんに一通りの杖の使い方を指南され、また一つ強くなった気がする。

 緩急を意識して武器を振るう……これをマスターするまで練習しないとな。


「ここからはエンドリィちゃんの得意なことを伸ばしていこうッ!」

「得意なこと……?」

「キミは頭が良いからなッ! それを活かした戦法を教えようというわけだッ!!」

「えぇ……私にできるでしょうか?」


 頭が良い、といっても、ソレは『二年生にしては』だ。前世で言う高校生、つまり今世の十年生くらいと比べたらそんなに変わらないだろう。


「やってみなければわかりませんわよッ! まずは挑戦からしてみなさいましっ!」

「そ、そうですよね……! 頑張ります!」

「わっはっは! 気合い十分のようだなッ! ではエンドリィちゃん! あのグリフォンキングの死体に『風属性魔法で杖を飛ばす技』を当ててみてくれッ!」

「わかりました! やってみます! ……レディー、『中風属性魔法ディキャウィンド』ッ!!」


 オレがウィンドロッドと名付けたアレをやれということらしい。恥ずかしいので技名は出さないが……。


「……ヒュー! すっげぇな!」

「あの身体を貫くとは……」


 放り投げた杖の頭に、対ゴブリンの時よりも強い中級の風属性魔法をぶつけて飛ばした。

 すると、飛んでいった杖はグリフォンキングの身体を貫通して地に落ちる。


「うむッ! 見事見事ッ! ワシが教える前によく編み出したものだッ!! それに、エンドリィちゃんは骨と骨の間を狙っていたな?」

「はい、流石に骨を砕けるほどの威力は無いので!」

「その魔物の骨格を理解していないと出来ないことですわね……流石ですわ! エンドリィ!」

「本で読んだことがあったので……」


 魔物図鑑とか、この世界に転生してきた直後のオレからすれば面白すぎるんだよな。


「それじゃあ次は……連続して杖を動かしてみようッ!」

「連続して……なるほど、わかりました」


 オレは先ほど飛ばした杖を回収しに走り出す。


「そこからやってくれればいいぞーッ!」

「わかりましたー! レディー、『中風属性魔法ディキャウィンド』ッ!!」


 杖を手に取った直後にそう言われたので、オレはもう一度風属性魔法を発動する。

 杖は先ほどと同じようにグリフォンキングの身体を貫通して……。

 ……そして、ここからだ。

 連続で杖を動かすためには……ッ!


「レディー、『中風属性追跡魔法ディキャストークウィンド』ッ!」


 追跡する風属性魔法を発動……その目標は、杖の頭ッ!


「……よしッ! レディー、『中風属性追跡魔法ディキャストークウィンド』ッ!!」


 狙った通りの角度から風を杖の頭に当てることができたので、杖がクルリと方向転換し、再びグリフォンキングの身体を貫通する。

 ……まだまだいくぞッ!


「レディー、『中風属性追跡魔法ディキャストークウィンド』ッ!!! ……あっ!」


 杖は再びクルリと回ってグリフォンキングの身体を貫通し、三度……回すことは出来たのだが、思っていた角度とは違い、グリフォンキングの骨に阻まれる結果となった。


「あぁ……ダメでした」

「何言ってんだよッ! 初めてでコレなら上出来じゃねぇか!」


 みんなの元へ戻ったオレをストレンスが励ましてくれる。良い奴だな。


「わっはっはッ! ストレンスの言う通りッ! 見事な杖捌きだッ! それに、まだまだ伸び代もあるッ! 結構な事じゃあないかッ!!」

「あのような武器の操り方もあるのですね……勉強になります」

「うふふっ、ワタクシたちと一緒に沢山練習いたしましょうっ!」

「はいっ、ありがとうございます!」

「……そうだ、その戦法を使うなら杖は余分に必要だろう! 遠慮なく持っていくといいッ! レディー、『取出魔法ピックアップ』ッ!!」


 豪快に笑いながらエイバーさんが杖を数本取り出す。


「わ……っ! いいんですか!?」

「ああ、良いともッ! エンドリィちゃんは最近無属性魔法が使えるようになったと聞くからなッ!! そのお祝いだッ!!」

「ありがとうございます……! レディー、『収納魔法ストア』ッ!!」


 オレは無属性魔法の発展系である『収納魔法』を発動し、杖を無に入れていく。

 ……ん? これは?


「エイバーさん、この杖、他の杖と違いますよね……?」


 杖の頭に大きな水晶のようなものが付いている……ただの飾りか、もしくは。


「わははッ、気づいたか! この杖……の頭についてある水晶はな、『大級までの単属性魔法を一つ保存することができる』んだッ! 保存した状態で刺激を加えると、水晶の中の魔法が発動されるという仕組みだッ!」

「そ、そんな凄いものをいただいてもいいんですか!?」


 貴重な水晶であることには間違いない。

 オレの命を救ったこの指輪の白い石といい、この世には強大な力を持つアイテムが存在するんだな。


「わっはっはッ! お祝いだと言っただろうッ! ちゃんと受け取ってくれッ!」

「わははッ! よかったじゃねぇかエンドリィ!」

「ええ! ありがとうございますっ!」


 オレは感謝の気持ちと共に『水晶の杖』を収納する。


「……さて、今日の修行はこれくらいにしておこうかッ! 各自、次の機会まで気を抜かずに練習に励んでおくようにッ!」

「はいっ!」

「もちろんですわっ!」

「次こそはどんなものでも断ち切ってみせます」

「おうッ! 次はひいじいちゃんを倒せるくらい強くなるぜッ!!」

「わははッ! それはまだ早い……! さて、王都に着いたらカフェでゆったりしようッ! もちろんワシの奢──むッ!?」

「エイバー様ッ! 休日をお楽しみのところ申し訳ありませんッ!!」


 瞬間移動魔法で内務省の職員が現れる。

 ……何かあったんだろうな。


「何事か起きたかッ! 言ってみろッ!!」

「はッ! 監獄塔が……崩壊しましたッ!!」


 ……え?

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