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第57話 魔法の才能

「むぅ〜……!」

「ひぃ……」


 今は夕食時。

 いつものように取りたい料理を取って椅子に座ったのだが……。

 ラビィがオレの隣に座っているアリスを睨みつけている。

 ……まあ、こうなることは予測できていたのだが。


「ラビィ、あまりヒトをにらむものではありませんよ」

「アリス、もう小級魔法を使えるようになったんだってなぁ? やるじゃねぇか!」

「ひぅ!」


 ストレンスの賞賛の声もビビる対象のようで、アリスジセルの肩はピクリと震える。

 そう、彼女はいとも簡単に小級魔法を使えたのだとか。オレのときとは違い、極小級魔法もバッチリ使えるそうで。

 これは魔法の才能があるな。


「にゃ! ストレンスよりもすごいなっ!」

「けっ、うるせぇうるせぇ……んで、ラビィ、お前はソレが面白くねぇってわけか」

「……そうですよ! でも、それだけじゃないです! ワタシがハジをしのんで、マホウのつかいかたをおしえてもらおうとしたのに、『よくわからない』とか、『つかえるからつかえる』としかいわないんです!」

「あぁ、アリスちゃんは感覚派なんだね……私もどちらかといえばそうだけど」


 というか、ラビィはアリスジセルに教わろうとしていたのか。少し意外だったが……彼女は真面目なのだろう。ソレが強すぎる故に他人に対して多くを求めてしまうのだろうが。


「だって、まほうなんて、せんげんをしてはなつだけじゃないですか」

「はなつ『だけ』!? その『だけ』ができないワタシをバカにしてるの!?」

「ちがうよぉ……ただつかえないのがわからないだけだよぉ」


 ラビィに睨みつけられ、アリスジセルはオレの後ろに隠れる。

 出来ない理由が本当にわからないのだろう。


「そうやってすぐにかくれて……! こんなヤツにきいたのがまちがいだったわ! カインセンパイ、マホウのつかいかた、おしえてくださいっ! アナタならカンカクじゃなくてリクツでおしえてくださるでしょう!?」

「あはは……ボクでよければ」


 カインが苦笑いを浮かべながら頷く。

 ケアフが魔法を使えるようになったのは、彼の指導が的確だったからということもある。

 先生役としては問題ないだろう。


「ライシュウのカンゲイエンソクまでにはマホウをつかえるようになりたいです!」

「ゼッタイ……とヤクソクすることはできませんが、キョウリョクしますよ」


 そうか。歓迎遠足……去年のその頃のオレたちは、ケアフ以外は一応なんらかの属性魔法を使えるようになっていたからな。焦るのも無理はないだろう。


「アリスちゃん、遠足、頑張れそう……?」


 流石に去年のように故意の害が降り注ぐ事はないだろうが、それがなくとも険しい道だ。

 頼れる、と言える程の友人関係をまだ築けていないアリスジセルが乗り越えられるだろうか?

 ……うーん、不安だ。


「がんばり、ますけど……しょうじき、やだなぁっておもってます。ずっとねてたいです」

「あはは、ずっと寝ていたいって……」

「だって、ゆめのなかはたのしいじゃないですか」


 そう言うとアリスジセルはしょぼしょぼした表情でサラダをもしゃつく。


「ふんっ、それじゃあアナタはジブンのイエのヘヤでずっとねていたらよかったじゃない! ガッコウになんてこなくて!」

「うぅ、ほんとだよぉ……パパたちがだいじょうぶだいじょうぶっていうから」


 皮肉めいたラビィの言葉にアリスジセルが肯定を返す。

 うんうん、その場のノリで頑張れるんじゃないかと思って、いざ渦中となったら絶望すること、あるよな。


「にゃー、みゃーもねることがだいすきだけどな、さいきんはおきてるのもたのしいんだ。エンドリィたちがいるからなっ!」

「ケアフちゃん……」

「このマエのニュウガクシキのときにおもいっきりねてませんでしたっけ?」

「あれはこうちょーせんせーがわるいっ!」

「わははっ、まああの長話は仕方ねぇよ……どうだアリス? 現実にも楽しいことは沢山転がっているぜ。せっかく自由な人間なんだからよぉ、自分の足で歩いて探していこうぜ!」


 自由な人間……少し前まで奴隷だった彼が言うと重みが違うな。


「めんどくさい、です……」

「うおっ、ぜんっぜん響いてねぇ! マジかよ……」


 ながーくため息を吐くストレンス。

 まあ、引きこもりと陽キャは相容れないものだもんな。


「もうっ、こんなヤツほうっておいていいじゃないですか! センパイたちのコトバもきいているんだかいないんだかわかりませんし!」

「きいてはいるよぉ……」


 それを実行できる人間でないと話が耳から耳へと通り抜けてしまうのは、気持ちがわかるが……。


「……ふんっ! あっ、そうだ! マホウのレンシュウなんですけど、ホウカゴにグラウンドシュウゴウでいいですか? カインセンパイ!」

「ええ、いいですよ!」

「にゃ! みゃーもラビィにおしえたーいっ!」

「いえ、ケッコウです」

「にゃんだとぉ……!?」


 ラビィの冷たい言葉にワナワナと震えるケアフ……なんか、去年の今頃のケアフとカインを思い出すな。


「だってケアフセンパイ、カンゼンにカンカクのヒトっぽいですもん。『まほうはわーってやるんだっ!』とかいいそう」

「にゃー! みゃーをなんだとおもってるんだ!」

「……おおかた、おなじ『ハンジュウジン』のセンパイだからがんばろう、なんておもってるんじゃないですか? でも、すこしたよりないというか」

「……にゃ」


 ラビィの言葉に尻尾をしょんぼりとさせるケアフ。

 さて、どうやってケアフをフォローしようか。


「……ラビィ、ボクのユウジンをバカにしないでください。ケアフがたよりになるということを、アスのホウカゴ、ショウメイしてみせますよ」

「……」


 カインが穏やかに、されど重みを込めて、ラビィに言い放つ。

 ……どうやらオレのフォローは必要ないようだ。

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