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第38話 誕生日

「──にゃ! たんじょうびおめでとう、エンドリィ!」

「まだはやいですよ、ケアフ」

「はやいってなんだ? おめでとうはなんかいいってもいいんだぞっ!!」

「あははっ……あっ」


 あっという間に冬休みに入って。今は十二月三十一日。年の最後でもあり今世のオレの誕生日でもある。

 昼間はカフェで誕生会を行うことになり……って。


「おっ。……」


 ストレンスとすれ違うが、あえて無言を選んだのだろう。そのまま去っていった。


「どうかしました? エンドリィ」

「あの『どれい』がどうかしたのか?」

「いいえ、なんでもありません」


 今はこれでいいのだろう。いつか、彼も自由になる日が来るといいが。



「──おぉ、エンドリィちゃん! 今日は誕生日という話じゃないか! おめでとうッ!」

「わっ、ありがとうございます、おじいちゃん!」


 カフェの扉を開けようとすると、老人が店から出てきて。


「あの、エンドリィ、このゴロウジンは?」

「よくお話するおじいちゃんです!」

「おぉ! じゃあエンドリィのともだちか! こんにちはーおじいちゃん!」

「わっはっは、こんにちはっ! ……そうだ、エンドリィちゃん、誕生日プレゼントをあげよう!」


 そう言って老人が取り出したのは、指輪だった。ソレには恐ろしく白い宝石が付けられており……よく見ずとも高そうだという印象を受けた。


「ありがとうございま……って、こんな高そうなもの、受け取れませんよっ!」

「わっはっは、そう言うな。エンドリィちゃんと話すのはこのジジイの数少ない喜びなんだからな。キミのことを本当の孫のように思っている! どうか受け取ってくれないか!」

「あ、ありがとうございますっ!」


 そこまで言われて受け取らない訳にもいかない。

 ひぇー、着けるのもちょっと抵抗があるが……老人が期待のこもった目線をこちらに向けている。


「……わぁ、ピッタリ!」


 指輪は左手の薬指にピッタリとハマった。

 前世も込みで指輪なんかする機会がなかったから、いやに緊張するな。


「わははっ、そりゃよかった! それじゃあ、ワシはこれで失礼する!」


 オレの頭をポンと軽く撫でて、老人は去っていく。


「……それ、ホントにたかそうなユビワですね。こんなまっしろなホウセキ、みたことないですよ!」

「にゃ! きれいだな〜!」


 二人がオレの薬指をジッと見つめる。

 うー、なんか落ち着かないなぁ!


「いらっしゃい! エンドリィちゃん、早速誕生日プレゼントを貰ったの? 良かったわね〜っ!」

「あっはは……はい!」


 思わぬところで貰ったプレゼントだったが……うん、嬉しいな。


「……わぁ! 用意してくださってありがとうございますっ!」

「うふふっ、私も腕が鳴っちゃったわ!」


 椅子によじ登って座り、テーブルを見るとケーキやその他焼き菓子、サンドイッチ等がズラリと並んでいて。


「おぉ! まいつきのりょうの『たんじょうかい』のりょうりもすごいけど、これもすごいなっ!」


 ケアフが目を輝かせている。可愛いね。


「……失礼しますわっ! あら、エンドリィたち、もう揃っていらっしゃいましたのね! マスターも、午後から貸切にしていただいてありがとうございますっ!」

「ふふっ、いいのよいいのよっ! 楽しんでいってちょうだいっ!」


 店主がにこやかに笑う。可愛いね。強面のおっさんだけど、本当にそう見える。


「オーホッホッホッホッ! 忙しい中ワタシもやってきてあげたわよ〜っ! どうっ、嬉しいでしょっ、嬉しいでしょ〜っ!?」

「はいっ、とっても嬉しいですっ!」


 ユーティフルが使用人を連れてドヤ顔でやって来た。

 実際、年末の彼女のスケジュールは過密らしい。こうやって時間を割いてくれるのは本当にありがたいことだ。

 帰省していないクラスメイト達も来てくれるらしいし……大勢来ると店がパンパンになりそうだが。


「ふふーんっ! 夜にパーティがあるけれど、ご飯を食べられる雰囲気じゃないから……ここで沢山食べるわよ〜!」


 政府首脳とその家族が集まる重大なパーティが毎年行われていると聞く。雲の上の話だ。


「ちょっ、シュヤクはエンドリィなんですからね!?」

「そんなことはわかってるわよ〜! プレゼントだって持ってきたんだからっ! はいこれっ!」


 ユーティフルが近寄ってきて箱を手渡してきた。

 ……丁重な包みだ。


「わぁ、ありがとうございますっ! 開けてもいいですか?」

「もちろんっ!」


 なるべく丁寧に包み紙を剥がして、箱を開けると、そこにはヘアピンが入っていた。

 ユーティフルの両側頭部を彩るソレと同じくゼレスディアの花がモチーフとなったもので。


「本当はワタシがつけてるコレをアナタにもあげようと思ったのだけれど……なんだか使用人たちが必死に止めてくるから? そのヘアピンを選んだのっ! やっぱり、この髪飾りの方がよかったわよね?」

「あははっ、私はどちらでも嬉しいですよ。このヘアピン、大事にしますね」


 嘘である。流石に『おそろっち』の髪飾りは重く感じる……この子、七歳にして凄いな。いや、七歳だからこそ無垢で純粋なのかもしれないが。

 ともあれ、早速貰ったヘアピンを付けてみる。


「……ど、どうですかね?」

「おお! にあってますよ、エンドリィ」

「ええっ、お似合いですわっ!」

「にゃ! さらにかわいくなったな! エンドリィ!」

「ええっ、似合っているわよ! ……流石ワタシ! センスがいいわねっ!」

「あははっ、ありがとうございますっ!」


 ヘアピンを付けるという行為になんだか女の子らしさを感じる……もちろん、男でもつけている人はいるけれど。

 オレ、どんどん女の子になっていくな。


「……ああ、そうだ、今のうちに」

「どうかしましたの? エンドリィ」

「皆さん、一月十日の予定って空いていますか?」

「はいはいっ! 空いてるわっ!」


 ユーティフルがいの一番に手を上げる。

 ……たしかに彼女が来てくれると助かるが。


「ええ、問題ありませんわ」

「みゃーもあいてるぞっ!」

「ボクもダイジョウブですっ! ……なにかイベントでもやるんですか?」

「……はい」


 オレは真顔で頷く。


「私の親戚とのお食事会なんてどうかなと思いまして」

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