64 甘えたがりシスターと夜這いガール
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「母さんおやすみ」
「おやすみー」
何事もなく学校を終えて、至って普通。何事もない生活。テストも少し前に終わったし、特段提出課題もない。寝る前は、好きなことをしてから眠ることができる。
「そろそろ寝るか」
時間的にも、そろそろ寝ないと明日に響きそうな時間だし。
「お兄…」
「優來、どうした?」
ちょうど俺が寝ようとしたタイミングで、優來が目を擦りながら部屋に入ってきた。
「眠いけど、うまく眠れない」
何その特殊な状況。
「だから、一緒寝よ」
「一緒にか…」
まあ、今回は風呂みたいな感じで不健全的ではないし、大丈夫か。
というか、優來と一緒に寝るのは、何年ぶりだろうか。
「いい…」
「ありがと…おやすみ」
許可を完全に出す前に、俺のベッドに寝転がる優來。まじで、本人は眠いみたいだ。ほんとにどんな状態なのか、わかんないけど。
とりあえず、俺も寝よう。優來が枕を持ってこなかったから、2人で1つの枕を共有することになったわけだけど。
電気を消してから、俺も優來の眠る、俺のベッドに入って、目を瞑った。1人用に2人は少し狭い。まあ、前の3人すしずめ状態よりかいいけど。
俺の右側にいる、優來の体温が伝わる。それとは別で、上から呼吸する音と掛け布団越しで、人が移動する感覚がわかる。
「ねえ、刈谷さん。起こさないで貰っていいかな?」
「私は、起こすつもりはないんですよ。ただ、優くんが私が近づいた途端、起きてる話なんですよ」
その言い方だと俺には、ベッドの上限定で、刈谷さんセンサーが備わってることになるんだけど。
「というか、今日はそこまで大きい声出さないんですね」
「まあ、横で人が寝てるからね」
「あ、ほんとですね」
刈谷さんはベッドに上がる時、優來の存在に気づいていなかったみたいだ。そんなことある?
「で、今日はどうやって」
「普通にそこの窓空いてますよ」
「ほんとだ」
秋の夜は、涼しくて気持ちがいいから、窓を開けていたのを忘れてた。
「次は、私が聞きますけど。この子は誰ですか?もしかして、優くんが心を許した夜這い相手とか」
「違うよ。普通に妹。なんか、寝れないみたいで、一緒に寝てるだけ」
「義理ですか?」
「実妹だよ!失礼な!」
義理に間違われるって、俺と優來そんなに似てないかな。
「お兄、うるさい…」
「ごめんごめん」
寝言か、普通に優來の言葉か、少し声を出したら怒られた。
「とりあえず刈谷さん。静かにして」
「私は基本静かにしてますけど」
たしかに俺のツッコミで、大声は出てるかもだけど。
「でも、優くん妹さんがいたんですね。何回も入ったことあるのに、知らなかったです」
その何回も入ったが、友達として招待、だったらどれほど良かったことか。
「隣の部屋にいたんだよ」
「ああ、そういえば、何故か優くんの隣の部屋だけ、窓が毎回閉まってるんですよね」
「あれ、刈谷さんだったのか。やめなよ、優來軽くトラウマになってるんだから」
まさかの優來が今ホラーがダメになった元凶が、ここにいるとは。
というか、基本的に家の窓は閉まってるものなんだけど。まあそこに関しては、俺が悪いのかもしれないのか。
とはいいつつ、刈谷さんの中で、俺の家の窓は空いてるもの、になってるのがなんとも。
「今日はこのまま寝ちゃいましょうか」
「いや、帰ってよ」
話の流れかのように、何食わぬ顔で俺の眠る左側に入る刈谷さん。
「でももう入っちゃいましたし」
「別に出ていけるでしょ」
刈谷さんの腰に手を回して、起こそうとするけど起きる気配が、全くといつまていいほどない。
「別にいいじゃないですか、初めてじゃないんですし」
「そういう問題じゃなくて…あ、ごめん!優來」
刈谷さんを起こそうと奮闘してると、ちょっとした反動で優來にあたり、優來がベッドから転げ落ちかけた。
「もういいじゃないですか、優くん寝ないと明日授業受けれないですよ」
「そう言われると、そうなんだけどさぁ!」
刈谷さんの言う通り、このまま刈谷さんを送り届けると、明日の授業は死にかけるだろう。
「だから、お兄うるさい」
「ちょっと、優來!?」
うるさいと怒った優來は、何故か俺に抱きついて俺の動きを制限した。
「だからうるさい…」
「ほら、義姉ちゃんも言ってることですし」
おい、なんか今のいもうとの言い方、別の何かを感じたぞ。
「でも、刈谷さんと寝てる間に何されるかわかんないし」
「優くんには、私が寝てる横で、変なことする行儀悪い子に見えてるんですか?」
逆に人の家に無断で入り込むのは、行儀がいいことなのだろうか。
「じゃあその言い方するってことは、今日は何もしないってことだよね?」
「………しませんよ。多分」
こういう時、刈谷さんの多分ほど怖いものは無い。なんか、変な間あったし。
「多分じゃなくて誓って欲しいんだけど…」
「愛なら誓えますよ」
「そうじゃなくてさぁ」
刈谷さんの愛は、十二分に伝わってて、もういらないレベルだし。
「じゃあこうすればいいですかね?」
そう言った刈谷さんは、優來のように俺に腕をまきつけ抱きつく形となった。
「これしたって、刈谷さんが何もしない保証にはならないでしょ!それに、足絡めてこないで」
俺に抱きついた刈谷さんは、ちゃっかり俺の左足に刈谷さんの足を絡めてきている。
「ん…」
「ほら、また大きい声出すと、義姉ちゃん起きちゃいますよ」
「一体誰のせいで…」
さっきから再三、優來に怒られてるから、なんとも言えないけど。刈谷さんが、何もしなければ声を出すことはないはずなんだよ。
「とりあえず寝よ。だから足を解いてもらっていい?」
「いいじゃないですか。私が我慢してるんですから」
「なんで、刈谷さんが譲歩したことになってんの」
ある意味俺と刈谷さん、お互い譲歩したような形ではあるけれど。
「まあまあ、寝ましょう」
「はいはい。そうだね、おやすみ」
ため息をついて、目を瞑る。2人から抱きつかれてる関係で、正直結構窮屈だ。
「お兄、起きて…お兄」
「あ、おはよう優來。早起きだな」
優來に起こされ、目を覚ますと時間はいつも起きる時間にしては少し早い時間。
「そこの、誰」
俺のすぐ右側に座る優來は、俺の左側で気持ちよさそうに寝ている刈谷さんを指している。
「この人は、変わった人だよ」
「説明、なってない」
「とりあえず、いつの間にか隣にいる人程度に思っとけばいいよ」
「不審者…」
刈谷さんが不審者というのは、間違ってないかもだけど、友達を不審者と形容していいのだろうか。
「不審者とは、聞き捨てならないですね」
刈谷さんの声が聞こえたかと思って、横を見ると刈谷さんにしては珍しく、パッと起きれている。
「刈谷さん起きてたの」
「いまさっきですけどね」
「起きたなら、もろもろ離して貰っていいかな」
刈谷さんは寝てる間も、俺を離すことがなかったみたいで、なんならもとより形が複雑化してる気がする。
「あ、義姉ちゃんは初めましてですね」
「ねえ、無視しないでよ」
「私、優くんと同じクラスで隣の席の刈谷と言います。これから、よろしくお願いしますね」
俺の話を完全に無視して、優來へ自己紹介をする刈谷さん。
「隣の席、不審者…」
刈谷さんの情報が、変すぎてるせいか、優來が混乱して、目の中で渦が巻いている。
「だから言ったろ、変わった人だって」
変わった人と言うには、変わりすぎてる気もするけど。
「優、起きてる?あら、起きてたの珍しい。それに、一緒に寝てたの」
俺の部屋に俺を起こしに来た母さんが、一応ノックしてから部屋に入ってきた。
「ていうか、そこにいるのは…」
「お久しぶりです、お母様」
「久しぶりだね〜、刈谷ちゃん」
なんでこの母は、普通に刈谷さんが家にいることに関して、何も思わないんだ。
今の母さんの反応は、完全に玄関とかでのやり取りの反応だったぞ。
「朝食、食べてく?今日はパンケーキなんだけど」
「よろしいのなら」
「おっけー、じゃあ3人とも降りてきな」
上機嫌な母さんが、実子が3人いるかのような感じで、リビングへ呼ぶ。
「はい、優來。トッピングは自由にかけてね」
パンケーキの置かれた食卓の上には、カットフルーツ、生クリーム、チョコレートシロップ、パンケーキシロップが置かれている。
「少し失礼かもですけど、なんだか今日のお母様前に比べて、機嫌がいいですね」
「それね、優來が居るからなんだよ」
優來が部屋から出てきてから、母さんの機嫌はすこぶる良く、最近の朝ごはんは和食からいろいろな料理に変化したレベルだ。
「なに?2人ともこそこそ話してるの?もしかして、お付き合い報告かなんか?」
「違うよ母さん…」
上機嫌なのはいいんだけど、ここまで来ると厚かましいな。
「にしても、綺麗なパンケーキですね」
「そう?ありがとう。今度教えてあげようか?優との結婚に向けて」
ねえ、母さん酔ってんの?絶対酔ってるでしょ。
何故か母さんは、優來の1件といつの間にか家にいる、未来の嫁(今のところ未定)に気分がハイになってるみたいだ。
「いただきます」
「お兄、やって」
「やれって、それくらい自分で…」
「お兄のおすすめ、食べたい」
「しょうがない、やってあげよう」
ふむ、俺のおすすめかとびっきり甘いのを食べさせてあげよう。
「ほら、どうよ」
「胃もたれしてきた…」
優來のパンケーキには、チョコレートシロップ、ホイップクリーム、パンケーキシロップのみをふんだんにかけたものをあげた。
カットフルーツを入れなかったのは、フルーツのさっぱりとした味を入れない、甘さの油コンボを決めるためにそうした。
「まあ、普通にフルーツかけたければ、自分でトッピングしな」
「そうする…」
そういった優來は、フルーツに手を伸ばし甘いパンケーキにサラサラと、フルーツをかけた。
「優くんのは、私がやりましょうか?」
「いいよ自分で…いや、お願いしていいかな」
ちょっと刈谷さんの、おすすめトッピングは気になるな。
て言っても、そこまでトッピングに幅がある訳じゃないから、変わるのはトッピングの量ぐらいだろうけど。
「いいですよ、任せてください」
刈谷さんは、俺の皿を取ってその上に、トッピングをしていく。
「どうぞ」
「綺麗…」
刈谷さんのトッピングパンケーキは、俺の優來に送った、ふざけた量のものとは違い、全てのトッピングの位置、量が綺麗なバランスでパンケーキの上に乗っている。
「やっぱり刈谷さん器用だね」
「ありがとうございます」
「パンケーキまだ作れるから、おかわりなら言ってね」
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「それでは、そろそろ帰りましょうか」
「そうなの、まだ居てもいいのに」
「学校あるので」
そうか、時間あってゆっくりとしてたけど、今日学校あるのか。
「ていうか、刈谷さんこんな時間に帰って何も言われないの?」
「コンビニ行ってた、みたいな言い訳で行けますよ」
普通自分の子供が、夜こっそり出歩くとはなかなか思わないから、その言い訳が通るのか。
しかも、刈谷さん結構そういうルールは、守るタイプに見えるだろうし。
「それでは、優くんまた学校で」
「また後で」
普通に寝れたから、体の疲れと睡眠欲は無いけど、精神的な疲労があるな。
「お兄、学校行くの」
「まあ、今日平日だしな。優來は、なにかするのか?」
「わかんない…」
「そうか、わかんないかー。とりあえず、俺は着替えてくるよ」
どうやら、優來は部屋から出たけど、まだ外には出ていないらしい。何かしらで、連れ出せればいいんだけど。
とりあえず優來の頭を撫でてから、自室へ戻って制服へ着替える。
今日思ったのは、俺の母さん寛容すぎないか、ということだ。




