59 聖母と愛の告白少女
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「誰か!ペンキとかの買い出し行ってくれない?」
クラスの文化祭委員の人が、作業をする全体に声をかける。
今日は6時間目の授業を使って、文化祭準備をしている。何気に俺は、この準備には初参加だ。
「俺、行こうか?」
「お、ありがとう。それじゃあ、黒のペンキと赤のペンキ…」
名乗りをあげると、速攻で何を買ってくるかの、言伝をされた。
「でも、1人だとちょっとか。あと、1人か2人梶谷くんに着いてってくれない?」
「じゃあ、僕が行くよ〜」
「あ、青空ちゃん行くんだ…」
青空さんが名乗りを上げた途端、不安そうな声になる委員の子。
「あと1人、1人だけいない?」
委員の子焦り方的に、なんか俺も不安要素として数えられてないか?気のせいと信じたい。
「私、行こうか?」
「あ、ほんと?じゃあ佐藤さんお願い」
佐藤さんが手を上げると、一気に安心する委員の子。まあ、俺も佐藤さんがいると安心出来る。さすがに、青空さんと2人っきりは、俺も少し不安だったし。
「それじゃあ、3人ともよろしくねー。何買うかは、梶谷くんに伝えてあるから」
委員の子に見送られて、俺たちは学校近くのホームセンターへ向かうこととなった。
「それで梶谷くん、何を買うの?」
「確か追加のペンキとハケ、あと手袋に出来ればダンボールもだって」
「たくさんあるね〜。それじゃあ、2人に任せたよ〜」
「青空さんも少しは持ってよ」
まだ、購入する道具だけならいいけど、ダンボールもとなると、さすがに俺と佐藤さんだけじゃ持てない。
「僕は非力だからさ〜、そんな持てないよ〜。僕が持ってるのは、ゆうくんへの愛だからさ〜」
「愛?」
「だから、青空さんそれ人前ではやめなって、勘違いされるんだから」
青空さんが毎回こういうのを言って、それをいちいち訂正するのは真面目に面倒くさい。
「いやね、佐藤さん。これは、青空さんが俺をからかってるって話だから、決して俺が青空さんと付き合ってる訳では無いんだよ」
「も〜う、そんなに否定しなくたっていいじゃないか〜。僕の愛は本物なのに〜」
今のは否定しすぎたかもだけど、最後のは普通にいらないと思うんだけど。
「そ、そうなんだ。びっくりした」
「だから、とりあえずこれは、流しちゃっていい話だから」
「そんなに君が言うならさ〜、僕はキスだっていとわないよ〜」
そのまま後ろから抱きついて、青空さんの顔を近づけてくる。
「ちょっと、青空さん顔近い近い」
「ほんとに、からかってるだけ、なんだよね?」
ほらキスとか言ってるから、佐藤さんに言ったことが半信半疑になってるよ。
「そろそろゆうくんもさ〜、僕によく抱かれてるんだからさ〜、こういうのには慣れようよ〜」
「だ、抱く!?」
「いや、間違ってはないかもだけど、意味違うからね!?」
確かに青空さんに会うと、高確率で抱きつかれるけど、抱く単体で言うと、別の意味にしか聞こえない。
「間違ってはないんだ…」
「もう、早く行くよ」
「僕走れないよ〜」
「じゃあもう」
後ろから抱きついたままの青空さんを、そのままおぶって急いでホームセンターへ向かう。
「えっと、必要なのは…」
さっき書いたスマホのメモを参考に、ホームセンターのDIYコーナーで、言われた色のペンキを探す。
「ゆうく〜んこれは?」
「それは、油性だからダメ」
油性のペンキは床に着くと取れなくなるため、水性でないとダメというお達しがあった。
「じゃあ、これは?」
「そ…れだね」
佐藤さんが持ってきたのは、水性の赤いペンキ。これなら、クラスにあったのと同じだし大丈夫だろう。
「ところで青空さん。そろそろ、降りてくれない?」
「なんのことかな〜」
俺の背中に乗りながら、すっとぼける青空さん。
青空さんを担いで、ここに来たは言いけれど、そこから降りてくれなくて、俺は青空さんの足から手を離したというのに、足を体に絡めて降りてくれない。
逆にこの体勢でずっと乗り続けるのは、結構キツくないか?
「人目引いてるから、降りて。恥ずかしい」
この状態でホームセンターの中を歩いていると、人の横を通るたびに変な目で見られる。
「え〜でも〜僕は、全く恥ずかしくないよ〜」
「青空さんはそうかもだけど、俺は恥ずかしいの!」
「しょうがないな~、そんなに言うなら降りてあげるよ~」
なんで青空さんが、譲歩したみたいになってるのかわからないけど、とりあえず降りてくれてよかった。
「それで~、あとは何が必要なんだい?」
「急に乗り気だね」
「だって~、ゆうくんでできることも~少なくなってきたからね~」
「人をおもちゃみたいに」
青空さんの中で俺のことは、ほとんど暇つぶしの道具でしかないのかも。
「まあ、乗り気になったならいいけど。次は、同じ水性の黒のペンキとハケを5個だね」
「黒のペンキはここにあるよ」
「早」
「赤の隣にあったから」
佐藤さんがペンキを全部見つけてくれたし、残りはハケと可能ならダンボールだけか。
「そういえば、ハケの大きさって指定あるの?」
「特段何も言われてないし、とりあえず1番大きいのでいいんじゃない?」
ペンキと違って、ハケはそんなに種類ないから、ハケは簡単に入手することが出来た。
「そこそこ重いな…」
必要なものを購入してから、2人には先に外に出てもらって、俺1人でダンボールが貰えるか聞いたところ、そこそこな量を貰うことが出来たけど、重い。
「ゆうくんおつかれ〜」
「梶谷くん、少し持とうか?」
「多分大丈夫。それに佐藤さん、青空さんの分も持ってるでしょ」
佐藤さんは両手でハケと、ペンキ2個を持っていて、青空さんは何故かたい焼きを持っている。
「青空さん、ハケぐらいは持ちなよ。しかも、なんでたい焼き?」
「だって〜、佐藤ちゃんがいいって言うから〜。ちなみにこのたい焼きはね〜」
青空さんがまだ口をつけていない、たい焼きをこちらに向ける。
これは、食べていいということだろうか。
「うわ、なにこれ」
たい焼きを1口かじると、全く甘くのないたい焼き。断面を見ると、たい焼きの中に白身魚が入っているように見える。
「鯛入りたい焼き。美味しいかい?」
「びっくりはしたけど、言っちゃえば鯛だしまあ普通」
「そうなんだ、じゃあ僕も食べよ〜」
そのまま俺が口をつけたたい焼きを食べ始める青空さん。
この人、俺を毒味に使ったな。
「はい、佐藤ちゃん」
どこに隠し持っていたのか、別の新品のたい焼きを佐藤さんに向ける青空さん。
「いや、悪いからいいよ」
「まあまあ、これは普通のだかさ〜」
「それに、私両手塞がってるし」
「そういえば〜」
「ハケぐらいは持ちなよ、青空さん」
今の佐藤さんは、片手にペンキ2個持っていて結構きつそうだし。
「しょうがないな〜」
「自分の意思で来たんだから、それくらいは当然でしょ」
「私はそんなにキツくないよ」
佐藤さんは、優しいしこういう時痩せ我慢するタイプの人だから、キツくないという言葉はそこまでの信頼がない。
「とりあえず、佐藤さんにたい焼き食べてもらってから、青空さんはハケ持ってよ」
「は〜い。じゃあ佐藤ちゃん、どうぞ」
「ありがとう。甘い」
佐藤さんに渡したたい焼きは、ちゃんとあんこだったみたいで、佐藤さんの反応は普通だ。
「あ!やっと帰ってきた。3人とも遅くない?」
「いや〜ごめんね〜。ゆうくんが、なかなかやる気出してくれなくて〜」
「それ、青空さんでしょ」
たい焼き食べたり、道具探しで少し時間をとったりで、教室に着いた頃にはもうすぐ6時間目が終わるというところだった。
「ていうか、佐藤さんいてこれかー」
「いや、佐藤さんは全面的に悪くないから。どちらかと言えば、俺と青空さんだから」
佐藤さんは、ずっと真面目にやってくれていたし、悪いと言えば青空さんと一応俺だろう。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「まあ、別にただの買い出しだからいいけど」
そうか俺は買い出しで、文化祭準備をサボったことになるのか、結構割いいな。
「でも、大丈夫。私、これからの準備全部参加するから」
「別に攻めてる訳じゃないんだけど…」
佐藤さんのやる気に少しばかり、押されている委員の子。
「まあ、とりあえずいいや。買い出しありがとね」
購入した道具を持って、委員の子はハケとペンキを配りに行った。
「佐藤さん、ほんとにいろいろとごめんね。青空さんが」
「え〜僕なの〜」
「別にいいよ。私も、楽しかったし。本当は、2人で…」
「どうかした?」
「い、いやなんでもないよ」
少しだけ顔を赤くした佐藤さんはそのまま、ダンボールを塗っているところへ逃げていってしまった。
「よし、ゆうくん。頑張ったご褒美に、チュウして〜」
「唐突すぎなやしませんかね?まだ、頭を撫でてとかならわかるけど」
そう言うと、青空さんはつまんない、見たい感じで口を尖らせとぼとぼとどこかへ行ってしまった。




