98 月の力の下で
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「うん、いいね」
俺が抵抗する間もなく、あっさりと下が1枚の状態まで、防御を削られてしまった。
外で、しかも女子に剥かれた。恥ずかしさで寒さを無視できるくらいには、体が熱い。
「顔赤くしちゃって、カワイイ」
俺の酷い顔を耳元で褒めた綾ちゃんは、俺の顔の輪郭を指でなぞって、耳に息を吹きかける。
「じゃあ、始めようか。焦らしすぎちゃったしね」
俺を弄んだ綾ちゃんの手が、俺の下に伸びる。
「優くんも、ごかいちょう……」
「ん?」
綾ちゃんが、俺のパンツを掴んだかと思うと、そのまま引き下げるのではなく、掴んだまま手が止まった。
「綾ちゃん?」
「…………」
今までの言動とは、なにかが違う。そして、俺のパンツを掴んだ状態で体が震え始めている。
なんだ、と思って綾ちゃんの顔を見ると、頬を真っ赤しにて、俺のパンツを見ている。
「ご、ごめん優くん!」
「え?え?え?」
急に震えたかと思えば、今度は急に抱きしめられた。
この行動には、なにか企みがあるようにも思えるけど、さっきと違って力が弱く苦しくない。ただ、俺の顔に柔らかいという感触があるだけ。
てことは、いつもの綾ちゃんに戻ったと考えるのが妥当、か。だとしても、なんか変化あったか?周囲か、綾ちゃん自信に。
「まぶし」
太陽か。そういえば、綾ちゃんの手が止まった時は、ちょうど綾ちゃんの顔に太陽の光があったったくらいだった。
てか、ちゃっかり日の出しちゃったな。
「ほんとにごめん。言い訳にしか聞こえないと思うけど、なんかずっとここに興味引かれてて。気づいたら、ここに……」
どうりで、だから移動中の綾ちゃん何も考えてないように見えたのか。
「わかったから、とりあえず戻ろ、父さん達心配してるだろうし。着付けはできるの?」
「う、うん……」
服装のことを指摘すると、今更気にし始めたのか、空いている浴衣を閉めて、半裸状態を隠す綾ちゃん。
「じゃあ、俺人が来ないか見とくから、早めに着替えて」
「ありがとう」
顔が真っ赤な綾ちゃんを、その場に残して、俺は人がここに近づかないよう、見張ることにした。
「これは……ツクヨミか」
綾ちゃんの着替えシーンを守るとき、周囲を見渡して見つけた、ここの社の説明が書かれた立て看板を読むと、どうやらここの社には、ツクヨミが祀られているらしい。
ツクヨミ、夜の国を治めているとされている月の神様。つまりは、ここの社に祀られていたツクヨミが、夜も相まって、力を発揮、それに綾ちゃんの呪いが反応したということだろう。
アマテラス様には、ありがとうとしっかり口に出して、感謝をしておこう。
「ほんとにごめんね優くん」
「早かったね」
「急いだから……」
結構な速度で着付けが終わっらしい、綾ちゃんが俺の横に来た。急いだからか、元に比べて少し崩れてるけれど、気になるほどでもない。
「じゃあ行こうか。父さんほんとに心配してるみたいだし」
綾ちゃんを待っている間に、スマホを確認したら、優來と父さんから不在着信が5件来ていた。
「う、うん。ほんとうにごめんね」
正気に戻った綾ちゃんと、父さん達の元へ移動を始めたはいいけど、綾ちゃんはマジで落ち込んでいるみたいで、道中ずっと謝られた。
「優、遅かったな。もう、日が登り始めてるぞ」
「ごめん、綾ちゃん体調悪くなっちゃったみたいで」
「大丈夫か綾」
「う、うん優くん居てくれたし……」
綾ちゃんは、お父さんに聞かれてさっきのことを思い出したのか、顔を赤くして下を向いてしまった。
「それじゃあ、ぼちぼち帰るか」
「今度は、俺が運転するからな」
そういうようなやり取りをした、幼馴染2人は、車の方へ歩いていく。
「お兄、寒い?」
「なんでだ?」
「震えてる」
多分1回綾ちゃんに剥かれたからだろうけど、俺の体は体温を外に放出してしまい、今めちゃくちゃ寒い。
「ぬるいけど、これ」
そういった優來が手渡してきたのは、俺が頼んでいた甘酒。
「ずっと持ってたのか、ありがとな…………優來は、ちゃんと浴衣着てるよな」
綾ちゃんは、素で下を着ずに浴衣を着ようとしてたけど、さすがに優來はちゃんとしてるよな。
「下着ない話しなら、違う」
「いや、いいんだそれで、正解大正解」
良かった優來は、ちゃんと着てくれているみたいで。というか、なんでみんながみんな、下着を着ない着方をやろうとするんだ。
♦
「「遅い!」」
「いやーごめん、帰り混んじゃって」
行きよりも時間のかかった、帰り道を進んで、家に着くと、俺と綾ちゃんのお母さんが、父さん達に軽く怒っている。
「こっちは、おせち作って待ってたってのに。お雑煮冷めちゃったじゃない」
「いや、ほんとにごめんって」
俺たちが寝ずに初詣へ行っている間に、母さん達も寝ずにおせちを作ってくれていたみたいで、リビングの方からいい匂いが漂っている。
「そ、そんなことよりさ。早くおせち食べよ、ちょうどお腹も空いてるし」
「それもそうね。ていうか綾、浴衣崩れてるよ」
「ほ、ほんとに?」
「うん、少し帯の結びも甘いみたいだし」
一目見ただけで、そこまで分かるのか。もしや、綾ちゃんのお母さん、相当な手練か。
「まあ、浴衣汚すとあれだし、優來ちゃんと綾は着替えてきな」
「わかった」
「じゃあ、私は行くね。優くんは、体しっかり暖かくしてね。ほんとにごめん」
最後の最後まで、謝りながら、部屋の奥へ行く綾ちゃんだった。
「うわ……」
そんな浴衣の話を聞いていたら、刈谷さんから通知が飛んできた、それを開くとこちらも浴衣の写真。
刈谷さんは、普通におしとやかな感じで立っている。そしてその横に、成人式で着るような浴衣を着た刈谷さんのお母さんが、刈谷さんに抱きつく形で一緒の写真に収まっている。
ほんとに、刈谷さんのお母さんは、行動が若々しすぎるとしか言いようがない。あそこまで、娘彼氏(嘘)に干渉してくるのは、どうかと思うけど。
「何スマホ見てんの、早くあんた上がりなさいよ」
「はいはい、今行きます」




