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隣の○○さんは俺に○○してくる  作者: 黒薔薇サユリ
第1章

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45 石橋さんの料理話

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「まず!」


石橋の料理を口にした調理部部員が、大きめの声で言う。


過去、中学の頃の石橋の料理は、まずさを極めていた。


まずそもそもの話、石橋はなぜ料理を始めたのか、それは中学1年春。皆それぞれが、なんの部活に入るか悩む時期。


石橋は、悩んでいた。


「お母さん部活どうしよ」

「お母さんに言われてもね、やりたいこととかないの?」

「ないから聞いてるの」


別に無理に部活に入る必要はないけれど、何もしないのは暇になるからと、部活紹介の紙を見ながら名やんでいた。


「運動は?」

「私、そんなに好きじゃないし。それにきつそう」

「んなわがままな…」


適当に聞いていた母が、しっかり考えてあげようと石橋のもとに行く。


「そういえば、体験はどこか行ったんだっけ?」

「とりあえず、友達が行くから吹奏楽とバドミントンに行ったけど」

「そこじゃダメなの?」


なにかが気に食わなかったのか、微妙な反応を示す石橋。

 

「あんたねー。じゃあ、これは?」


母が見せたのは、調理研究部のページ。


「調理研究部?」

「ここなら、日数もそこまで多くなさそうだし。それに、料理の練習にもなって、いいでしょ」

「確かに…」

「それに、あんたが料理できるようになれば、お母さんが楽になるし」

「それが本音じゃん!」


母に言われて、体験入部に行った石橋は、研究部の空気感、その他にもしっくりきたのか入部することにした。


最終的に料理研究部は、3年3人、2年1人(幽霊部員)、1年4人となった。


石橋が料理下手を自覚したのは、入部後少し経った当たり。


「じゃ、今日はおのおの好きなものでも作ろうか」


いままで、ペア等で行っていたものを1人で作ろうという時だった。


「まず!これ誰の」


石橋の作った揚げ出し豆腐を食べた、3年部員が全員に聞く。


「私ですけど、まずかったですか?」

「あー、ごめん声大きかった。ちなみに味見した?」

「ちゃんとしましたよ」


その後、全員石橋の料理を食べたところ、満場一致でまずいということになった。


作った本人さえも、まずいと思った。


「石橋ちゃん、今までちゃんとできてたよね?」

「は、はいできてたはずなんですけど」


これは、後にわかることなのだけれど、石橋の料理がまずくなる条件は、石橋1人で料理した時に発生するらしい。


そんな石橋と優との出会いは、複雑なものではなく、ただ部活で出会っただけだった。


「今日もいつも通り、1人づつ料理してもらおうと思ったんだけど、それだとつまんないので、味見係として教室で暇そうにしていた梶谷優くんを呼びました!」


2年になって、部活内最高学年になった石橋達は以前と全く変わらずの部活動をしていた。


「俺、そんな理由で呼ばれたの!?なんか、もっとさ理由とかなかったの?」


自分の呼ばれた理由が、適当すぎて部長に抗議する優。


「て言ってもね、梶谷くんって繊細な舌というより、大雑把な舌とかの方でしょ?」

「そうかもしれないけど、お世辞でもいいからもっといいこと言って欲しかったよ」


優を審査員に迎えた、調理部はそれぞれが料理を作り始めた。


優が審査員として呼ばれたのは、料理の順位をつけてもらうために呼ばれていた。そのため、石橋は全力、その他部員はほどほどに力を出して料理している。


(調理部員の皆ならまだいいけど、流石に私の料理知らない人には、少しはいいもの作らないと)


部員の人じゃない優に料理が下手なことを、知られるのが恥ずかしいというのもあってか、いつもより慎重に料理を作る石橋。



「ということで、ほぼ全員完成したので早速食べていただきましょう」


ほぼ全員の料理が完成したため、それぞれの皿に少量の料理が盛られている。


「それじゃあ、いただきます」


優が1人目、部長の料理を口にする。


「うん、美味しい」


美味しい、優から出たのはこの一言だけだった。


「うん、まあ期待はしてなかったけど、感想もっとないの?」

「そういわれましてもね、僕は大雑把な舌なので。しいて言うとするなら、味付けが好みかな」

「それで、許してやろうではないか。まあ、こんな感じで食べて感想言っていってくれや」

「何様だ。てか、俺毎回ディスられるの?」


そんな感じでディスられたり、ディスられなかったりしながら、品評会を続けついに石橋の料理がやってきた。


「ようやく来たね、石橋ちゃんの料理。先に言っとくけど、気をつけてね」

「わからんけど、わかった」


何を考えたのか、美味しすぎるから気をつけろだと思った優は、楽しみな顔で料理を口に入れた。


「まず!」

「そ、そんなぁ…」


いつもより、さらに頑張ったからか涙目で崩れ落ちる石橋。


「気をつけなって言ったでしょ、まあ私達も食べるんだけど」


調理研究部なので一応、全員分の料理を一口食べるのが、ルールとなっている。


そのため、石橋の料理がまずいとわかっていながら、全員一口食べまずいと言う。


「そんなに?うぅ、まずい…」


頑張って作った料理がまずいと言われ、実際自分で食べてもまずいと思い石橋の精神がボロボロになる。



「さてさて、全員食べ終わったし。誰が1番良かったか、教えてもらおうじゃないか」

「ほぼ、前半覚えてないけど。そうだな、1番良かったと言うなら、そこで倒れてる子かな」

「え、私?」


完全に泣き崩れ状態の、石橋を指さす優。


「え、なに石橋ちゃんが美味しいって言いたいの?ちょっと、私情持ってこないでよ」

「違うよ!」


料理ではなく、人を指したせいで部員全員からとてつもない勘違いをされる優。


「確かに、料理はまずかった。とてもまずかった。そう、まずいんだよ」

「3回も!?」

「まずかったんだけど、1番思いがこもってたって言うのかな。作ってる時の、顔がね」


屁理屈になるのだろうけれど、部長が言ったのは1番良かったもので、味自体は言われていなかった。


「君はそこを考慮するタイプの人間なのかー」

「舌が大雑把なので、やはりそこを入れないとね」

「当て付けかよ。ちなみに、味ならどれが1番?」

「あ、それはこれ」

「早!?」


味を聞かれると、食い気味で別の料理を指をさした。


「まあ、今回の審査員さんの中では、味のマイナスを凌駕するものがあったってことでしょ」

「そんな感じかな、味はちょっとって感じだけど。まあ、やっぱ作り手の顔が1番大事だよね」


舌が大雑把な優は、そう笑顔で答える。


(こんな、クソみたいな私の料理を認めてくれる人がいるなんて…)


少女は話しかける、出会ったばかりの男子に。1つのお願いをするために。


自分の()()という思いを抱えながら。


「あの、梶谷くんだよね…」


最終的に彼女が、薬を盛る理由は分からないのだけれど。それは恋の暴走、のようなものと信じたい…

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