78 殺人願望少女宅のお宅訪問
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「おお、寒」
朝の登校時間、冷たい風が俺のとこを通ると、一気に鳥肌が立った。
「寒いならブレザー来なさいよ」
「今ないんだよ」
夏前に黒嶺さんに貸してから、タイミングを逃しまくったせいで、今の俺には上着となるブレザーが無い。
「寒いなら僕が温めてあげるよ〜。ほら」
目の前に来た青空さんが、勢いよく俺に抱きついてきた。
青空さんの体温は暖かいのか、少しではあるけど体が暖かくなってきた。
「暖かいけど、手先がどうもね」
「じゃあこれで満足かい?」
そういった青空さんは、俺の手を取って青空さんのほっぺに当てた。
今日に限っては、青空さんのからかいがありがたい。
「てか、すっげーもちもちしてる」
「ひょうだろ〜、ぼふのほっへは、むかひからもひもちしてるって、言われてるんだから〜」
青空さんのほっぺは、押したらその分力強く帰ってくる、もちもちほっぺをしていて触り心地が最高だ。
「あんた達何してんのよ」
「何って、僕たちはただいつも通りのことをしてるだけだよ〜」
俺に抱きついたままの状態で、ひょっこり俺の体から顔を出して、青空さんは由乃に答えた。
いつも通りと言えば、いつも通りで間違いはないんだろうけど、どうも腑に落ちない。
「でも、ほんとに青空さんのほっぺ暖かい」
「まあね〜、由乃ちゃんみたいに僕は冷たくないから〜」
「なにが冷たいよ!わ、私だって……」
青空さんに煽られて、由乃が俺の片手を青空さんのほっぺから奪って、由乃のほっぺにに当てる。
由乃のほっぺで気になったのは、青空さんみたいな弾力と言うよりその温度だ。
由乃のほっぺは、暖かいと言うより、風邪をひいた時みたいな熱いというかんじで、青空さんのほっぺに比べて温まる速度が早い。
というか、美人2人のほっぺをぷにぷにして遊ぶって、今そこそこ謎な状況だな。
「というか、2人とも」
「ひゃによ」
「俺達、こんなことしてる場合じゃないと思うんだけど」
俺達は今、多々あって遅刻ギリギリな時間で登校している。こんな道端に立ち止まって、遊んでる場合ではなかった。
「まっへ、今の時間は?」
「あと8分で、チャイムがなるくらい」
「先に言いなさいよ!バカ」
「お前もノリノリだったろ」
時間もみずに、遊んでいたというのであれば、ここにいる全員同罪ではあるけど。
「ほら、走るわよ」
「え〜、僕はゆうくんともっとくっついてたいな〜」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
遅刻とかどうでもいい、みたいなことを言う青空さんを無理やり動かして、急いで学校の方へ走る。
「黒嶺さん、ブレザー返してもらっていい?」
塾の休憩時間、次の授業の小テストの復習をする黒嶺さんに、ブレザーの話を持ち出す。
「ブレザー?ああ、あれですかクリーニングに出してから、返すの忘れてましたね」
あのブレザーちゃんとクリーニングかけてくれたんだ、なんだか悪いな。
「それなら、明日私が梶谷さんの学校に行くので、校門前に待ち合わせで」
「え、いやそれは悪いし」
正直、誰かしら仲良い女子と歩いてるとこ見られたら面倒だし。
「なにか問題でも?」
何かを悟った黒嶺さんは、すぐにセーラー服の内側に手を入れた。そして、手を入れた隙間から入った光で、なにかが反射してキラリと光った。
「違う違う、さすがに黒嶺さんに学校までブレザー持ってきて貰うの悪いなって思っただけ」
ブレザーは、持ち運ぶにしても黒嶺さんのスクールカバンじゃ、難しいだろうし。我ながら、良い言い訳だと思う。
「何言ってるんですか?私、ブレザーを運ぶなんて、一言も言ってないじゃないですか。あんなもの」
「え?」
ちゃっかり人の服を、あんなもの、とか言うげてもの扱いしたな。
「私の家に取りに行くんですよ。一緒に、明日」
俺に何かしらのさっきを与えるためか、顔をぐっと近づけて来る黒嶺さん。
「あ、はいそういうこと」
ということで、半強制的に黒嶺さんの家へ赴く用事が出来た。
♦
正門前を通りがかる人が、校門右を数秒見てから通り過ぎていく。
黒嶺さんがそこにいると、毎回そうなるよな。まあ、それだけ美人ってことなんだけど。
「君、俺に会いきてくれたんだね。やっぱ、文化祭の時の俺の顔が忘れられなかったのかわかるよ」
「梶谷さん、遅かったですね」
めんどそうなナンパを仕掛けられているけれど、なにか別の方向を向いて無視していた黒嶺さんが、俺の存在に気づいた。
「また絡まれてたの?」
「なんのことでしょうか」
無視していた、と言うより黒嶺さんにとっては、どうでも良すぎて見えてなかったみたいだ。
「それでは、取りいきましょうか」
ナンパ男をフル無視して、俺は黒嶺さんの後ろを追従することになった。
さっきのナンパ男は、後ろでなにか言ってる気がするけど、黒嶺さんと同じ心を持って無視しよう。
「到着しましたよ」
黒嶺さんについて行って、電車で移動後、少し歩いたとこで黒嶺さんの家に着いた。
黒嶺さんの家は、そこまでの大きさは無いけれど、新しめの家で、駐車場にCMで見たことある良さげな車が置いてある。
「どうぞ、上がってください。なるべく、静かに」
「どういうこと?まあとりあえず、おじゃまします」
静かにって言われたけど、誰か寝てるのかな。
「黒嶺ちゃんおかえりー!あらあら、まあまあ!」
「!?」
黒嶺さんの家に上がると、すぐに玄関へ黒嶺さんに似た女性が出てきた。
その割に黒嶺さんとは、対照的にものすごい元気というか、あつかましそうな感じがする。
「お父さん!ちょっと来て!」
「呼んだか?あー!」
黒嶺さんのお母さん、と思われる人が来たかと思えば、連鎖的に黒嶺さんのお父さんも出てきた。
「君!名前は?」
「梶谷優です……」
唐突に出てきたかと思えば、手を取られて名前を聞かれた。
唐突なことに少し戸惑いつつも、名前を言うと、お父さんの顔がさらに明るさを増していった。
「そうか、梶谷くんか。君は黒嶺のなんなんだい?」
「お父さん黙ってください。それに、お母さん私言いましたよね、今日は絶対に出迎えないでくださいと」
「あら、ごめんねつい癖で」
珍しく黒嶺さんが、取り乱している。
てか、黒嶺さん親にも敬語なんだな。
「とりあえず、梶谷さんその2人無視して、上がってください。部屋に置いてあるので」
「う、うん」
「梶谷くん、少し待ってて用事が終わってもまだ、残っといてくれよ」
前に夏休みの時、黒嶺さんの両親は黒嶺さんとは対照的に明るそうだな、とは思ったけど予想を大幅に超えてきたな。
「はぁ、ほんとに面倒ですね」
ため息を着いて、呆れたような声を出す黒嶺さん。
そんなに嫌なのに、なんで家に呼んだんだ。
「どうぞ、これブレザーです」
「いやー、ありがとねクリーニングまでしてもらっちゃって」
「いいんですよ別に」
ちょっと疲れた声をしている黒嶺さんから、ブレザーを受け取った。
「それで、残るんですよね」
「いいの?」
「はい、あとから何か言われて面倒なのは、私なので」
黒嶺さん、相当両親のこと苦手なんだな。肉親なのに。
「まあ待つ間暇でしょうし、勉強でもしますか」
「ちょうど、学校の方の課題もあるし、黒嶺さんがいいならやりたいけど」
やっぱ、黒嶺さんは1に出て来るのが、談笑とかじゃなくて、勉強なのか。




