17 王都で金貨140枚貰ったよ。
「俺達3人は仕立屋に行ったけど、リーダー・サブリーダーの【正装】はどうするの?」と、若い気持ちを取り戻すかのように元気な声で聞くと・・
「ああ・・駆け出し冒険者のサンドは知らないのだな・・知ってのとおり冒険者は【色々な国】に行く事が多い。したがって【衣類】や【鎧・剣】の類は予備を揃えておく必要がある~貴族が住むような大きな街に【貸し倉庫】を借りる冒険者が多いのだよ。それと、私達のパーティーメンバーは、最近ラトビア王国に来る機会が増えたので、王国ギルドの【貸倉庫】を借りているのだよ。」
と、2人の関係をバラす情報を語るのだった。
「へへへ~貸倉庫が1つって事は、二人はデキているのですな!」と、若きシーフが遠慮なく【ニヤニヤ】と話に入るのだった。
+++++++++++++++++
翌日、午前中は王都の武器屋・鎧工房・冒険者雑貨などを魔法師から案内してもらい、午後になると宿で【正装】に着替えて、貴族街に入ることにした。
<冒険者ギルドから使いが来ていると思いますが、サンドと、そのパーティー一行ただいま到着いたしました。>と俺が侯爵家の門番に告げると・・
「暫くお待ちを。」と言い『チェック柄の制服』を着た門番が中へ走る。
魔導師は「子爵家は『大アーリア魔道国』周辺の出身のようですね。貴族の制服は大抵、出身を示すものです」と言うのだった。
俺が「詳しいですね。魔導師とシーフ・・いや鑑定士も魔道国あたりの出身ですか?」と尋ねると、少し驚いた顔をして・・
「どうして鑑定士と私が同じ国だと思ったのですか?」と聞いたので、俺は・・
「食事の時に、リーダーとサブリーダーが同じ神を敬い、鑑定士と魔導師も同じ神を敬っていたので、そう感じたのです。」と正直に答えた。
魔導師は少し怖い顔になり・・「フム・・教えてくれてありがとう。君は思ったよりも鋭い少年ですね。」と言うのだった。
<カツン カツン>と、固い大理石?で出来た階段を登り、応接室に案内された。
「おお!さっそく来てくれたのだね。あと2日遅かったら会えないところだったよ!」と言いながらアンドリュー団長が来た。
俺は預かった『タグ』を渡しながら・・「2日後にはセキガハーラに行くのですか?」と聞くと、リーダーが「サンド!失礼だろう。軍事の話は命に係わるものだ、不用意に聞いてはだめだ。」と俺を諌めると「侯爵令息様。大変失礼をいたしました。サンドは若く、貴族についても詳しくは無いのです。」と焦ったように早口で言い訳するのだった。
アンドリュー団長は「いや。私が不用意な事を言ったのが悪いのです、自分の屋敷にいると、どうしても口が軽くなってしまう。お客様に気を使わせるなど、私はまだまだ当主失格ですね。」と謙遜するのだった。
<パン パン>と手を叩くと・・<ゴロン ゴロン>と大きな【革袋】が乗ったワゴンが使用人によって運ばれて来た。
「約束の金貨100枚だ。受け取ってくれないか。」と言う団長に対して俺が「あのう・・」と断ろうとすると、リーダーが小声で「サンド!貴族に恥をかかせてはいけないよ。」と俺に言うのだった。
俺が「わかりました。ありがたく頂戴いたします。」と承諾したところアンドリュー団長は
「申し訳ないのだが、私は直ぐに【城】に行かなくてはいけない。君たちはゆっくりして行ってくれ。」と言うと、グラスに入ったワイン?を一口飲むと、軽く会釈して部屋を出ていったのだった。
「いや~貴族の料理は格別だねえ!」と喜ぶ鑑定士。
「サンドが貴族慣れしていない事にヒヤヒヤさせられたよ。」と小心者のリーダー。
「立派な人でしたね。」と貫禄のサブリーダー。
「まことに・・」と感無量?の魔法師。
俺は「最低限のマナーは知っているつもりだったが、知らない事だらけでした。皆が来てくれてよかった。」と安堵していた。
「ところで金貨100枚について・・」と言うと、リーダーが「サンド!俺も人の子だ・・金貨100枚を目にしたら【オーガ】に変身するかもしれないぞ!」と警告する。