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第66話 落下攻撃

「お願いいたしますわッ!」

「レディー、『取出魔法ピックアップ』ッ! ほれッ! これを渡そうッ!」


 エイバーさんが取出魔法で木製の槍を二本取り出して、その内の一本をエストに差し出す。


「ワシが構えたこの槍目掛けて打ちつけてみろッ!」

「わかりましたわッ! ハアアアアアァァァッ!!」


 エイバーさんが構えた槍を弾くように打ちつけるエスト。

 攻撃をくらっても微動だにしないエイバーさん相手だからわかりづらいが、脱力と力を入れるタイミングを意識しているように見える。


「ふむッ! セツナちゃんへの指導もしっかりと取り入れているなッ!」

「ええッ! ボーッと眺めているだけでは意味がありませんものッ!」

「うむうむ、感心感心ッ!」

「そしてエイバー様ッ! 今、ワタクシの攻撃を全く動かずに受け止めたように見えましたが……槍と槍が触れた一瞬だけ『脱力』されましたわね?」

「ふむ、そこまで見破っていたかッ! 上等上等ッ! では、木製の槍は一度置いて、金属製の槍に持ち変えてくれッ!」

「ええッ!」


 なるほど、力を逃すために脱力していたわけか……打ちつけながらそこまで意識がいっているエストも凄いな。


「よしッ! エストちゃんがよくやっている『上昇魔法ウィンドアップ』からの落下攻撃を今ここで見せてくれんかッ! ……そうだな、落下先はあのグリフォンキングの死体にしよう!」

「わかりましたわッ!」

「もちろん、先ほどの脱力の話も思い出しながらやるんだぞッ!」

「ええ! それでは……レディー、『大上昇魔法ウィンドアップヘクティア』ッ!」


 ビュン、と音を立ててエストが上空に跳び立つ。

 そして、槍先をグリフォンキングの死体に向け……!

 もう一度『上方魔法』を唱えてもの凄い勢いで落下するッ!


「……ッ!」


 ガキンッ! と大きな音が周囲に響く。

 骨に攻撃を弾かれたのだ。


「硬い……ですわねッ!」

「ふむ、これをどうにかする方法は二つある。一つは、魔物の骨の場所を正確に把握して、それが無い場所を精確に突き刺すこと。そしてもう一つは、骨ごとぶち壊すことだッ!」

「前者はともかく……後者はワタクシにできるでしょうか」

「わっはっはッ! それはエストちゃん次第だッ! どれ、少しその槍を貸してみろッ!」


 不安気な顔を見せるエストから槍を受け取るエイバーさん。


「レディー、『大上昇魔法ウィンドアップヘクティア』ッ!」


 エイバーさんが宣言し、空高く跳ぶ。

 実践して教えてみせようということか。


「……ハアアアアアァァァッ!!」


 バギンッッッッ!!

 使っているのはエストと同じ『大上昇魔法』のはずなのに、落ちてくる速度が段違いで速い!

 それに、響く音がエストのソレとは全然違うッ!


「ヒューッ! すげぇな! あのグリフォンキングの骨がバラバラだぜッ!」

「ええ……流石勇者様です」

「……」


 ストレンスとセツナが感嘆の声をあげる中、エストは黙ってエイバーさんの方を見ていた。


「どうだッ! 何かコツは掴めたかッ!?」

「ええ、上空で『大上昇魔法』を発動した直後の身体の動きからしてワタクシと全然違いましたわ。そして、槍を突きつける姿勢も、『緩急の付け方』も勉強になりました……!」


 エストはあの高さのエイバーさんの動きを見、あの速さの彼の動きについていけていたというわけか。動体視力に定評のある耳長属の血を引いていることも関係しているのだろうか。


「わははッ! 上出来上出来ッ! じゃあ、もう一回やってみろッ!」

「ええッ! レディー、『大上昇魔法ウィンドアップヘクティア』ッ!」


 エイバーさんから槍を受け取ったエストが再び飛翔する。

 そして、槍先をグリフォンキングの死体に向け……おっ! さっきよりも明らかに落ちてくる速度が速いぞッ!


「ハアアアアアァァァッ!!」


 バギッッッ!!!

 と、何かが壊れる音が周囲に響く。

 ……いやはや。


「……すごい」

「わっはっはッ! エストちゃんは飲み込みが早いなッ! 流石に天才と称されるだけあるッ!」

「すっげぇッ! すげぇよエストッ!!」

「流石です、お嬢様ッ!」

「いえいえ、エイバー様のお教えがあってこそですわッ!


 彼女は謙遜しているが、こんなの一朝一夕で成る技ではないはずだ。

 武術の面でも、やはりエストは天才なんだな。


「では、槍特有の動作の矯正をしていくぞッ!」


「──ハァッ!」


 エストが槍を振ると、パン、と音が鳴り空気が痺れる感覚に陥る。

 少しの指導で成長しすぎじゃないか? 天才過ぎる……!


「わっはっはッ! これほどまでに飲み込みの早い子は初めてだッ! やるなぁエストちゃんッ!!」

「ありがとうございますッ! ですが、まだこれで満足する気はありませんわッ!」


 凄まじい向上心だ。どこまで強くなるつもりなんだこの子は。


「わははッ! それは頼もしいなッ! ……では、次ッ! ストレンスッ! お前の番だッ!」

「待ってたぜッ!! うおーッ! ワクワクが止まらねぇッ!」


 ストレンスが両の拳をガツンと突き合わせながら前に出る。


「お前とは一度やり合うのが一番わかりやすいだろうッ! さあ、全力で来いやッ!!」

「へッ! 最高じゃあねぇかッ!! そんじゃ……いっくぜええええええぇぇッ!!!」


 エイバーさんが持っていた木製の槍を放り投げ、ストレンスに手招きをする。

 ……さあ、殴り合いが始まるぞッ!!

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