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第58話 頼れる先輩

「──ここまではいいですか? ラビィ」

「ええ、ジュギョウでならったとおり……『レディー』と『はなちたいマホウのイメージ』がタイセツということですね」

「そうです。ではまずは……宣言レディーからカクニンしてみましょう」


 時は放課後で場所はグラウンド。カインがラヴィに魔法の使い方を教えるのを、オレ、ケアフが見守る形になっている。

 せっかくだからアリスジセルもと誘ったのだが、ラビィが反発し、アリスジセルも乗り気ではなかったので、彼女は既に寮へと帰っていった。


「はいっ! ワタシのレディーのドウサはこうです!」

「……なるほど。ミミとミミをつきあわせる、それがアナタのセンゲンですね」

「はいっ!」


 二つのウサ耳が内側に動いてくっつく。

 なんだか可愛らしいな。

 ……けれど。

 オレは獣人じゃないから正しい感覚はわからないが、耳を動かすことにだいぶ意識を持っていかれないか?


「ではツギに、はなちたいマホウのイメージ……ラビィの『ショウライゾクセイ』はなんですか?」

「ソレが……『ムゾクセイ』なんです。ミズとかカゼとかだとイメージしやすいんですけど」

「たしかにそうですね……では、まずはイチド、マホウをはなとうとしてみてください」

「はい! レディー……!」


 ラビィがウサ耳を突き合わせて宣言をする。

 そして、腕を前方に伸ばす……が。


「……ダメ、です」


 少しの間の後、腕を下げて俯く。


「いまイメージしたのは『ゴクショウキュウ』のものであっていますか?」

「そもそも……イメージがうかばなくて」

「それならば、『ムゾクセイマホウ』が使えないボクよりも……ケアフ!」

「にゃ!」

「えっ!?」


 ケアフと、カインに教えてもらう気満々だったラビィが驚きの声を上げる。


「カインセンパイ! ワタシはアナタに……!」

「いったはずです、ラビィ。ケアフがたよりになることを、ショウメイすると……」

「にゃ……」

「ケアフ……ダイジョウブですよ。いままでのレンシュウをおもいだしてください。アナタならできます」


 一歩前に進んで俯くケアフに、カインが近寄って……軽くポンと肩を叩く。


「……わかった!」

「…………」


 決心した表情のケアフが不服そうな顔のラビィに近づいて。


「ラビィ、まずはみゃーがまほうをうつ。みててくれ!」

「……わかりましたよ」

「レディー! 『極小無属性魔法ディシィノーン』!」


 ケアフが的に向かって極小無属性魔法を放つ。

 ……たまに疑問に感じるが、無という割には灰色の実体がある何かが的に飛んでいるんだよな。

 たしかにこれはイメージがしにくいだろう。


「……まあ、ニネンセイならうててトウゼンじゃないですか」

「にゃははっ、そうだな! ……それじゃ、つぎはっ!」


 ラビィの悪態も笑い飛ばして、ケアフはラビィの背後に回る。


「なっ、なにをするんですか!?」

「ラビィ、うでをのばせ!」

「はい? ま、まあそうしますけど……!」

「レディー!」


 ラビィが腕を伸ばし、それに並ぶようにケアフが『宣言』をしてから腕を伸ばす。

 もちろん今回も放つのは『極小無属性魔法』だ。

 ……そういえば、ラビィが『宣言』したときは魔法名が見えなかったな。

 正しく宣言ができていないとこうなるのか。


「『極小無属性魔法ディシィノーン』!」


 ケアフが再び極小無属性魔法を放つ。


「……どうだ? 『しゅかんてき』にみてなにかわかったことはあるか?」

「……わからない、ということがわかりました。ナニをイメージして、あのハイイロのコウセンをだしているのか、やっぱりわかりません」


 ケアフが難しい言葉を使っている……ということはカインからの受け売りだ。

 ケアフはこうやって、カインと共に魔法を使えるようになったのだ。


「にゃはは、みゃーもそうおもっていたから、きもちはわかるぞっ!」

「……どうやって、イメージできるようになったんですか?」

「いいか、ラビィ、『むぞくせいまほう』の『む』っていうのは、『む』が『ある』じょうたいだってことをいっているんだ」

「『む』があるじょうたい……?」


 無属性魔法はオレも最近使えるようになったが、習得になかなか苦労した。各属性の中でも一番難しいんじゃないだろうか。


「……ますは『ひ』、ようするにもえさかるほのおをそうぞうしてみろ。そうだな……『よなか』のそうげんにもえさかるほのおだ!」

「……はい」

「そのそうぞうのほのおを、たくさんのみずでけすんだ!」

「……できました」

「いま、そこにはなにがある?」

「ヨルの、ソウゲンです……どうにかのこったクサバナがカゼにゆれています」

「……じゃあ、そのかぜをとめてみろ」

「……とめました」

「そらをみあげればなにがある?」

「ひかるツキがあります」

「じゃあそのつきをくもでかくせ」

「……かくし、ました」

「いま、おみゃーはどこにたっている?」

「まっくらな、ソウゲンです」

「そのじめんをけしてみろ」

「じ、じめんを……お、おち!?」

「いま、おみゃーはまっくらななか、おちつづけているはずだ。とまってみろ」

「とま、どうやっ……あっ、できた! できました!」

「いま、おみゃーはまっくらやみのなかぽつんとしている」

「……はい」

「そのくらやみがすこしずつあかるくなって、『はいいろ』になる」

「……あ」

「それが、『む』があるじょうたいだ……いま、レディーはできるか? すこしずつ、いしきをみみにしゅうちゅうさせろ」

「……レディー」


 ……『極小無属性魔法』が発動される。

 オレはみんなよりも一足先に口角を上げた。


「『極小無属性魔法ディシィノーン』! ……あっ、やった! できた!」

「やったな! ラビィ! それじゃ、いまのかんかくをおぼえているうちに、どんどんうっていくぞっ!」

「はいっ!」


 斜に構えたようなラビィのケアフを見る目が真っ直ぐになっていて、オレの口角は更に上がった。


「……ふふ、よかった。ケアフちゃん」

「ええ、ホントウに……」

「もう、立派な頼れる先輩ですね!」

「……ええ」

「もちろん、ケアフちゃんだけじゃなくて、カインさんもですよっ!」

「ふふ、ありがとうございます、エンドリィ」


 カインのケアフへの指導が、ラビィへの指導に繋がった。二人ももう、立派な頼れる先輩だ。

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