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隣の○○さんは俺に○○してくる  作者: 黒薔薇サユリ
第1章

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60 隣のいない図書委員水無口さんは誰とも喋らない

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「それでは、文化祭中の当番について決めたいと思います。基本的に当番は、図書室で…」


昼休みの中委員の集まりで、図書委員全員が図書室で委員長の話を聞く。


「これで、当日の説明は終わりですね。大体のことは、紙に書いてあるので、それを見てくてください。あと、今日当番の人はこのまま残ってください」


委員長の終了の宣言とともに、そこらじゅうに座っていた生徒達がぞろぞろと、帰り始めた。


「当番か、確か俺達は…今日か、ありがとう水無口(みなくち)さん」


今日当番があったかを思い出そうとしていると、横で水無口さんが裾を引っ張って教えてくれた。


「当番だからしょうがないとはいえ、面倒くさいな」


そもそも、俺は図書委員がやりたくて立候補した訳ではなく、最後に余った委員会のジャンケンに負けて、今ここにいる。


ちなみに水無口さんも、俺と同じくジャンケンで負けた口だ。て言っても、水無口さん本人は本が好きみたいだけど。


「1番面倒なのは、そもそも人が少ないから俺達いる意味ほとんどないってとこなんだよなー」

(優、これは我らにかされた、重要な仕事なんだ、そんなに言うもんじゃあない)

「あ、ごめん」


水無口さんがまた裾を引っ張って、こんどはこっちにスケッチブックを向けてくる。


水無口さんは、基本的に声を発さない。4月の自己紹介の時も、このフリップ芸で乗り切っていたくらいだ。


普通に変かもしれないけれど、最初の時は会話も何も無かったしマシと言えるだろう。


「適当に本でも読んで、時間潰すか」


そういえば、前に忍さんからおすすめされた本が、忍さんに借りる前に忍さんが退院して読めてないんだった、今日はそれを読んでみよう。


(優よ、センスのいい物読んでおるな)

「あ、そうなんだ。ありがとう」

(それは、少し前に恋愛部門でベストセラーを記録したものだぞ)

「へー詳しい…」


水無口さんのこの喋りかた?口調は、俺の心が少しえぐられるからほんの少しだけ苦手だ。


(まさか、優にそんないい趣味があったとは)

「て言っても、友達に教えて貰っただけなんだけどね」


確かに忍さんのおすすめする本は、全部面白いし忍さんは結構趣味がいいと言うか、センスがいいのかも。


「そう言う、水無口さんは何を呼んでるの?」


水無口さんの読んでいるページを、水無口さんの肩越しに覗き見てみる。


その中に書かれている文字を見る感じ、ファンタジー物っぽい。


(近いぞ優)

「あーごめん」


俺から距離をとって、口元をスケッチブックでかくしながら、少し怒った感じの水無口さん。


最近は、青空さんとか刈谷さんのせいで、俺のパーソナルスペースが短くなった可能性が出てきたな。


「これ、借りていいですか?」

「あ、はい」


水無口さんと話して時間を潰していると、ようやく図書委員の仕事、貸出作業ができる時が来た。


「どうぞー、10日後に返却です」

「ありがとうございまーす」


漫画のバーコードを読み取って、借りに来た人に本を渡す。


「俺も借りようかな。この本続き気になるし」


俺の読むペースもそうだけど、そもそもとして休み時間の間に本1冊を読み切るのは難しいだろうし、この本は借りて家でゆっくりよもう。


「ゆ、優く…ん」

「おう、どうしたの水無口さん」


珍しくスケッチブックではなく、口を開いて話す水無口さん。


「わ、私…も本、おすすめする、から…読んで貰っても、いい?」


やはり、普通の会話が苦手なのか、言葉が飛び飛びで話を続ける水無口さん。


「全然いいよ」


うちの学校は、1回の貸し出しで3冊まで本を借りることが出来るため(漫画は2冊)、2冊同時に借りるくらいは問題は無い。


「あとは、俺が読み切れるかだね」

「だ、大…丈夫、そこまで、長くない…から」


ていうか、ほんとに水無口さんが喋るの珍しいな。仮に喋っても、一言ぐらいなのに。


(だから、安心したまえ。10日もあれば、2つとも読み切れることだろう)

「いつも通りになった」


喋るのに疲れたのか、フリップ会話の方に戻る水無口さん。


「水無口さん、普通に喋れないの?あ、別にバカにしてる訳じゃないんだけど」

(こんな見苦しい声を聞かせる訳には、行かないだろう。そもそも、普段から喋る相手がいないしな)


普段からって、両親とはどういう会話をしてるんだ、水無口さん。


「見苦しい声って、書いてるけど。そうかな?俺は、可愛くていい声だと思うけど」

(何を言うか、貴様。そんな、大胆な)


声を褒めると、水無口さんは恥ずかしいのか、また俺から距離をとってスケッチブックに文字を書いた。


今回は、急いで書いたからなのか、字がいつもより少し汚い。


「大胆って、一応本音なんだけど」

(なぜ、そんなことをやすやすと)

「で、でも…ほ、本当に?」


声の方で、鼻から下をくスケッチブックでかくしながら事実確認をする水無口さん。


「さっきも言った通り、本音ではありますから。それに、スケッチブックで会話すると、少しラグが出るし、その可愛い声で喋った方がいいと思うよ」


水無口さんとの会話は、基本的に俺が話すと水無口さんがスケッチブックに書き込む。という、ステップを踏むため、会話がワンテンポ遅い。


(それでも、我に普通会話は荷が重すぎるぞ)

「荷か…」


まあ、普通に喋ろうとすると、結構タジタジになってるし、そもそも会話がNGなのかもしれないな。


(我と会話をするなら、これで我慢するんだな)

「別にこれが嫌な訳ではないんだけどね」


別に俺は、今のままでもいいんだけど。逆に水無口さん方が、疲れる気がするんだけど。


「そろそろ昼休み終わりそうだし、水無口さんのおすすめの本探しに行こうか」

(そうだな、我のおすすめする本は、ドキドキわくわくの冒険ものだ)


さっきの読んでた本もファンタジー系ぽかったけど、水無口さんの好みってそういう系なのかな。



「それじゃあ、教室戻ろうか」


忍さんおすすめの本と、水無口さんおすすめの本を借りると、ちょうどチャイムがなったため委員の仕事を終わらせ、教室に戻ることとなった。


(そうだな、本の感想、期待してるぞ)

「そこまでいいのは言えないと思うけど、まあ期待しといてよ」


忍さんと話していて、少しは力が着いたと思うけど、それほど本などの感想を言う力はまだないと思う。


「それじゃあ、また今度」


教室内で水無口さんにさよならすると、こくこくと頭を縦に振って答えてくれた。


そもそも水無口さんは、教室で話すつもりないのか、フリップすら使わず基本無視をしている。それに、人前で会話をしたくないのか、俺とも話してくれない。


「あ、ねえねえ水無口さん。今、国語のワーク集めてんだけど、貰ってもいいかな?」

「……」

「あ、水無口さん?水無口さーん!」


話しかけてきた教科係の子を無視して、そのまま過ぎ去って行く水無口さん。


「私の席ここだから、出すなら置いといて!」


机をバンバンと叩いて、水無口さんに知らせる係の子。


「ほんとに、嫌なんだな」

「あ、梶谷くん。国語のワークなんだけど…」

「あ、ごめん忘れたから、無視していいよ」

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