第14話 ゴブリンの巣
「──う、わぁ……!」
「おもってたよりゴブリンはすくないですね!」
「でもみゃーたちをかこむにはじゅうぶんなかずだ!」
ゴブリンに魔法を当てながら洞窟を進むと、天井もない開けた場所に辿り着いた。
……どうやら、洞窟というよりもトンネルに近かったようだな。
ゴブリンの数はおよそ10体ほど。それに加えてディシィゴブリンが20体。
地形を上手く活用して魔法を撃っていったら追ってくるゴブリンは10体になったので、それぞれ20体ずつ。
「エンドリィ、マリョクリョウはダイジョウブ……ではありませんよね」
「ええ……でも、やるしかありませんからッ! レディー!」
絶望的な状況だ。怖い。嫌だ……。
けど、ここでこの生が終わってしまうのは、幼き二人の生を終わらせてしまうのはもっと嫌だッ!
「『小光属性魔法』ッ!」
ゴブリンに魔法を直撃させて倒す。
「「レディー!」」
「『小光属性魔法』ッ!」
「『極小土属性魔法』ッ!!」
カインと同時に宣言し、魔法を放つ。
オレの魔法はゴブリンに、カインの魔法はディシィゴブリンに直撃する!
「れでぃー……むぅ」
ケアフも片手を挙げて宣言しようとするが、やはりうまくいかないようで。
その隙を狙って一体のディシィゴブリンが彼女に飛びかかる!
「ケアフちゃん!」
「なめるなっ!!」
ケアフは自分の背丈より少し小さいくらいのディシィゴブリンの腹を蹴りあげ、悶絶している背中を踏みつける。
軽やかな身のこなしだ。流石は獣人のハーフ!
「レディー……『小光属性魔法』ッ!」
なんて魅入っている場合ではない。オレも敵を殺さねば。
「でぃしぃごぶりんくらいなら、まほうがなくてもたおせるなっ!」
「レディー! 『極小土属性魔法』ッ!!」
「にゃっ!?」
「まったく……ユダンはキンモツですよ?」
「おぉー! ありがとありがとっ!!」
「……ふんっ」
声だけしか聞いていないので正確にはわからないが、大方、襲いかかってきたゴブリンに気づいていなかったケアフをカインが助けたのだろう。
「レディー……『小光属性魔法』ッ!」
それにしても、ここのゴブリンたちは遠距離攻撃を使ってこないことが幸いだな。
馬鹿の一つ覚えみたいに噛みつこうと突進してくるだけだ。
戦闘経験を積んだゴブリンならば石の一つでも投げてきそうなものだけれど。
「レ……ひゃっ!?」
石、投げてきたッ! ちょっと掠った! 痛いッ!! フラグ建てちゃってごめん二人とも!!!
ゴブリンも闘いの中で成長しているのか、今まで舐めプしていたのかは定かでないが、これは厄介なことこの上ないぞッ!
「ダイジョウブですかエンドリィ! ……これはキツいですね。こんなときはカゼゾクセイマホウがユウコウなんですが!」
「ええ、そうですね……レディー! 『小光属性魔法』!」
遠距離攻撃を跳ね返し、土属性魔法を打ち消すのが風属性魔法の特徴……たしかに今欲しいものだ。
しかし、オレは全属性試してみたものの、結局光属性しか使えないし、カインも土属性しか使えない。無いものねだりをしても仕方ないだろう。
それにしても、しんどい……息が詰まるこの感じ。けれど、オレは!
「レディー……うっ!」
「「エンドリィ!」」
宣言した瞬間、急に視界がボヤけて、回って……。
何かが倒れる音と二人の声がやたら鮮明に聞こえた。
「──エンドリィ、すごいなっ! いつのまに『かぜぞくせいまほう』をつかえるようになったんだ!?」
「……え?」
「それに、『ここがマモノのスであることをリヨウして、イキをおおきくすってマソをおおくとりこむ』とは……! なにかのホンにのってたんですか?」
気づけばオレは立っていて。
ケアフとカインがよくわからないことを言っていた。
まず第一に、『オレが風属性魔法を使った』ということ。さっきおさらいしたばかりだが、オレは光属性魔法しか使えなかったはずだ。
第二に、『深く息を吸って魔素を多く取り込んだ』ということ。
魔素、それは空気中を漂う眼に見えぬ魔力の素。
また、魔物は魔素から生まれるとされる。
そんな彼らが巣を作るのは魔素が濃い場所だと言われている。
だから、魔物の巣で大きく息を吸えば魔力回復が早まるというのを『危機一髪話集』か何かで読んだ記憶がある。
だが、オレは今までソレをを失念していたはずだが……。
……何が起こっている? いや、それよりも!
「すぅ……! レディー! 『小風属性拡散魔法』!」
ゴブリンたちが投げてきた複数の石を風が弾き、風刃が彼らを傷つける!
……本当に風属性魔法が使えているじゃないか!
それに、小魔法くらいならば、呼吸を意識することで殆ど魔力を失わずに発動できる……!
「みてくださいっ! ディシィゴブリンはゼンメツ!! ゴブリンはのこり五体です!!!」
オレが気絶する前はまだゴブリンが十五体くらい残っていたはずだ。気づかぬうちに十体も倒している……。マジで何?
『……えるか! 聞こえるか!』
「にゃ! ナウンスせんせーのこえだっ!!」
オレが困惑していると、ナウンスの声が周囲に響いた。これはおそらく彼の特殊能力だろう。
『ふむ、やっと通じるようになったな。貴様らに早急に伝えなければならないことがある!』
「伝えなければいけないこと……?」
『早くその巣から脱出しろ! 其処は本来ゴブリンの巣ではないッ!』
「にゃ……!?」
ゴブリンの巣じゃない……? 『本来』ってことは、別の魔物が!?
『グリフォンの巣だッ!』
グリフォン。さっきのキングゴブリンよりも上位の『大級魔物』だ。
それぞれの季節に対応した巣を作っていると言われており……。
なーんて、落ち着いてる場合じゃないよなぁ、はははははー。
…………。
「逃げましょうっ! カインさんっ! ケアフちゃんっ!!」
二人が頷くのを見るや否や、オレ達は残りのゴブリンをガン無視して一つしかない出入り口へと向かう。
「グルルルルルル……ッ!!」
しかし、考えてみれば予想できた話なのだが、足を負傷したキングゴブリンと鉢合わせになって。
「「「うわああああああぁぁぁぁぁーーーーッ!!!」」」
オレ達は思いっきり叫んだ。




