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隣の○○さんは俺に○○してくる  作者: 黒薔薇サユリ
第1章

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80 夜這いガールと毒盛り少女

1/1

「石橋さん居る?げっ」

「げ、とは失礼だな梶谷くん」


今日も今日とて、石橋さんに呼ばれて調理室に行くと、石橋さんと楽しそうに料理の本を読む、見覚えのある赤毛の少女が居る。


彼女は、2年時俺と同じクラスで中学の調理研究部元部長、俺と石橋さんを合わせた張本人。この学校にいるのは知ってたけど、何気にあってなかったな。


「いやー、久しぶりだねー」

「俺達話したの、2年ときだけだけどね」

「そこは問題じゃないんだよ」


元部長とは、本当に2年とき同じクラスで喋ったくらいで、それ以外の接点はまじめにない。


「ていうか、今日普通に部活?」

「そうだねー。また、来てるのは私達だけなんだけどね。皆そんなに高頻度でこないから」


そう聞くと、調理研究部って結構ラフな部活なんだな。


「そういうこと、私だって毎回は来ないよ。石橋ちゃんは、ほぼ毎回来てるみたいだけどね」

「ま、まあ、暇だからね」


ということは、調理室に1人石橋さんだけ、っていうのが全然有り得るのか。


「そんなことより、梶くんまた試食お願いね」


ゴホン、と咳払いをしたあと、読んでいた本を閉じた石橋さんは、立ち上がって冷蔵庫の方へ歩いていった。


「あれ?今回はまだ出来てないんだ」

「揚げ物だから、下処理だけして梶谷くん待ってたの。揚げたての方がいいでしょ?」

「ちなみに、何を作るの?」


今から作る料理によって、俺が注意するべきところが変化するし。揚げ物と聞いて、単純に気になったのもある。


「ふふん、聞いて驚くことなかれ、フライドポテトです!頑張って、棒状に加工しました」

「フライドポテトか、じゃあ塩か……」

「な、なんのことかなー」


塩という単語を出すと、あからさまに目を逸らして動揺し始める石橋さん。


「と、とりあえずポテト揚げようか」

「油はねには、気をつけてね」


2人には、油に気をつけてもらって、俺は石橋さんの行動に注意しよう。



「失礼します。あら、優くんなんでここにいるんですか?」

「刈谷さんこそ」


2人が油でポテトを揚げるのを待っていると、調理室の扉がノックされて刈谷さんが入ってきた。


「私は、先生に呼ばれてきたんですけど……いませんね」

「先生なら、今日予定あるって帰っちゃったよ」


調理部の顧問の先生そこそこ適当だな、刈谷さんを呼び付けておいて。


「それで、優くんは何をしてるんですか?」


俺がただ座って女子を見てる構図に、疑問を感じた刈谷さんが小走りで近づいてきた。


「俺は、この2人が料理作ってくれるって言うから、それを待ってる感じ」

「梶谷くんも嬉しいでしょ、こんな美人2人に作ってもらえるだなんて」

「い、いや私なんて……」

「いやいや、謙遜しないで」


確かに石橋さんは普通に可愛いとして、元部長は低身長ながらも、しっかりとした愛嬌があって、小さいという部類の中で、しっかり可愛いという属性を獲得している。


「あの、もし良かったらですけど、私も食べていってもいいですか?」

「全然いいよ。少し、量多くなりそうだし」

「刈谷さんそこそこ食べるもんね」

「そ、それは、そんな言わない方がいいんじゃないかな?」


また、言ってしまった。これは、海の時に刈谷さん張本人から、注意されたのに。まったく学ばないな、俺。



「ほれ、完成。あとスムージーどうぞ」


油をよく切ったあとの、ポテトが皿に盛り付けられ俺と刈谷さんの前に出された。


「石橋さん、塩の事なんだけど」

「なに?梶谷くん、塩が少ないってクレーム?塩多いと、早死するよ」

「いや、塩の量の話じゃなくて」


俺が聞きたいのは、この塩になにか入ってないかって話なんだ。決して、見た目でクレームを入れてる訳では無い。


「じゃあ何?塩のメーカー?」


なんで、そこにこだわる必要があるんだ。


「違うよ!俺が聞きたいのは、ここの塩になにか入れてないかって話」

「もう、石橋ちゃんの料理の腕前は、梶谷くんが1番よく知ってるでしょ?しょうがないなぁ、私が味見してあげるよ」

「いや、まだ食べないほうが」


石橋さんは、そこそこ共倒れ狙ってもおかしくないから、まだ食べない方がいいと思うんだけど。


「うん、全然美味しいよ。てか、前の石橋ちゃんでも、誰かが干渉すれば味は普通だったからね」


ちゃんと説明ができてないから、元部長から軽く説教されている。


「えっと、石橋さんというは……」

「石橋さんは、その左の方の」

「料理苦手なんですか?」

「昔ね、今は全然美味しいけど……」

「けど?」


元部長から視線をずらして、疑いの目を石橋さんに向ける。


料理は1級品レベルに上がってるんだけど、毒盛るからプラマイゼロみたいなとこあるんだよな。


「ね〜、梶谷く〜ん。ちゅ〜しよ〜」

「え、なに!?」


刈谷さんに石橋さんの説明していると、突然元部長が俺を押し倒す勢いで、飛びついてきた。


「ちょっと、離れて」

「いいじゃん1回ぐらい。ほらー」


言葉をかけても全く聞く様子のない元部長。


「石橋さん、今回は何入れたの!」

「えっと、媚薬を少々……」


なんだよ、媚薬を少々って塩じゃないんだから。ポテトに塩はかかってるけど。


「へー、媚薬ですか面白いですね」

「なんで、刈谷さんが食いついてんの!?」


媚薬と聞いて、座っていた席から一気に石橋さんの方へ、近づいていく刈谷さん。


「でも、媚薬ってそんな簡単に手に入るんですか?」

「それはね……」

「はぁ、それはそれは」


秘密を守りたいからか、刈谷さんに耳打ちで教える石橋さん。好きなものの話だからか、石橋さんはいきいきしているように見える。


「ちょっと、感心してないでどっちか助けて。まじで、俺のファーストキスが」

「梶谷くんちゅ〜。ギューでもいいから、ちゅ〜しよ」


なんかこの支離滅裂な誘い方、謎に既視感があるな。


「1回だけ、1回でいいから。それだけで、気分が晴れるから。お願いちゅ〜、ちゅ〜」


力を強めて、さらに顔を近づけてくる元部長。


「しつこい……あ!」


思い出した、この元部長の既視感の理由。そしてわかった、こういう人の対応方法。


「ちょっと離れて!」

「痛い。そんな、酷いよ。だから、お詫びにちゅ〜して」


一旦元部長を引き離して、距離を置く。そのまま石橋さんと、刈谷さん側に急いで周る。


「ほら、こっちこっち」

「いいの!?じゃあ、ちゅ〜」


俺を追いかけてきた元部長が、走って俺の方に近寄ってくる。だが、俺もキスをする気はもちろんない。


「ほら、石橋さんが相手してくれるって」

「わ、私!?」

「ほんと?石橋ちゃん、ちゅ〜」


石橋さんを俺の前に出して、ターゲットを俺から石橋さんへ移す。


この機転の利いた行動は、上手くいったようで、元部長は、石橋さんにちゅーちゅーいい始めた。


「ふ、成功」

「そんなこと言ってないで、助けて」

「優くん、よくこんなの思いつきましたね」

「まあ、既視感しかなかったから。俺の父さんが酔った時の行動と」


俺の父さんは、酔うとキス魔に変身して、今の元部長と同じようなことになる。


俺や優來にキスしに来た時は、母さんが全て受け止めてくれて、それで父さんは満足してるから、今回もそれでいけると思った。


本当に父さんが、酒に対してもだらしなくて助かった。ありがとう。


「石橋ちゃん、いいでしょ?ね、ね?」

「それだけは……」


というか、石橋さんは媚薬って言ってたけど、それを食らってる元部長の反応が媚薬っぽくないな。


「キス魔になるということは、優くんももしかして」

「それは、わかんないよ。俺は、父さんを反面教師にしてるから」


正直父さんを見てて、だらしなくてもこうはなりたくないと思っている。


だから、あまり俺に対して期待の眼差しみたいなのを向けないで、刈谷さん。


「そんなのどうでもいいから、助けて。私、そんな力ないの」


そう言う石橋さんの腕は、限界近いのかピクピク震えている。


「少し効果気になりますね。私も食べていいですか?」

「刈谷さんは絶対にやめて」


刈谷さんがこのポテトを食べて、元部長みたいになると絶対に抑えられる自信が無い。刈谷さん、俺より力全然強いし。


「もう!ほら、刈谷さんだよ」


瀕死の石橋さんが、最後の力を振り絞って元部長を突き放すと、今度は刈谷さんを対象に変更した。


「あ〜、すっごい美人」


うっとりした声で、刈谷さんに近づいていく元部長。


「少し面倒ですね。優くんなにか、縄みたいなのないですか?」

「な、縄?ちょっと待って」


周囲を見渡して、刈谷さんが注文した縄のようなものを探す。


「あったこれは?」


周囲を見渡して見つけたのは、縄では無いけれど白い梱包に使う紐。


「たぶん、大丈夫です。とりあえずそれを机に置いてもらって、お願いしますね優くん」

「なんで!?」


余裕な顔で元部長から距離をとって、俺にターゲットを移す刈谷さん。というか、なんださっきから爆弾ゲームみたいな。


「やっぱ、梶谷くんがちゅ〜してくれるんだね」

「違う違う、刈谷さん早く」

「少し待ってくださいね。優くん、手離してください」

「ほんとに?信じるよ」


刈谷さんに言われて、元部長を掴む手の力を緩めて、キスの受け入れ態勢に入る。


「はい、梶谷くんちゅ〜」

「はいじっとして、くださいね」


俺にキスしに来た元部長を、さっき見つけた紐で華麗に縛る刈谷さん。


「「おー」」


あまりにも綺麗な紐さばきに、俺と石橋さんが拍手とともに感嘆の声を上げた。


「離して!」

「刈谷さん器用だね」

「優くんに言われると、照れますね」


言う割に照れを全く感じない声だけど。


「で、この石橋さんの産んだ、性欲モンスターどうすんの?」


この場合、性欲モンスターというより、キス魔の方が正解か。


「ま、まあ時間経てば戻ると思うし……」

「とりあえず石橋さんは、ポテト揚げ直そうか」

「はい……」


さすがに、このポテトを食べて、強制トランスする訳には行かないし、ポテトなら揚げ直せるから食品ロスの観点からも、そっちの方がいいだろう。


「私も手伝いますよ」

「ありがとう刈谷さん……」


俺の言い方が少しキツめだったからか、石橋さんは少しシュンとした声をしている。


まあ、この話にキツい言い方もクソもないけどね!


「作ってない俺が言うのは、少し悪いかもだけど塩は、ちゃんと塩()()を振ってよ」

「はい……」「はい」


元気な返事と、落ち込んだ返事をして2人はポテトの揚げ直しに取り掛かり始めた。


途中、少し不穏な会話をしていた気がするけど、それは気にしなかったことにしよう。



「んん……あ、ごめんねて……なにこれ」


キス魔状態から解き放たれた、元部長がようやく目が覚めたらしい。


少し前までは、解けと喚いていたけれど、途中で疲れて寝てからはずっと静かに縛られていた。


「梶谷くん、私になんかした?」

「何もしてないよ!だって、彼氏いるんでしょ」


そう、この元部長には愛する男がいるのだ。まあ、男がいるから襲わないってことじゃないかもだけど。


「まさか、梶谷くんが知っていたとは」

「たまたまね」


3年のとき同じクラスだったやつが、たまたま元部長の彼氏でそういう話を聞いた。


その時驚いたのが、意外と元部長がモテるということだった。


「ちゃんと仲良くしてる?」

「はは、梶谷くん知ってる?カップルって、高校別になると別れやすいんだよ」

「ごめんなさい!」


元部長にとってこの話は、そんなに良くない話だったみたいだ。


「ほんと、何が疎遠になったからだよ……もういっその事、梶谷くん付き合っちゃう?」

「「は!?」」


突然元部長が投げた爆弾発言に、俺と石橋さんが反応した。刈谷さんは、平然とポテトを食べている。


「だって、どうせ梶谷くんもフリーでしょ?」

「どうせは、余計だけどフリーだよ」


実際の状況考えると、フリーとは言いにくいけど。


「で、でもさ梶くん今好きな人いるかもだし」

「その席を私が乗っ取ればいいんでしょ?」


唐突に言われたけど、これは元部長の本心なのか嘘なのか。


「でも、梶くんにも選択権はあるわけで」

「石橋ちゃん酷くない!?まあ、冗談だけど」

「なんだ、冗談か」

「まあね私、梶谷くん好みじゃないし」


冗談と言われてほっとする石橋さん。にしても、元部長、面と向かって好みじゃないって、酷くないか?


「そういうことだから。にしても、奥さんすごい焦りようでしたね?」


紐に縛られたままの部長が、石橋さんをニヤけた顔で見ている。


「お、奥さん?」

「さっきの焦り方、もしかして梶谷くんのこと好きなんじゃないですかね?刈谷ちゃん」

「私は、優くんのこと好きですよ」

「「え?」」


唐突な刈谷さんのカミングアウトに、驚く2人。やっぱ、刈谷さんはこういうの平然の言えるんだな。


「梶谷くんもすごいね、こんな綺麗な2人から愛されるだなんて」


ここでほかに数人いると言ったら、どういう反応するんだろう。


「い、いやだから私が梶くんを好きとはまだ……」

「石橋さんは、違うんですか?」

「好きか嫌いかで言うと、好きだけど……」


半公開告白みたいになってるからか、石橋さんの頬はすごく赤くなっている。


てか、なんで俺もこんな恋バナみたいなの聞かせられてるんだ。こっちが恥ずかしくなりそうで、仕方がない。


「もう!そんなのいいからポテト食べよ」

「わあー、石橋ちゃんが怒った」


そう言って無邪気に笑う元部長だった。


ちなみにポテトは普通に美味しくて、ちゃんとした塩と塩加減でいい塩梅の味だった。

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