93 愛の告白少女とガチ告白
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「ここ、曲がったよな」
後ろをつけて確信したけど、今俺の前を歩く女の子は、ちゃんと青空さんだ。
あとは、なんでこんな時間に人気のない方にどんどん進んでるのかを調べるだけ。
「あ、やっと来た。もう、帰ったのかと……」
人の声が聞こえたため、一旦青空さんの尾行を中止、急いで物陰に隠れる。
「いや〜、ごめんね〜。行かなきゃ行けないのは、知ってたんだけど〜、寒いと思ったら動きにくくてね〜」
「もう少し、暖かいとこの方が良かったか……」
どうやら青空さんは、俺が青空さんの後ろを着いていって、たどり着いたこの場所で、誰か男の子と待ち合わせをしていたらしい。
「それで〜、なんで僕を呼んだんだい?喧嘩なら、僕は帰るよ」
「そ、そんな喧嘩だなんて」
青空さんのマイペース会話方法に、少し戸惑った声を出す男の子。
「あれ、違うのかい?だって〜、こんな達筆な字で呼び出しだったから、果たし状かと」
「それは、昔から習字習ってて……」
この2人の会話内容的に、知り合いではあるみたいだけど、仲はそこまでっぽいな。
にしても、ほんとになんでこんな人気のないとこに来たんだろう。何かいかがわしいことでもするのか。
「それはすごいね〜。で、喧嘩じゃないなら〜僕を呼んだのは、なんなんだい?」
「そ、それはですねー」
そういえば、さっきから青空さんと話してる男の子の声からは、どことなく緊張しているように聞こえる。
「早くしてくれよ〜、僕寒くて死んじゃうぞ〜」
「話すので!そ、その急かさないでください。今日、僕が青空さんをここに呼んだのは」
青空さんに急かされた男の子は、俺にも聞こえるくらいの深呼吸をしてから、あらためて青空さんに話始めた。
「僕、青空さんが好きだからで、なので!僕と付き合ってください!」
けだるそうな青空さんに対して、男の子はできる限りの声を全て振り絞って青空さんへ、想いを伝えた。
というか、男の子ここでするの告白でしたか。こんな重要なことなのに、いかがわしいことするとか思ったり、勝手に盗み聞きしててごめんなさい!
「え〜?僕と君がかい?」
「はい、僕なんかじゃ青空さんには、釣り合わないし、そもそもお前誰って感じだろうけど」
「いや、そういうことじゃなくて、僕が言いたいのは、こんな僕を選ぶのってことで」
告白されている青空さんは、少し困惑気味な声で喋っている。
「それに〜、僕たち接点そんなにないし〜」
「そうだよね、そりゃそう思うよね。でも、僕は青空さんと出会ったあの日から、どんどん青空さんのことが気になっていってて」
なんか、男の子の言い方が壮大だけど、この2人は運命的な出会いでもしたのだろうか。
「あ〜あの日か〜」
「え、覚えてるの?」
「まあね〜、僕は記憶力いいから〜。て言っても、君の名前は知らないけどね〜」
青空さんは名前知らないのに、相手方の男の子は知ってるんだ。
「覚えててもらえるのは、嬉しいなー。じゃなくて、告白の返答を聞きたいんですけど」
話が脱線しすぎて、もう告白の緊迫した雰囲気が消えつつあるな。
「そうだったね〜、それじゃあ返そうか」
「お願いします」
崩れた雰囲気を、少しだけ直してから青空さんは話し始めた。
「えっと、ごめんなさい」
「やっぱ、そうだよね。ごめん。参考までに、理由聞いてもいいかな」
「理由かい?僕、好きな人いるんだよね〜」
「え?」
今、青空さん好きな人いるって言った?俺の盗み聞きがバレてるはずないし、そうなるとこれは青空さんの本音ってことになる……よな。
だとすれば、青空さんの好きな人って……いやでも、別の人の可能性も否定はできない。自意識過剰は、死と思え俺。
「そうか、なら良かった。まだ、彼氏はいなんだね」
「まあ、そうなるけど」
「じゃあまだ俺にも、役はあるってことか……ありがと、告白聞いてくれて、じゃあね」
なにか、やる気を取り戻した様子の男の子は、自身の頬を俺に聞こえるくらい強い力で叩いて、消えていったみたいだ。
「う、うんじゃあね」
ダメだ青空さんの言葉の真意が気になって、話の内容は頭にはいるけど、言葉が入った瞬間記憶から抹消されていく。
「う〜ん、なんか変わってたというか、なんというか〜」
と、とりあえずここから離れよう、青空さんがこっちに来る前に。
「あ、ゆうくん」
「げっ」
まずった、その場で考え込んでたら、告白が終わって青空さんに見つかった。
「いや〜、ほんとにいるとは〜」
俺を見つけた青空さんは、なにかに納得したかのように、うんうんと頷いている。
「へ?」
「いやね〜、こっちに来るとき〜視線があるの気づいたんだけど〜、それでチラッと見たらゆうくんみたいな人がいたから〜」
「あ、へー」
えっと、つまりはさっきのは嘘か。いや、ほんとに最近の青空さんは、心臓に悪すぎるなほんとに。
にしても、誠実な告白に対して嘘使うって、それはどうなんだろう。
「でも、ゆうくん人の告白を盗み聞きは、僕も感心しないな〜」
クッ!ごもっとも。
「それはごめん。でも、青空さんがこんな時間まで学校残ってるの珍しかったから、それに1人でここんな人気のないとこに来た理由気になったし」
「あ、もしかして〜僕に妬いてくれたのかい?」
「違うよ、ほんとに気になっただけ」
そう、俺は好奇心で青空さんの後ろを着いて行ったら、たまたま告白現場に遭遇しただけだ。けっして、悪感情で聞いていた訳では無い。
「にしても、青空さんモテるんだね。ほぼ一目惚れみたいな、理由だったし」
「まあ、青空ちゃんは可愛いからね。ゆうくんも、惚れていいんだよ。あ、もう惚れてるか〜」
さっき告白されて、それを振ったとはよもや思えないくらい、平常運転な青空さん。
「可愛いのは否定しないけど、俺が惚れてるかどうかと言われると」
「やっぱ、ゆうくんはつれないな〜」
俺が惚れる惚れないの話からズレるけど、一目惚れなんて相当顔が良くないとされないし、青空さんの顔は俺以外の目から見ても、すごくいいみたいだ。
「て言っても、さっきの子は僕が、文化祭時、間違って抱きついちゃった子だけどね〜」
「なにやってんの……」
「いや〜、やる気はなかったんだよ〜、でもお化けの時出すぎちゃってね〜。青空ちゃんは、罪な女だよ〜」
それを自分で言うのは、どうかと思うけど。
でも実際、可愛い人に唐突に抱きつかれたら、心拍数はすごい上がるだろうな。
「青空さんは、とりあえず男子との距離感学ぼうか、このままやってるといつか、危ないことになりそうだし」
「だから、不慮の事故だって言ってるだろ〜、僕が本心で抱きつくのは、ゆうくんだけー」
俺の名前をゆっくり言いながら、俺の二の腕をグリグリ指で押す青空さん。
「とは言っても、ゆうくんも残念だね〜」
「なにが?」
「僕の初めての告白を、別の子に取られちゃうなんてって話。て言っても、僕の初めてはとうの昔に取られてるんだけどね〜」
「もうちょい、ましな言い方できないの?」
それに、その人への初めての告白を取った、取られたはあまり関係ない気がする。結果、その人と付き合えれば、沢山の初めてを経験できるかもなわけだし。
「とりあえず、青空ちゃんはモテるから、今のうちに自分のものにしておかないと、誰かに盗られちゃうぞ〜」
「はいはい、結婚結婚」
「もう、僕は真面目に言ってるんだぞ〜」
いつも通り青空さんの話を聞き流しつつ、暖かい校舎内へ入っていく。
真面目と言うなら、もうちょ真面目っぽく言って欲しい。
♦
「はい、青空さん」
「おお、ありがとう。これは?」
校舎に入ってすぐ自販機で購入した、おしるこを青空さんに投げると、驚いた顔でキャッチした。
「青空さんさっきから、寒い寒い言ってたから。あとさっきのお詫び、告白盗み聞きしちゃったから」
「ゆうく〜ん、お詫びは僕じゃなくて、さっきの子にしてあげなさいよ」
「それは……心で謝っておくよ」
それに、唐突に知らない奴からなにか貰っても怖いだらろうし、ここは青空さんを変わりにして謝っておこう。
「お詫びもできたし、帰ろうか」
先生の手伝いしたり、青空さんへの告白みたりしてたら本当はお昼ぐらいには家に着くと思ってたのに、既にお昼の時間を越している。
「そうだね〜。僕も寒いのは嫌だし。抱きついていいかい?」
「今日はいいよ」
「ゆうくんが珍しい……もしかして〜、ほんとに僕が誰かに盗られるかもと思ったのかな〜?」
俺が青空さんに、抱きつきOKを出すと、ウキウキな声で俺の二の腕に抱きついた。
「違うよ、これも罪滅ぼしのうちのひとつ」
盗み聞きの件があるから、今日の青空さんにはあまり強く物事を言えない。
「ゆうくんは、ツンデレなんだから〜」
そう言いながら、青空さんの頬を俺の腕にすりすりと擦り付け、俺の腕を堪能している。
「明日から冬休みだけど、青空さんはどこか行くの?」
家へ帰る道中、未だ抱きついている青空さんに、冬休みの予定を聞く。
「僕かい?僕はね〜、おばあちゃん家に行くよ〜。で、寝正月のつもり」
「青空さんらしいな」
て言っても、俺も正直寝正月で過ごす未来しか見えないけど。
「初詣も行かないの?」
「行かないね〜、寒いしこたつから出たくないしね〜」
「それは、わかる」
冬場のこたつから出られないは、分かりみが深すぎる。俺は毎年、こたつの魔力に引き込まれて、沼っている。
「いや〜ごめんね、僕の大和撫子な浴衣姿をゆうくんに見せられなくて〜」
「青空さんは、大和撫子ではないでしょ。それに、浴衣はもう間に合ってるし」
俺が大和撫子では無い、と否定すると横で猛抗議が始められた。まあ、当然無視だけど。
「聞き捨てならないこと聞こえたけど、それは置いといて、間に合ってるとはどうことだい?」
「もう既に、3人ぐらいの浴衣見れるの決まってるから。青空さんは、こたつでぬくぬくしててって話」
浴衣に関して言えば、既に3人(+1人可能性有)見れることが確約されてるし、浴衣はおなかいっぱいだ。
「ゆうくんの浮気者〜。僕というのがいながら、別の子の浴衣に目移りするなんて〜」
唇をとがらせて、ブーと言うような手をする青空さん。
「いや、別に目移りしてた訳じゃ」
そりゃ青空さんの浴衣姿を見れるなら、嬉しいけど。ても、青空さん外に出るつもりないみたいだし、仕方がない。
「しょうがないな〜、ゆうくんが他の子に目移りしないよう、僕が浴衣を着てあげよ〜う」
「別に無理して、着なくていいよ。わざわざ、浴衣用意するのも大変だろうし」
それに青空さん、浴衣みたいなキツめの服とか苦手そうだし。
「いいんだよ〜、ゆうくんが見たいって言うんだから」
「俺は言ってないんだけど……」
「まあま〜、僕の浴衣姿なんて、成人式以外では見れないんだぞ〜」
「成人式では見れるんだ」
て言っても、成人式は基本中学で集まるから、青空さんのナマ浴衣を見れるかと言われると、結構微妙だけど。
「だから〜、ゆうくんは期待して待っといてね〜。いい感想期待してるから」
「できるだけいいのが言えるよう頑張るよ」
「さ、寒いから早く帰ろうか。僕たちの愛の巣へさ」
「どこ?」
「さ〜、どこだろうね〜。僕にもわかんないや〜」
愛の巣へ帰ると言った青空さんは、わざわざ俺の腕から一旦放れ俺の前へ行くと、振り返って無邪気な笑顔で答える。
そして、飛行機のように両手を広げて、思いっきり俺の前を走り始めた。
そして、俺の浴衣写真はこの瞬間を持って4人(+1人可能性有)ということになった。




