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第17話 犯人

「──エンドリィ!」


 ナウンスに抱えられ、山の麓に移動したオレたちは、他の生徒達に迎え入れられる。

 見れば、彼らを護るように複数名の教師と高学年の生徒と見られる者達が立っていた。


「あっ、ユーティフルさん」

「あっ、じゃないわよ! どれだけ心配したと思って……!!」

「えっ、心配してくれていたんですか!?」


 いつも目の敵にしてくるので意外だったが……よく考えたら落石のときも助けてくれたな。


「……ワタシじゃなくて、みんながね!?」

「えっ、オジョウサマ、あんなにもハラハラドキドキのヒョウジョウでヴィジョンを……むぐっ!」

「ちょっと! ヨケイな事言わないで!」

「ゔぃじょんといえば、エンドリィ! ぶざまなすがたをさらしてたねっ!」

「…………」


 わーーーーっ!! やっぱり見られてたーーっ!!


「……ねえアナタ、クラスメイトを護る姿のどこが無様だというの?」

「えっ、あっ、すみませんおじょうさまっ!!」

「ワタシじゃなくてエンドリィに謝りなさいっ!」


 ユーティフルの美しい表情が怒りに歪む。

 まあ、安全な場所で見ていたなら、半ケツ出してたオレはたしかに笑いどころではあるだろう。本来六歳児なんかそういう話題が大好きな歳頃なんだから。

 同情の気持ちが湧かないでもなかったが……ユーティフルが怒ってくれたことは素直に嬉しい。


「あっはは、ユーティフルさん、大丈夫ですから……それに、強要された謝罪に意味なんてありませんし」


 謝罪……それも強要されたものほど馬鹿らしいものはない。

 許さなければ今度は許さなかった者の器が小さいだのなんだのという話になる。

 故に、謝られたら許すという選択肢しかなくなってしまうのだ……オレのような陰キャにはよくあったことだ。


「たしかに、それもそうね……えっと、ワタシはね? 綺麗なおしりだなって思ったわよ!」

「……あはは」


 それはフォローになっているのか? 結局バッチリ見られてるんじゃないか。


「ああ、えっと! ちがうの! ヘンな意味じゃなくてっ!!」

「あははっ、わかってますよっ。気遣ってくださってありがとうございますっ!」

「わ、わかってるならいいけど……っ!!」


 ユーティフルの陶器のような肌が赤く染まっている。自分が恥ずかしくなるんだから変な事言わなければいいのに……でもまあ、オレのことをフォローしてくれようとした結果だし、可愛らしいなとも思う。


「エンドリィ! ちょっとこっちにきてくださいっ!」

「あっ、はーい! 今行きまーすっ! それでは、失礼しますねっ!」


 ユーティフルとその取り巻き達に礼をしてカインの元へ向かう。


「……どうしたんですかカインさん」

「ナウンスセンセイからつたえたいことがあるというハナシで。きづいたらエンドリィがいきをするようにユーティフルさんたちにからまれていたので、すこしムリヤリによんだんです」


 助かる心配りだ。オレが身も心も前世のままだったら感謝の気持ちでいっぱいだっただろう。


「……では、小職から貴様ら三人に伝えておこう。実は、貴様らがはぐれた後、土属性魔法を使ったであろう犯人が現れてな」

「そ、そうなんですか!?」


 ユーティフルなんか、オレの心配ばかりでそんなこと一言も口にしなかったぞ。

 ……もう少し聞いていれば話題に出たのかもしれないが。


「幸いにも全員無傷で撃退に成功したのだが……まだ時も経っていないので、気持ちの整理がついていない者もいる。故に、その者たちをいたずらに刺激せぬようこうやって貴様らを集めたわけだ」

「なるほどなるほど……げきたいってことはつかまえられなかったんだな? あっ、じゃなかった。ですよね?」

「小職一人ならば難なく捕まえられた相手だろうが、複数犯やもしれん。うかつな行動はできなかった」

「……ちなみにその犯人の特徴は?」

「赤毛の坊主に真っ黒な仮面を被っていた。体格はローブで隠れており、何とも言いがたく、性別も断定するに至る情報が足りていない」

「なるほど……」

「騎士団にもこの事は伝えたのでじきに犯人は捕まるだろうが……当分、貴様らも行動に気をつけることだ。特に、『エンドリィ・F・リガール』。貴様はな」

「私……!? あ、そっか」


 突然の名指しに驚く。

 いや、でも、そうか。ちゃんと理由があるな。


「うむ、一度目に貴様を、二度目に貴様らを襲ったあの風魔法は、どう考えてもグリフォンのものではない。犯人のものだ。ともすれば、貴様が狙われている可能性もあるのだ」

「……それがホントウだとすれば、どうしてエンドリィをねらうのでしょう?」

「今この場で答えは出ん……とにかく、注意しろ。小職も細心の注意を払う」

「はい……」


 薄気味の悪さを覚えながらオレは頷いた。

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