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第61話 修行開始

「わははっ、こうやって弟子を引き連れて歩いていると、昔を思い出すなぁッ!」


 オレたちがやって来たのは歓迎遠足に使われている山だった。

 少し嫌な思い出があるが……この面子ならば何が起きても大丈夫だろう。


「この道……歓迎遠足とは全然ルートが違いますね」


 一年前の記憶よりも険しい道だ。


「そりゃあそうだぞ、エンドリィちゃん! なんせ、ここは魔物が出てくる可能性が高い道だからなッ!」

「……えっ」

「そういえば、聞いたことがありますわ。歓迎遠足の前後で教員の方々が山に住む魔物を間引いているのだと」

「……なるほど。今回は先生方の代わりに私たちで魔物を間引く、ということでしょうか。修行の一環として」


 歓迎遠足の前はもちろん、安全な道にまで魔物が出没することがないようにするためで。

 その後にするのは……おそらく、繁殖期に入る魔物が増えすぎないようにするためだろう。


「おぉッ! 流石はエンドリィちゃんだ! その通りッ!」

「……ッ! 何かの群れが来ますわッ!」


 エストが言うが早いか、周囲からゴブリンの群れがオレたちを囲むように現れた。

 ……ざっと二十匹はいるだろうか。


「よし、まずはこいつらで基本をおさらいするぞッ! 各々、武器を構えろッ!」

「はいっ!」

「うっし!」


 オレは身の丈程度の長さの杖を、エストは身の丈以上に長い大槍を、セツナは片手で持てるサイズの剣を、ストレンスは拳を構える。


「魔法は極小級のみ使用を許可する! これも駆使しつつ戦えッ!」

「わかりましたわ!」

「参りますッ!」

「それでは、ワシは少し離れたところから眺めておくぞッ! 『小瞬間移動魔法テレポテーション!』」


 エイバーさんが瞬間移動魔法を唱えたのを皮切りに、それぞれが駆け出す。


「はああぁぁッ!!」

「オラアアアアアアァァァッ!!」


 後方からエストの掛け声と何かを突き出す音が響いたと思えば、左方からストレンスの掛け声と重い打撃音が聞こえる。


「ハァッ!」


 右方からはセツナの掛け声と斬り裂く音。

 オレも負けていられない。


「ギギャァーッ!!」

「やぁッ!」


 飛びかかって来たゴブリンに野球の要領で杖の頭を腹に打ちつけるッ!


「ギ……ッ!」

「はああぁッ!!」


 そして、倒れたところを杖の尖った先端で胸を突き刺すッ!

 ズブッと肉の中に入る音が聞こえ、跳ね返すような弾力を感じ、それでも尚杖を押しつけると何かを貫く感触があった。

 どうやら、骨には当たらず心臓を一突きできたようだ。


「……うっ!」


 杖を引き抜くと、プシャ、とゴブリンの血が噴き出る。

 次第にゴブリンの身体は脱力していく。

 ……魔物のものとはいえ、オレが、直接この手で命を奪ったんだ。

 クラクラと目眩を覚えるような感覚に襲われるが、敵は一匹じゃあない。


「レディー、『極小閃光魔法ディシィフラッシュ』ッ!」

「ギギャッ!?」


 オレは杖を左手に持ち、右手を胸に置いて宣言をし、閃光魔法を飛びかかって来たゴブリンにくらわせるッ!

 このまま、追撃、といきたいが……!


「レディー、『極小風属性魔法ディシィウィンド』! レディー! 『極小上昇魔法ディシィウィンドアップ』ッ!」


 飛んできた石を風属性魔法で破壊し、元凶のゴブリンを上昇魔法で転ばすッ!


「はぁッ!!」


 まだ閃光に身悶えているゴブリンの頭部を杖の頭でぶん殴り、ゴブリンの腕が顔の前に移動した隙を見て胸に杖の先端を突き刺すッ!!


「ぎ……ギャッ!」

「ギャギャー!」

「……ッ!!」


 先ほど石を投げて来たのと別の個体が投石をしてきたため、杖で払う。

 ……咄嗟の判断だが、やればできるものだな!


「レディー、『極小風属性魔法ディシィウィンド』ッ!!」

「ギャ!」


 二匹並んでいるうち一匹のゴブリンを風属性魔法で飛ばし、残った一匹の脳天に杖の頭をぶつける。


「ギ……ギャ、ギャ!?」


 頭を押さえるゴブリンにすかさず杖を横薙ぎに払い倒す。


「ふッ!」


 ゴブリンの胸に杖の先端を突き刺し、即座に引っこ抜く!


「レディー、『極小風属性魔法ディシィウィンドッ!」


 そして、杖の頭に向かって極小風属性魔法を放つッ!

 風の力を借りた杖は凄まじい速さでぶっ飛び、先ほど魔法で飛ばしたゴブリンの脳天を貫くッ!


「……よし!」


 この技に名前をつけるならウィンドロッドといったところだろうか。


「……見事だッ!」


 エイバーさんが拍手をしながらこちらに歩いてくる。

 周囲を見ると、ゴブリンは皆死体となっていた。


「四匹だけしか倒せませんでした……」

「二年生の身体とその杖でそこまでできるなら上出来だッ! それに、四人の中で一番創意工夫がされていたぞッ! 自信を持っていいぞッ! エンドリィちゃん!」

「えへへ、ありがとうございます……!」


 お、工夫を褒められた。素直に嬉しいな。


「私は五匹です……もう少しやれると思ったのですが」

「セツナちゃんは『極小水属性魔法』でゴブリンの呼吸を封じて行動を封じる工夫があったなッ! 一匹ずつ倒すという、戦い方が素直すぎるところを改めれば更に伸びるだろうッ!」

「は。ありがとうございます」

「ワタクシは七匹ですわッ!」

「エストちゃんは風属性魔法を駆使し、まとめて敵を倒していたなッ! 大槍だからというのもあるが、それもちゃんと使いこなしているから成せる業だッ! この調子で励めばきっと強くなれるぞッ!」

「はいっ!」


 大槍……オレでは扱いきれそうにないが、いいなぁ。


「オレは八匹だぜッ!」

「ああ、ストレンス! お前は間違いなく強いッ! 拳のみで一匹一匹を一撃で倒していたからなッ!」

「へへ……ッ!」

「しかし、まだ極小級魔法も使えないところは課題だな。お前の特殊能力も関係しているのだろうが……」

「ああ、それはそうだよな……けど、大丈夫だぜッ! その辺もそろそろ克服できそうだからなッ!」

「おおッ! それは頼もしいなッ! ……では、ザコとの戦い方は見ることができたので、次は更に強い魔物と闘ってみようッ!」

「この山の強い魔物といえば、キングゴブリンか……アイツですよね」


 ……歓迎遠足を思い出すな。


「ああ、グリフォンだッ!!」

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