65 殺人願望少女と文化祭
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「それじゃあ、よろしくね」
今日は文化祭1日目、今はお化け役のシフト時間になったため、前の当番の人達と交代したとこだ。
俺のクラスのお化け屋敷コンセプトは、廃墟。教室の窓をダンボールで覆って、小道具で驚かせたりする感じ。なんだけどこれで怖がる人いるのかな。
ちなみに俺は、自分の体を使って脅かす役になっている。
「殺してやるー」
「キャー!」
お客さんが通りがかるタイミングで、飛び出すと以外にも皆驚いてくれる。そして、思ったよりも楽しい。
「次、入るよー!ちなみにめちゃ美人!」
最後の情報はいらない気がするけど、とりあえず怖がらせろということだろう。
美人の驚きかたは、気になるところだ。まあ、黒嶺さんタイプだったら素通りだろうけど。
そもそも、黒嶺さんタイプはこういうイベント来ないか。こんな、ただの青春イベント。ははは。
「わ!」
1番最初の驚かせポイントで、声が聞こえる。しかし、お客さんは反応がないみたいだ。
その後も今回のお客さんは、何も声を出すことなく俺のポイントへ近づいてくる。
こんな感じのお客さんは、いままで普通に何人かいた。けれど、俺の位置だと驚きの声をあげる。
なんせ俺のいる位置は、普通に考えても出てこないと思うような場所だから。
お客さんの足音がすぐそこまでやってきた。俺が出るタイミングは、俺の前をお客さんが通り過ぎてからすぐに出ることとなっている。
つまりは今だ!
「殺してやる〜!」
「梶谷さん、ここにいましたか。というか、私に殺すとは、いい皮肉ですね」
「おっと、黒嶺さん…」
俺が体を出してすぐ、お客さんとしてきていた黒嶺さんと目が合った。
「というか、ここそんなに怖くないですね。私としては、こうした方が怖いと思いますけど」
服の中から包丁を取りだして、俺の顎下に包丁の先を突きつける。
「それは、また別の恐怖じゃないかな…」
「そうですか。でもこれくらいしないと、来る人は怖がらないと思いますけど」
「それは、黒嶺さんがホラー耐性ありすぎるだけじゃないかな」
それをやった時点で、会議にかけられるし、お客さんのトラウマになりかねないだろ。
「そもそもの話、幽霊なんてただの想像の話なので、いると思って怖がる方がおかしいんですよ」
俺の家にガチ幽霊いたから(証人有)、あんまし幽霊が空想上の生物とは思えないんだよな。
「次のお客さん入れるけど、大丈夫そ?」
その場で黒嶺さんと話していたら、受付の人から催促が飛んできた。
「とりあえず、黒嶺さん。出てもらっていいかな。次来ちゃうから。なにか話があるなら、俺あと40分ぐらいで終わるし」
「そうですか、それくらいなら、待ちましょうか」
「適当に回ってていいからね」
お化け屋敷の出口から、出ていく黒嶺さんを見送って、俺は元の配置に戻った。
「お疲れ、時間だから交代」
「そうか、じゃあ後よろしくな」
黒嶺さんを見送ったあとも、普通に脅かし続け交代の時間が来た。
俺と入れ替わりで来た人に、場所をあけわたして出口の方から外に出る。さすがに暗がりから、光が当たっているとこにでると、めちゃくちゃ眩しい。
「やっとですか」
「え、黒嶺さんずっとそこにいたの?」
出口を出てすぐのところに、私服の黒嶺さんが立っていた。
「とくに見たいものも、ないので」
「お姉さん無視?」
しかも、なんか俺と同じ学校の人に絡まれてる。上履きの色を見る感じ、先輩だ。
「行きましょうか」
「あ、うん…」
黒嶺さんに絡んでいる先輩を完全に無視して、俺の方に来た。
「よかったの?何も言わなくて」
「別に、ただ私に話しかけてきただけの人だったので。あんな何も生産性のない行動、嫌気がさします」
黒嶺さんの言い方的に、ここに来るまでに何回かは話しかけられてるな。
確かに黒嶺さんは美人だ。しかも今日は、いつもみたいな制服ではなく、私服。
制服時も、可愛かったのが、私服によってその可愛さが際立っている。
「黒嶺さん、服似合ってるね」
「そうですか、ありがとうございます」
黒嶺さんが、ファッションを楽しむ趣味があるとは、結構意外だな。
「その服って、自分で買ってるの?」
「いえ、母が勝手に買ってきますね。正直私としては、制服さえあれば、外に出れるので私服なんてものはいらないのですが」
あ、やっぱ黒嶺さんストイックのその先行ったような人だから、そういう系の買い物はしないんだ。
にしても、黒嶺さんのお母さんが選んだ服がこの似合いっぷり、黒嶺さんのお母さんは相当センスがいいとみた。
「そのセットは、自分で考えたの?」
「いえ、これも母ですね。もともと、制服で行こうとしてたのですが、止められまして」
「そりゃそうでしょ…」
なかなか休日の外出で、好き好んで制服着てく人なんていないだろうに。ていうか、制服って動きにくくない?
「それで、元服飾系だったらしい母にこんな姿にされまして」
「こんな姿かな?ていうか、黒嶺さんお母さんの職業知ってるんだ」
ということは、黒嶺さんも昔は親の職業に興味を持ったりする、時期があったということか。
「いえ、いつかの時に自慢げに言っていたので、それをたまたま今思い出しただけです」
「あ、はいそうですか」
ダメだ、話してても思ったけど、黒嶺さんの人生本人が感じるトキメキというのが少なすぎる。
「とりあえず、服の話はこれくらいにしておいて。黒嶺さん、よく来る気になったね」
黒嶺さんの青春断固拒否みたいな性格で、ここの文化祭の情報を仕入れ、来るというのは到底ありえないことだと思うんだけど。
「クラスの方で、たまたま超小耳にはさんだので、梶谷さんがこちらに来たそのお返し程度に」
「お返しって、俺何もしてないけど」
強いて言えば、ミスコンで黒嶺さん本人の代わりにPRをしたぐらいだ。
「あと、早めに芽は潰しておかないといけないですから」
明らか、喜びとかとは違う感情の笑顔を俺の方に向ける黒嶺さん。
今日は、知り合いの女子と誰とも合わないことを願おう。




