88 視点Bハーレム男と夜這いガール
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「行ってらっしゃい」
「行ってくる……」
1人で玄関に立っ優來に、手を振って見送る。
今日は唐突な母さんの命令で、優來1人でお使いに行くこととなった。
そりゃあ、俺は優來が心配なので、着いていくわけなのだけど。
「かわいい」
優來が家を出てから少したって、俺も家から出ると、玄関から歩いてすぐそこで、優來が猫を撫でて戯れている。
猫はかわいいから、撫でたくなるのはわかるけど、めちゃくちゃのんびりしている。俺はいいと思う。
「花……」
その後も優來は、いろいろなものに興味引かれ、それを触ったり調べたり、超絶マイペースで、進んで行った。
「やっと見えてきた」
優來が家を出てから、ようやく目的のスーパーが見えてきた。
「何してるんですか?優くん」
「びっくりした、刈谷さん、なんでいるの!?」
電柱裏から優來を監視していると、後ろから刈谷さんに話しかけられた。
「私は普通に買い物ですよ」
「あ、そうか」
刈谷さんの家の位置的にも、ここのスーパーに来てもおかしくはないのか。
「それで優くんは、何をしてるんですか?誰かのストーカーですか?」
「ストーカーとは心外な、優來を監視してるだけだよ」
「それを、ストーカーって言うんじゃないですかね」
ふむ、刈谷さんが珍しく困った顔をしているぞ。とは言ってもストーカーとは、心外だ忍さんじゃあるまい。
「ていうか、義妹ちゃんおつかいですか偉いですね」
「そうは言っても、本人のリハビリだけどね」
「そうですか、義妹ちゃんも大変ですね」
大変と言っても、本人の願いを達成するためには、絶対に出来るようにならなきゃいけないし、これを終わらせたとしても、課題はまだ山積みだ。
「あと、刈谷さん。それ、やめてくれない?外だから」
「なんのことですか?」
「わかるでしょ、バックハグをやめてって言ってるの」
一応刈谷さんも、趣旨は理解してくれているから、俺と同じように電柱裏に隠れてくれている。
隠れてくれてるんだけど、何故か俺に後ろから抱きついている。
「いいじゃないですか、いつもの事ですし」
「いつも、外じゃやんないでしょ」
「室内ならいいんですか?」
「そうなるけど。室内でもやめてよ」
室内ならいいか、と問われれば今の外で恥ずかしい思いするよりか、いいけど室内ならいいとは、言ってない。
「でも、こっちの方が義妹ちゃんも見つけにくいでしょうし」
「それでも、抱きつく意味ないでしょ」
「まあまあ」
「ちょっと、ノーマルに力強めないで」
運良く、人通りはいつもに比べて少ないから良かったけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。
前の佐藤さんもそうだったけど、なんで人前でこんなこと堂々とできるんだ。
「というか、義妹ちゃんさっきから固まってますね」
「このまま続けるんだね、多分何買うか忘れちゃったんじゃない?」
俺が刈谷さんと話してるときから、優來は左右に頭を傾げるを繰り返していた。
「どうしよう、行って助けてこようかな」
「やめといた方がいいんじゃないですかね。優くんが居るのわかってると、困った時すぐ頼りかねないですし」
そう言われると、そうだけどでも俺は優來の兄だ。
「でも、優來困ってるし」
「これも、義妹ちゃんのためですから」
そう言って刈谷さんは、俺のお腹に巻き付けている腕の締めつけを強くする。
「わかった、わかった行かないから少し力緩めて」
刈谷さんの締める力が、そこそこ強くて少し苦しい。
「そうですか、なら一緒に見守りましょう」
困ってる優來を放置するのは、心苦しいけど刈谷さんの言う通りではあるから、こうするしかない。
「ところで、義妹ちゃんは今日何を買いに来たんですか?」
「たしか、卵とその他いくつかの野菜だったかな。刈谷さんは?」
刈谷さんも買い物に来たと言ってたし、失礼かもだけど少し気になる。
「私ですか?私もそんな感じですね、お母さんに頼まれて、これ買物リストです」
そう言って刈谷さんが見せてくれたのは、メモの紙1枚。そこには、豆腐や油揚げなどの名前が書かれている。
「メモ紙?」
刈谷さんの渡してくれた、紙が少し引っかかる。この紙になにか異変がある、と言う訳じゃなくて、なにか紙に関することであったような気が……
「あ!そうだ」
「どうかしましたか?」
「カンペだ、カンペ。優來は、カンペ持ってるんだよ」
思い出した、母さんが買うもの忘れた時ようにエコバッグに、カンペを入れてくれてるんだった。
優來がそれを思いだしてくれるかどうかで、俺が安心できるかできないかが決まる。
「かくなる上は、メッセージで……」
「ちょっと待ってください優くん。あれ、見てください」
「え?」
スマホを取り出して、優來に遠回しで紙のことを伝えようと思ったら、刈谷さんに停められて優來の方を指さされた。
刈谷さんの指した、優來の方を見ると、優來が恐らくカンニングペーパーと思われるものを天高くあげている。
「見つけたんじゃないですかね」
「そう……ぽいね」
良かった、紙を見つけてくれて今回は今回で優來1人の力で、やり遂げて欲しかったし。
「義妹ちゃんスーパー入っていきましたね」
「刈谷さんの買い物もあるし、俺達も入ろうか」
「そうですね」
カンニングペーパーを見つけた優來が、スーパーに入ったタイミングで、俺と刈谷さんもこっそりスーパーに入店しに行った。
「楽しかったですね」
「俺は、軽く倒れそうだったよ」
スーパー内で優來の後ろをこっそりつけながら、刈谷さんの買い物をやってたけど、その間刈谷さんは俺の腕に抱き着いて動いていたから、凄い恥ずかしかった。
本人いわく、周囲の人に怪しまれないための行動と言ってたけど、追跡対象は俺たちのこと知ってるし、ああいうバカップルな行動すると目立つから、意味ないと思う。
「なんか、義妹ちゃんおばあ様と話してますけど」
「ほんとだ」
優來とは、退店時間をずらしてスーパーを出たというのに、優來がスーパーを出てすぐのところで、おばあさんと会話している。
「なにか、あったんでしょうか」
「こういうのは、大概道が聞かれてる感じだと思うけど」
優來が知ってる顔であれば、大体は俺もわかる。その、俺の顔フォルダの中に、あのおばあさんはいない。ということは、優來がおばあさんに道を聞かれているので間違いはなさそうだ。
「にしては、お互い少し困ってるみたいですけど」
「そうなの?」
俺の目には真顔の優來と、困ってそうなおばさんにしか見えないけど。
「とか言ってたら、移動し始めましたね」
刈谷さんと話していたら、優來とおばあさんが俺の家とは別の方向へ、歩き始めた。
「それじゃあ、行きましょうか」
「え、刈谷さんも来るの?」
「ダメですか?」
「ダメでは無いけど、刈谷さん買い物で来たんでしょ?」
これが、ただの散歩とかだったら良かったけど、買い物それも、そこまで面倒な感じじゃないものの、は刈谷さんの両親が心配するだろう。
「別に大丈夫ですよ、買ったものに生物ないですから」
「刈谷さんがいいなら行こうか」
買い物袋を持った刈谷さんと、優來の監視を引き続き続行することとなった。
「ねえ、刈谷さん」
「どうかしましたか?」
「手、離してくれない?」
優來の監視を再開して歩いているけど、さっきから俺と刈谷さんは何故か、恋人繋ぎで歩いている。
「いいじゃないですか、こういうのも。同棲してるカップルの、買い物帰りみたいで。もしかして、嫌ですか?」
「嫌かと聞かれると、嫌ではないんだけど、隠れにくいからやめて欲しいんだけど」
さっきから前歩く優來は、ちゃんとおばあさんがついてきているかを確認するために、一定間隔で後ろを振り向いている。
その時、なにか遮蔽物に隠れようとすると、片手がふさがってて動きにくい。
「動きが遅くなるとかの話でしたら、大丈夫ですよ。私優くんの動きなら、誤差数秒で動けるので」
「そういえば、そうかも」
さっきから手を繋いで刈谷さんと隠れているけれど、思いのほかスムーズに隠れられている。
普通に刈谷さん凄いけど、誤差数秒は凄い通り越して怖いな。
「なので、このまま歩いても大丈夫です」
「凄い自信だね」
「まあ、好きな人についてのことなので」
好きという気持ちだけで、そこまでできるのかは半信半疑だけど、この際どうでもいいか。
「なかなかつかないね」
優來の監視を再開してから、そこそこ歩いて今いる所は、なんだか見覚えのある風景だ。
「そろそろじゃないですかね」
「なんで、刈谷さんわかるの」
「感、ですかね」
こういう時、というかだいたい刈谷さんが予想したことは当たるし、本当にもう少しで着くのだろう。
「とか言ってたら、ほら義妹ちゃん達止まりましたよ」
「ほんとだ、もう少し、というかすぐだったね」
刈谷さんの感がどう、とか言ってたらほんとにすぐ着いたな。刈谷さんの感覚ほんとすごいな
「今回は、何事もありませんでしたね」
「それはいいことだから。とりあえず、俺たちは急いでここから離れようか」
「もう、帰るんですか?」
「もう、大丈夫そうだし」
あとは、もう来た道を戻るだけだし、スーパーの時みたいなトラブルは起こらないだろう。
「そうですか、じゃあ私はここに残りますね」
「どゆこと?」
ここに残るって、このまま優來の監視を続けるってことかな。
「だって、私の家そこですから」
「あ」
ここら辺見覚えあると思ったら、刈谷さんの家付近だったのか。いつもここら辺来るの、夜遅いからはっきりとわかんなかった。
「ていうか、刈谷さんの家って今……」
「そうですね今、私の祖母が入っていきましたね」
「だよねー」
つまりは、優來が案内してたのは刈谷さんのおばあちゃんだったし、刈谷さんは俺についてきつつ、帰路にたっていたってことか。
なんか、また刈谷さんに1本取られた気がする。
「それじゃあ、刈谷さんまた来週」
「はい、それでは」
優來に見つかる前に、急いでこの場を離れ、家の方まで帰る。
気づかなかった俺も俺だけど、刈谷さんも先に言ってくれれば良かったのに。
「ただいま……」
「おかえり、優來少し遅かったな」
「………………」
「どうした?優來」
家に帰ってきた優來を出迎えると、飴の袋を片手に持った優來が俺の事を無言で見つめている。
「お兄、ありがと……」
「ん?なんのことだ」
おかしいな、俺の隠れる技術は完璧だったはず、優來にバレてるはずは無い。きっと今のありがとうの言葉は、家で願っててくれて、というものだろう。そうだきっとそのはずだ。




