94 甘えたがりシスターと狼少女
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「ここに来るのも久々ね」
「母さんはそうかもな。て言っても、俺は俺で1年振りぐらいか」
クリスマスを超えて帰省シーズンに入った今、俺たち家族は全員でばあちゃんち家にやってきた。
ちなみに母さんは、去年から優來が引きこもってしまったのもあって、ここに来るのはだいたい2年ぶりだ。
「にしても、寒いな」
車から降りて、外に出たけど車の中の温かさにかまけて防寒具をしてないから、ものすごく寒い。
「あっちに比べると、少し寒いかもな。早く家入ろうか」
服等の荷物を車から下ろして、ばあちゃんちの玄関前にあるインターホンを鳴らす。
「ドア空いてるから、入ってきていいわよ」
インターホンを鳴らしてすぐ、ばあちゃんちの声がインターホンから聞こえてきた。
「おじゃまします」
「します……」
「いらっしゃい。あ!優來ちゃん久しぶり」
暖かい家に入ると、玄関口でばあちゃんが待っていて、優來を見つけるなり、すぐ優來に抱きついた。
「久しぶり……」
「あれ?優來ちゃんがいるってことは……」
「お義母さん、お久しぶりです」
「やっぱり」
母さんとばあちゃんは、そこそこ仲がいいのかお互い姿を見るなり、声を上げて喜んでいる。
「あれ?お義父さんは?」
「あの人は畑に。なんか、土を起こすんだって」
「それなら挨拶は、後にしましょうか。優はどうする?」
「俺は行こうかな、寒いけど」
ほんとなら、コタツでぬくぬくしたいとこだけど、冬の畑というのも少し気になるし、行くだけ行ってみよう。
「それじゃ、来てそうそうだけど、行ってくる。ん?優來も来るか?」
外に出ようと、玄関扉のドアノブに手をかけたら、優來が俺の服の裾を引っ張って、俺を引き止めた。
「行く」
「じゃあ、行くか。暖かい格好しろよ」
「了解……」
今度はしっかり防寒具を着てから、外に出た。
ばあちゃん家の玄関は、玄関だと言うのにそこそこ暖かく、外に出ると寒さがばいになったように感じる。
「優來は寒くないか?」
「寒い、けど耐えられる。忍耐力」
耐えられると言っているけれど、優來は寒さで軽く震えている。
「お、優くん」
「おお、綾ちゃん」
寒さで震えながら、畑方向へ歩いていると、両親と一緒に車から降りる綾ちゃんと出会った。
「いつ来たの?」
「いまさっきだね。綾ちゃんも?」
「うん、私も今来たとこ」
「お兄、誰?」
寒い中出会った綾ちゃんと話していると、下の方から優來の誰?という辛辣な声が聞こえた。
「ん?あー、優來ちゃんか久しぶり。わかんないかな?綾だけど」
「詐欺……」
「違うって!」
別に優來は、綾ちゃんに会ったことないって訳じゃないから、知らないはずはないんだけど、おかしいな。
「ほら、昔遊んだ……よな?」
何気に昔の優來は、母さんによくくっついてたから、綾ちゃんと会ったことはあっても、話したり遊んだりかは微妙かもしれないな。
「さすがに、遊んだことはあるよ!昔やったでしょ?竹とんぼとか」
遊んだにしては、チョイスが微妙だな。
「竹とんぼ……こんな、大きくない」
「それは、成長したからだよ」
綾ちゃん昔から大きかったけど、その比じゃないくらい大きくなって、優來との身長差もさらに大きくなってるから、身長だけで見ると分かりにくいかもな。
「ところで、綾ちゃん」
「なに……ウッ!」
優來に覚えられてなくて、少し落ち込んでいる綾ちゃんにスマホを見せると、濁った声を出してから、胸を手で押えて何かを止めるような仕草をし始める綾ちゃん。
「巨人さん、どうかした?」
急な綾ちゃんの反応に、巨人と言って心配する優來。
「だ、大丈夫……優くん、なにそれ?欲が刺激されて」
「あ、反応するんだ。ごめん、ごめん」
綾ちゃんに向けていた、スマホをスワイプして綾ちゃんに見せていたものから、別のものに変える。
「大丈夫?」
「う、うんなんとか。今の、何?」
見せていたものを切り替えると、何事も無かったかのように、いつも通りの綾ちゃんに戻った。
「ただの、4Kの満月の写真。ちなみに、今見せてるのは、ただの満月の写真」
「えっと、つまり?」
「綾ちゃんの呪いは、画質が良ければ反応するってこと」
「急にやらないでよ……」
急で悪かったけど、前回呪いの話を聞いて、めちゃくちゃ気になってたから、仕方ない。
「ほんとに、ごめん。ほい」
「ウッ……」
「ほい。もう1回」
「やめてよ!不整脈起こしちゃうから!」
俺の行動に怒った綾ちゃんは、胸を抑えたまま俺のスマホを取り上げようと、手を伸ばしてきた。
「ごめん、もうやんないから」
綾ちゃんに怒られてから、直ぐにスマホの電源を落として、綾ちゃんを元の状態に戻す。
「さっき、なに?」
「まあ、ちょっとした綾ちゃんの弱点みたいなものかな?」
「弱点では、あるけど」
俺の遊びに、そこそこ神経を使ったからか、綾ちゃんは少し息が切れている。
「もう……で、2人はこれからどこか行こうとしてたの?」
「あ、じいちゃんの畑に行こうとしてたんだった」
綾ちゃんで遊んでて忘れてたけど、もともとじいちゃんに挨拶しに行こうとしてたんだった。
「へー、畑に。それ、私行っていい?」
「俺はいいけど、綾ちゃんはいいの?おばあちゃんに、挨拶とか」
「それもうそうか、じゃあちょっとまってて」
そう言うと、家の方に走って消えていく綾ちゃん。
「ごめんね、待たせちゃって。おばあちゃんに挨拶してきた、おじいちゃんはうちも畑だって」
「それなら、ちょうどいいか」
てか、俺と綾ちゃんのじいちゃん、孫が来るのに畑仕事って、ほんと畑好きだな。
「にしても、優くんに遊ばれたり、走ったから暑くなってきちゃった」
「それ、ほんとにただの体温上昇?」
「ただの体温上昇!」
そろそろ、殴られそうだし綾ちゃんをいじるのはやめておこう。
「暑い……」
「優來ちゃん、どうかしたのって……ちょ、ちょっと」
優來と話すために、しゃがんで目線を合わせに行った綾ちゃんに、唐突に抱きつく優來。
「あったかい……」
「あったかいの?それなら良かったけど」
抱きついた優來は、綾ちゃんの胸のとこで、軽く頬ずりしていて幸せそうな顔をしている。
「あったかいなら、このまま行こうか?」
「そうする……」
「そう?それじゃあ、よいしょ。おお軽い」
抱きついたままの優來を、抱っこする形で軽々しく持ち上げる綾ちゃん。実際、優來は軽かったのか、軽、という心の言葉が口から出ている。
「それじゃあ、行こうか」
「綾ちゃん、きつかったら言ってね、俺変わるから」
「お兄来て」
綾ちゃんに前向きに抱っこされている、優來に手招きされて近づくと、上着の中に手を突っ込まれ、俺の固い胸板の上にある服に手を当てられた。
「あったかくない」
「でも、冷たくはないだろ」
「でも、こっちの方があったかい」
やっぱり体の一部に、脂肪の塊があると、そこに熱がこもってあったかいのだろうか。
「ま、まあ大丈夫だよ。優來ちゃん、心配になるくらい軽いし」
「お兄から、重く、見える?」
「そういうわけじゃないけど」
綾ちゃんは、俺より身長は高いけど、一応力は俺より力はないから(呪い発動時除く)、心配しただけであって。決して、女子に40Kgとかデブじゃん、とかいう高望み系の考えで話しているわけではない。
そもそも、俺は約3ヵ月前に、優來の体を見てるからどれくらいかるそうかは、おおまか把握している。
「とりあえず、早く行こうか」
「そうだね、ずっと止まってても体冷えるし」




