69 ヤンキー少女に話すと
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「すみません!遅くなりました!」
刈谷さんのお父さんとは、何とか話をつけ初愛佳さんと優來の元へ来た。
「優、遅かったな。優來は、何となく落ち着いてきたみたいだけど」
そう言われ、優來の顔を見ると元の顔色とは言わないけれど、多少なりともいい顔色に戻ってきている。
「よかった」
「で、そっちは良かったのかよ。なんか、凄い顔のおっちゃんに絡まれてたけど」
「まあ、何とか」
刈谷さんのお父さんへの言い訳として、初愛佳さんに無理やり、的なものを使ってしまったのは、今すぐ土下座で謝りたいとこではあるけど。
「てか、そんなことより説明してくれよ」
さっきまでの、少し浮かれたような声から一変して、真面目な顔で聞いてくる。
「説明ですか…」
あのことを、初愛佳さんに話すのか…でも、現場見られたら言うしかないよな。
「わかました、俺の知ってる範囲でですけど、話しましょう。とりあえず、優來の耳は塞いで」
話をして、さっきみたいになっても困るし、とりあえず優來の耳塞いで初愛佳さんに話し始めた。
「そうか、そんなことが…」
俺は初愛佳さんに、俺の知ることをだいたい話した。その間優來には、両手で耳を塞いでもらって、待ってもらった。
「そうなんですよ、だからさっきのは同じ中学の制服を見て、それの拒絶反応ってわけです」
「そうか、それなら俺に主犯格教えろよ、1回シメて来っからよ」
「ストップストップ!」
やっぱそういうよな、だから初愛佳さんに言うの迷ってたんだよ。
「これは、俺たちの問題ですから、初愛佳さんは心配だけしてくれればいいので」
「なんで、そんな邪険に扱うんだよ。もしかしたら俺達…」
確かに言い方がキツかったかもだけど、なんで初愛佳は顔を赤くしてるんだ。
「とりあえず、初愛佳さんは顔赤らめてないで、ふーんそうなんだ、くらいでいいので」
「そ、そんなに赤くしてねぇよ!ま、まあわかったそうする…でも、その分心配は精一杯してやるよ」
良かった、何とか中学生殴って、停学または退学、みたいな事態には発展しなそうで。
「でもよぉ、なんで優が決めるんだよ。こういうのは、優來本人が決めることだろ」
「まあ、たしかに…」
基本的に俺が前に立って、優來のことを勝手に決めてたけど、こういうのは本人が自分で考えてやるべきだ。
とは言っても、俺が勝手にやってると言うよりかは、優來が俺に回答を求めることが多いから、癖的な感じで決めてる節あるかもだけど。
「で、お前はどうしたいんだ、優來」
「願望でもいいから、気軽に答えてみてよ」
俺と初愛佳さんで、優來を見つめ答えを求める。急なことだったからか、優來は回答に少し困っている。
「私、したいこと…」
「ほんと、なんでもいいから」
「特にない…」
「そうかぁ、特にないかぁ」
特にないと言った優來に、聞いた張本人の初愛佳さんが笑って返答する。
「いいんですか?明らか、俺達が求めてたような感じじゃないですけど」
「まあ、いいんだよ。別にただ聞きたかっただけだし、これから見つければいいだけだしよ」
なぜだか、初愛佳さんが優來をめちゃくちゃ甘やかしてるように見える。
「とりあえず、落ち着いたらまた行くか。どこか行きたいとこあるか?」
再度パンフレットを開いて、優來に見せる初愛佳さん。
「ここ、行ってみたい…」
「いいのか?優來。ここって…」
優來が指さしたのは、俺のクラスではない別の1年クラスのお化け屋敷。
「気になる」
ここのお化け屋敷は、名前だけ見れば全く怖くなさそうに見える。けれども、昨日俺入ってほんの少し後悔したくらいには、怖かった。
「まあ気になるなら、いいけど…初愛佳さんは、大丈夫ですか?」
「お、おうドンと…来い」
「ほんとに大丈夫ですか?」
明らか初愛佳さんの反応が、霊的なもの得意じゃない人の典型なんだけど。
「べ、別に文化祭レベルのお化け屋敷なんて、怖くないに決まってるだろ」
多分これフラグだな。
「文化祭のいいところ否定しないでくださいよ…」
「と、とりあえず行くぞ別にお化けが怖いなんて訳じゃ…………ないし」
謎の間があったけど、初愛佳さんが大丈夫なら大丈夫なんだろうきっと。
「ここ……ですね」
優來のトラウマに気をつけつつ、優來の行きたいと言ったお化け屋敷の前までやってきた。
「優はここ来たことあんのか?」
「はい、一応昨日1回だけ」
一応昨日来て怖いには怖かったけど、黒嶺さんがいた関係で怖さが半減していた。
あの人、異様に勘がいいのか、お化けが驚かせに来る前にその方向向くんだよな。
「優來ほんとに大丈夫か?ここ、そこそこ怖いけど」
「そ、そこそこ!?」
「もともと、ホラー苦手、じゃない…」
まあ、それはそうなんだよな。単純に刈谷さんのせいで、幽霊系統が怖くなってるだけではあるし。どうせ、時間の問題だろう。
「なんなら、ホラー好きな方、だった…」
「そうか、俺は可もなく不可もなくだよ」
俺は別にそこまでホラー体制がない、という訳では無い。夏休みの時の幽霊さんは特例だ。
「初愛佳さんは、大丈夫ですか?」
「ず、ずっと言ってるだろ、大丈夫だって。ほんとに…」
なんとも説得力のない、弱い声だ。
「じゃあ行きましょうか。3人でお願いします」
「分かりました。3人入ります」
受付の人に人数を伝えて、そこそこ怖いお化け屋敷の中へ入った。
ここのお化け屋敷は、俺のクラスのとこに比べて内装が凝っている。それもあって、普通よりも怖く感じるのだろう。
「お、おいお前らは怖くないのかよ」
「俺は昨日来てますし」
「私、なんか無敵」
「なんだよそれ……」
怖いからか、全く声が出てこない初愛佳さん。
ていうか、さっきから優來の気分が前向きっぽいと思ったら、あってたみたいだ。多分、初愛佳さんと会話してていい感じになってくれたんだろう。
「殺してや~る~」
「あ?」
「あ、いえ…」
初愛佳さんを脅かそうとした幽霊役の人が、初愛佳さんの威嚇で話しかける人を間違えたかのように、舞台裏へ下がっていく。
「わ!あぁ……」
今度は初愛佳さんの顔を見るなり、舞台裏へ戻って行ってしまった。みんなこんな反応をするのは、初愛佳さんの噂がそれだけ1年生の間で有名になってるからなんだろう。
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「いやー、そんなに怖くなかったな。幽霊どこにいたって感じ」
晴れやかな顔で、お化け屋敷から退出する初愛佳さん。やはり、みんな初愛佳さんの顔を見るなり、逃げるように仕事を放棄して隠れてしまう。
にしたって、そんなに初愛佳さんの顔ってそんなに怖いか?
「ど、どうしたんだよそんなに俺の顔見て」
「いや、初愛佳さんは顔が整ってるなと」
「んな!?」
ここまでくると噂のせいで、逆美化されてるとしか言いようがないよな。
「なんだよ、急に…そんなこと軽々しく言ってると、食われちまうぞ」
いや、どゆこと!?
「一応、というか本音なんですけど」
「も、もういいから…」
「お兄、口軽い…」
「どういうこと?」
口が軽いって、人の秘密をペラペラ言う人のことだよな。俺はそう見えているのか、何故なんだ。
「あ!優いた!ちょうど探してたのよ」
「母さん」
お化け屋敷から出たタイミグで、デート中か終わりの母さん達に会った。
「いやー、今から帰るとこだったから連絡しようかと思ってたとこだったのよ」
「帰るんだ、楽しかった?」
「いいデートができた」
サムズアップをして、自信満々に答える母さん。
「で、その横の子は?」
「うす、初愛佳っていいます…」
少し照れくさそうに自己紹介する初愛佳さんは、丸まったヤンキーみたいだ。
「綺麗な髪ねー。優も染めてみない?」
初愛佳さんを見つけた母さんは、すぐに初愛佳さんのそばに寄って、許可なしに初愛佳さんの髪を触り始めた。
「染めないよ、めんどくさい」
そもそも、俺がそこまで派手な髪色にしたところで、そこまで注目も集めず潰れるだけだろうし。
「そう、まあとりあえず私達帰るから。優來は、どうする?」
「帰る……」
「じゃあ帰ろうか。今日、何食べたい?」
優來が帰ると言うと、そのまま優來を連れて3人は帰って行った。
「俺らはどうする?」
「もう少し回りましょうか。もうちょいで、2日目も終わりですし」
「そうだな、この時間だと食べ物系は終わってるから……」
毎度おなじみパンフレットを開いて、遊び系の出し物を探し始める初愛佳さん。
何気に短い時間ではあるけど、初愛佳さんとデートになるのか。
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