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第13話 『アニマルポゼッション』

「これが、このヒトの……」

「……カインさん、『実録特殊能力図鑑』を読んだことはありますか?」

「もちろんあります……けど、マモノをドウシウチさせるトクシュノウリョクなんて」


 実録特殊能力図鑑……その名の通り実際に存在する特殊能力を集めた図鑑のこと。

 秘匿されているモノもあるだろうけれど、この本を読めば、大抵の特殊能力を把握できると言われている。

 ……カインの言うとおり、魔物を同士討ちさせる特殊能力は載っていないが。


「こう考えるのはどうですか? 『アニマルポゼッション』の類だと」

「……あっ、そっか。なるほど! ジッサイにみるのははじめてで、シツネンしていました!」


 アニマルポゼッション。名前の通り動物に憑依する特殊能力。


「そもそも、アニマルポゼッションで憑依できる動物の範囲自体は広いじゃないですか」

「ええ。ただ、フクサヨウが……」


 アニマルポゼッションの『アニマル』には魔物や人間も含まれている。

 実際、この能力を使って魔物を操って暴れたり、他者を操って殺人事件を起こしたり……なんて事例があったらしい。

 ただ、その事件の犯人たちは元に戻れないまま餓死したり、精神が魔物に近寄って気が狂ってしまったり、自分こそが『殺された人間』であると思い込んだり……という凄惨な末路を辿っている。

 いくらなんでも能力所有者がそれを親から教えられてないことはないだろう。


「もしかすると、『魔物に対してのみ憑依できる代わりに副作用も無い、もしくは小さい』という可能性はありませんか?」

「ああ、たしかに……! それならガッコウにまねかれるのもうなずけますっ!!」


 なんて、ケアフが憑依しているであろうキングゴブリンを見ながら推論を話していた……もしこれが間違ってると思うと怖くてたまらな──。


「……ッ! ケアフちゃんッ!!」


 つぅ、とケアフの鼻から血が垂れる。


「もうジュウブンあばれたでしょうッ! もどってきてくださいっ!!」


 カインがキングゴブリンに向かって叫ぶ。


 キングゴブリンはそれを受けて……。

 己の腿に大槍を突き刺した!


「にゃあああああああぁぁぁぁぁぁッ!」


 瞬間、オレにもたれかかっていたケアフが叫び声を上げる。


「ケアフちゃんッ! 大丈夫っ!?」

「サイゴまでムリしすぎですってばっ! バカなんですかっ!?」

「にゃんだとおぉ!? あしをけがさせれば、もうとべないとおもってだなぁ!」

「それはわかってるよっ! でも、無茶しすぎっ!!」


 憑依先で傷つけばその感覚は憑依元へも伝わってくるらしい。よほどの覚悟がない出来ないだろう。


「む、それは……いや、それよりにげるぞっ!」

「そうですねっ! いきましょうっ!」


 オレは二人と同時に走り出す。

 ゴブリンはまだキングゴブリンに攻撃を仕掛けており、キングゴブリンは彼らの対処に追われている。

 このまま左の道から逃げてしまおう!


「それにしても、おどろきましたよっ! マモノにヒョウイするなんて!」

「にゃはは! みゃーもはじめてだったからなっ! うまくいってよかったぞっ!」

「……え」


 鼻血を制服の袖で拭きながらニッコリと笑うケアフ。

 は? 初めて……?

 なんだか嫌な予感がするぞ。


「ねぇねぇ、ケアフちゃん、魔物に憑依するのは危ないからダメだってパパかママに言われなかった?」

「……にゃっはは、いわれてた。『あにまるぽぜっしょん』をまものやにんげんにつかってはいけないって」

「……アナタがツカったのってフツウのアニマルポゼッションだったんですか!?」

「そうだぞ! けど、やくにたったろ?」

「バカなんですか?」

「大馬鹿だよケアフちゃん! 戻って来れなくなるかもしれないんだよッ!!」

「にゃ……」

「でも、ありがとう。きっと私たちのために無理してくれたんだよね」


 走りながらケアフの頭を撫でる。


「そうだっ! みゃーはエンドリィが好きだし、カイン……おみゃーともなかよくなってみたい! だから、こんなところでおわりたくないんだッ!」

「……ボクと?」

「にどもいわせるなっ!」


 喧嘩を続けているカインとも仲良くなりたい。ケアフはこういう子だ。


「……まあ、コンカイのことはカンシャしてますよ。バカだなとは思いましたけど」

「にゃっ! ひとことよけいだな……っ!」

「ふふ……!」


 二人の仲が少し縮まったようで思わず微笑む。

 いやあ、よかったよかった!

 今進んでいるこの道も全く安全だとは言えないんだろうけど、少なくともオレたちは今、ケアフのお陰で生きている!


「──な!? また……わああああああぁぁッ!!」

「──え? うわぁああああああぁッ!」

「──……ん? にゃあああああああぁぁぁッ!」


 そんなケアフの決死の覚悟を嘲笑うかのように、オレたちは風魔法で飛ばされた。


 左の道から右の道へと落ちていく。その段差は大したものではなく、怪我はなかったが。


 キングゴブリンの暴走に恐れ慄いて巣へと帰ろうとしていたゴブリン達と鉢合わせてしまう。

 ざっと見て20体はいるか?


「これはちょっと……魔力が足りないかも!」

「それイゼンにカズのボウリョクでやられるかもしれませんっ!」


 おそらく巣であろう洞窟と挟まれる形になった。


「……いたしかたありません! エンドリィ! ゴブリンのカズをへらしながらドウクツへにげましょうッ!!」

「にゃ!?」

「ええっ!? で、でもそれしかありませんよねっ!! ……レディー!」


 そうしてオレたちは洞窟へと入っていくのだった。

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