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第43話 『ザ・ブラック』

 その虹色の光はオレの肩を貫いて。

 オレの右腕が吹き飛んだ。


「ぁ、ぅ、ああああああぁぁぁぁぁッ!!」


 ブシャ、と血が溢れ出す音がした。

 オレは着地してすぐに右腕を掴み走り出す。


「あっ、あっ、あ……っ!!」


 痛いッ! 熱いッ! 頭がクラクラするッ!!

 なんだッ!? 今のッ!?

 『全属性混合魔法(アルティメット)』を一人で!? 本当に規格外の化け物だなッ!


「いつも思うんだよね。宣言に動作なんて与えて……そのために必要なモノが無くなったらどうするのって」

「ぅぅ! あぁぁッ!!」


 ゼションがオレの前に降り立ちながらそんな事を言う。

 だからお前くらいなんだって! そんな芸当ができるのッ!!


「さ、どうやって死にたいかな? 燃えて死ぬ? 土に埋もれて圧死する? 水で溺死する? 風に切り刻まれて死ぬ? 光に当てられて死にたい? それとも闇に包まれて一瞬で逝く? 無属性魔法で死体ごと消えてもいいよ? もちろん、一緒にね」

「……ッ!」

「お、おやめくださいゼション様ッ!」


 雄弁に語るゼションの元へ一人の使用人がやってくる。


「レディー『小闇属性魔法(ダーク)』」

「レディー! 『小光属性魔法(ライト)』ッ!」


 ゼションの闇属性魔法を光属性魔法で打ち消す使用人。


「そうか、君は光属性魔法使いだったか。邪魔くさいなぁ……」

「ひっ! レディー! ……ッ! レディー! レ──」


 ゼションが使用人に向かって歩いていく。

 ……使用人はパニックになって上手く宣言できていないようだ。


「僕の気分を害したから……こうしようか。レディー『極大闇属性回復魔法(キーロダークヒール)』」

「ひっ、ぅ、ぐ、ああぁ──」


 ポン、とゼションが使用人の肩に手を置いた。

 すると、使用人の身体はブクブクと膨れ上がり……破裂した。

 辺りに飛び散る肉片や脳梁に血液。

 オレの体も血に晒される。


「ぅ……!」


 ベチャ、と音を立てて数秒前まで人間だった肉がオレの頬につく。

 その生温かさと血の匂い。


「ああっ、そうだッ! とっておきの毒も用意しているんだよ! レディー『取出魔法(ピックアップ)』! ……ほらッ! 二本分ッ!」


 血に塗れたゼションが虚空からガラス瓶を取り出す。

 ……人を破裂させた直後とは思えないキラキラとした表情で、それがまた気持ち悪くて。


「ぇッ! おええええええぇぇぇぇぇッ!!」


 胃の中のモノを全て吐き出してしまう。


「おや、勿体無い……どれどれ? 今日の朝ごはんは何だったのかな?」

「ぅおッ! おぇぇッ!! ぅッ!!」


 気色悪いことを言って笑いながらゼションが近づいてくるが、吐き気が治らずその場でえずく。


「──ッ!!」

「なッ!?」


 ……空から何者かが現れ、ゼションを踏みつける!


「小職の生徒にはもう指一本触らせんぞッ!」

「エンドリィ! もう大丈夫です……うッ!?」

「な、ナウンス先生ッ! エストさんッ!」


 ゼションを踏みつけるナウンスと、手で口を覆うエスト……来てくれたんだな。


「……正門に他の皆さんも来ていますわッ! 一旦其方へ逃げましょうッ! レディー、『大上昇魔法ウィンドアップヘクティア』ッ!!」

「チッ! レディー『極大上昇魔法(キーロウィンドアップ)』ッ!!」

「むッ!!」

「ナウンス先生ッ!」


 エストに抱き抱えられたオレはゼション邸の正門まで飛ぶ。

 飛び去る前に見えたのは、ゼションが上昇魔法を唱えて浮き上がるところで。


「エンドリィちゃんっ! 腕、大丈夫ッ!?」

「お待ちになって! ワタクシが治しますわ! レディー、『中風属性回復魔法ディキャウィンドヒール』!」


 リーズさんが心配そうに駆け寄ってくる。

 それを制止したエストがオレの右腕を右肩に固定して回復魔法を唱える……すると、肩の一部が復活して右腕とくっついた!


「あ、ありがとうございますっ!」

「私たち騎士団も来た。いくらゼションと言えどもこの多勢には叶うまい」


 ラボーさんが頷く。

 後ろには騎士団員、ランブルロックを含む教員とスー家の九年生の使用人、総勢六十名程が正門を囲うように三列に並んでいて。

 ……それでも安心は出来なかった。


「……ゼションは一人で『全属性混合魔法』を使えます。おそらく極大級まで」

「なに……? 他の属性は相殺できるとしても光属性魔法と無属性魔法は防げないな!」

「それでも、こちらの攻撃も向こうには通りますわ……! アイツに勝ち目はありません!」

「今のアイツは死を恐れていません! このままだと死傷者が多く出てしまうかも……!」

「……なるほどな。『エンドリィ・F・リガール』、貴様は列の中心に居ろ」

「ナウンス先生ッ!」


 ナウンスが地面へと舞い降りる。


「……『ケアフ・E・アール』は無事だ。『カイン・D・ウール』やその他の生徒と共に王都へと帰還した」

「よかった……!」

「さ、エンドリィちゃん! 私と一緒に下がっていましょう!」

「……はいッ!」


 歯痒い気持ちはあるが、オレではアイツ相手に何も出来ないからな。


「……安全なところに瞬間移動したいかもしれないけれど、もしもゼション君に追われたらかえって無防備になってしまう。今は多分、ここが一番安全だと思うわ〜!」

「……はい!」


 オレはリーズさんに抱えられて列の中央へと移動する。


「あの、リーズさん、貴女はここに来て大丈夫なんですか? その、回復魔法も──」

「……ラボーさんにもエストにも止められたわ。けれど、ここで動かなきゃ私は一生後悔するかもしれないって説得したの」


 オレのために来てくれた。それだけでこんなにも胸が熱くなり……ソレと同時に、オレのせいで彼女たちが命を失うかもしれない恐怖に震える。

 ケアフだって一歩間違えてたら死んでたかもしれないんだぞ? それでも、協力してくれた……。


「ごきげんよう、皆さん……大人しくエンドリィを引き渡してくれないかな? そうしたら見逃してあげるからさ」

「何を言っている! 己の立場がわかっているのか!」


 正門前に降り立ち演説をするように言うゼションに対し、ナウンスが声を荒げる。


「……もう、もうおやめくださいませッ! ゼション様ッ!」


 あの使用人の老婆がゼションに縋り付く。


「五月蝿いなッ! レディー『小風属性魔法(ウィンド)』ッ!!」


 ゼションはそんな彼女を蹴り飛ばし、風属性魔法で吹き飛ばす。


「レディー『ザ・ブラック』!」


 そして、彼女目掛けて魔法を放った……『ザ・ブラック』? 聞いたこともない魔法だッ!


「五列目! 避けろッ!!」

「う、うわッ!」


 ランブルロックが叫ぶ。

 漆黒の魔法は貫通し、老婆が飛ばされた列を穿つ……。


 とてつもない速度で放たれたソレに当たった四人の身体が、黒炎に包まれる。

 絶叫の中ソレを払おうとし、不自然に炎が消えたのも束の間、その身体の至る所が水泡のようにブクブクと膨れ上がり、やがて砂のように崩れ落ちれ、風に晒されたように周囲に散らばっていく。

 ……さっきまで、人間だったのに、だぞ?


「……う、ぐッ!」

「なん、だッ、コレ!?」


 砂となって消えた者の周囲に居た人たちまで苦しみ、吐血する。


「……ッ! レディー! 『中閃光魔法(ディキャフラッシュ)』ッ!」

「キャッ!?」


 オレは咄嗟に閃光魔法を唱えた。

 リーズさんが眩しさにオレから手を離す。


「ほう、エンドリィは気づいたようだね? 『ザ・ブラック』……それが僕の特殊能力の名前であり、『真の全属性混合魔法』の名前でもあるッ!」


 闇属性が混ざった『真全属性混合魔法』……当たった相手は砂となって苦しんで死に、ソレを吸った人間にも重傷を与える魔法!

 悪趣味な魔法だッ! ……光属性魔法を使えば浄化はできるようだが!


「ちなみに今のは小級の『真全属性混合魔法(ザ・ブラック)』だ。もちろん僕は極大級のコレも撃つことができる。この意味がわかるね? エンドリィ!」

「……レディー」

「ちょっと! ダメよ、エンドリィちゃ──」

「『極小上昇魔法ディシィウィンドアップ』ッ!!」

「レディー、『中上昇魔法ディキャウィンドアップ』ッ!」


 オレはリーズさんの手を払いのけて上昇魔法を放ち、空中でもう一度上昇魔法を放つ。

 そして、ゼションの前に立って……。


「もう、もうやめてくださいっ! 私が死ねば皆さん助かるんですよね!?」


 前世ではバカにしていた自己犠牲に打って出た。

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