42 佐藤さんの経歴
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超のつくお人よし、佐藤は今も昔も、変わらず周囲に優しさを振りまいている。
逆にその優しさあってか、勘違いされるた経験が何度かある。
佐藤に勘違いした男の、だいたいは「あいつ、絶対俺のこと好き」という勘違いをしている。
ここでは、その勘違いによって起きたことを、2つ見てみよう。
勘違いによって、起きた面倒ごとは両方とも佐藤が中学2年の時だった。
1つ目は佐藤の優しさに勘違いをして、滅多に告白のしない男が、勝機を感じ告白をしたというもの。
「さ、佐藤さん、もうわかってると思うけど好きです僕と付き合ってください」
「え、」
突然のことに困惑する佐藤。
この日佐藤は、この男子に話があるから残ってくれとだけ言われ、佐藤はなにもわからずここに居ることになる。
「私が知ってるっていうのは…」
「え?佐藤さん僕のこと好きだから、僕に優しくしてくれてたんじゃ…」
自信があったけれど、佐藤のガチ目に引いてるような顔を見て、自分の現状に気づき始め、どんどん体温が下がっていく男子。
「そ、それでも僕は、佐藤さんが好きです!」
勘違いとわかったけれど、好きな気持ちは変わらず再度佐藤に告白しなおす。
「そうなんだ、ありがとう。でも、ごめんね。私まだ恋人は」
「いや、こっちこそごめん。困らせちゃったよね。ほんとに」
そう言って、男子は佐藤には気持ちの落ち込みを悟られないよう、気をつけながら教室を出ていった。
そんな中、佐藤は佐藤でお節介なのはわかっているけれど、告白してきた男子が傷ついてないかを心配していた。
これが、勘違いされやすい佐藤の中でも記憶に深く残っている、勘違いだったりする。
そして、もう1個の方も佐藤の記憶に深く刻まれている。それは、単純な恐怖に近いものなのだろうけれど。
「佐藤、今度の日曜日とか空いてる?どこか遊び行かない?」
佐藤が幼馴染と話しながら歩いていると、後ろからクラスの中でも陽キャの部類の男子に突然、遊びに誘われた。
「特に何もないからいいんだけど、友達も誘っていいかな?」
さすがに、男子と2人きりは…、と思った佐藤は友達も誘っていいかと、聞いてみる。
「今更、そんな緊張しなくたっていいだろ?俺たちの仲なんだから」
「い、今更?仲?」
佐藤には何が何だか分からなかった、なんせこの男子とは遊んだことなどないし、行くにしてもクラスの打ち上げなどぐらいしかなかったから。
「何とぼけてんだよ、俺たち付き合ってるんだから、そんな恥ずかしがらなくたっていいだろ」
「え、佐藤ちゃん彼氏いたの!?」
「居ない、居ない」
唐突な彼氏発言に驚いた幼馴染に、必死の否定をする佐藤。
「そもそも、私告白とかされてないし」
「え?」
それを聞いた幼馴染が、軽蔑じみた目で男の方を見る。
「いやいや、佐藤俺にだけ優しくしてるんだよね?それって俺のこと好きで、それで俺も好きだからほぼ付き合ってるも同然だろ?」
トンデモ理論を展開して、2人へ弁明の言葉を送る。
「佐藤ちゃん、この人だめだ逃げよ」
「う、うん。ごめんね、でもさすがに…」
佐藤が恐怖で軽く吐き気を覚えてるのに気づいた、幼馴染が佐藤の手を引いて、女子トイレへ逃げる。
「ちょっと、待って!ほんとにごめん、でも好きなのは本当なんだ!」
男の言葉は虚しく、2人へ届くことは無い。
「お前、もうちょっと人の心とか学ぼうな。俺も手伝うから」
「はい…」
一部始終を聞いていた、男の友達が慰めるように肩に手を置いく。
そんなこんなで、佐藤の中でもらこの思い出は、自分の誕生日と同じくらいの記憶の引き出しにこれは入っている。
そんな異色な経歴を持つ佐藤は、もちろん優に惚れている。それは、優に対して母親のように甘やかす形で、行動に出てきている。
佐藤が優のことが好きになったのは、夏休み前のことだった。
「佐藤、これ職員室に運んどいてもらっていいか」
「はい」
佐藤は教師達からも、全幅の信頼を寄せられているため、よく雑用を頼まれる。
今回頼まれたのは、集めたばかりの問題集。この問題集は、そこそこの厚さがあるため佐藤が1人ですべて持っていくには、回数をわける必要がある。
「佐藤さん、手伝おうか?」
「いいの?でも、梶谷くんに悪いし」
「いいから、いいから」
「そ、そうありがとう」
1人でかかえこもうとしていたとこに、優が助けに入った。
「ほんとにありがとね、梶谷くん。お礼になにか飲み物でも…」
「いや、別にいいよ。そもそも、あれを1人でやる方が普通じゃないし」
「そうかな?」
佐藤はいままで、あれぐらいの物をだいたい1人で運搬などをしてきている。
その感覚のせいか、あれぐらいは普通というのが彼女の中での常識だった。
もちろんオセアニアでは常識じゃ無い。
「佐藤さん、これ理科室運んで貰ってもいいかな?」
「は、はいわかりました」
次の時間は英語の小テストのため、その復習をしているなか先生に頼まれた佐藤。
少し、躊躇いながらもそのお願いを承諾して、ものを運び始める。今回は、そこまで重さは無いけれど、安定しない。
「手伝うよ、佐藤さん」
「でも、次小テストだし…」
「まあまあ、俺はなんとかなるし大丈夫」
昨日の夜ちょこっと勉強したくらいの優が、佐藤の助けに入った。
ちなみにこの後のテストは、佐藤はそこそこいい点を、優は半分くらいしか取れなかった。
この二件以降も、優は佐藤がなにか頼まれる事に佐藤の助けに入るようになった。まるで、ストーカーのように。
「なんで、梶谷くんはそんなに私のこと手伝ってくれるの?」
ある日気になった佐藤が、優に聞いてみた。
「佐藤さんってさ、先生からよくお願いされるし、その他にもお願い良くされてるでしょ」
「そうだけど…」
「それで、俺思ったんだよね。佐藤さんかかえすぎて、いつか大変なことになるんじゃって」
「でも、私いままでもずっと、こんな感じだったし。そんな、大変なことには」
「とりあえず佐藤さんは、人に甘えることを覚えないとね」
この言葉には、佐藤自信聞き覚えがあった、昔幼馴染にも同じことを言われていた。
「佐藤ちゃんは、一人で抱えすぎ!」
「でも、皆私を信頼して頼ってくれてるわけだし…」
「それでも、限度ってあるでしょ」
佐藤の人生は、ずっと変わらず周囲に優しさを振りまいているため、今も昔も基本的に一人で抱え込むことが多かった。
そんな時に幼馴染、優に言われたのがこの言葉だった。
「言ってくれれば助けるから、俺に甘えるなり、頼るなりして欲しいな。て言っても、彼氏でもない男に甘えるはちょっとあれか」
ナルシストっぽいこと言ったと思って、微妙な笑みを浮かべる優。
それでも、佐藤の心にはこの言葉が刺さった。いままで、幼馴染以外には言われたことの無い「頼って」という言葉、佐藤の心にはその言葉が深く刺さった。
「まあ、とりあえずなにかあったら俺にでも頼ってよ。微力でも力になるし」
「う、うんわかった。なるべくそうしてみる」
実際これが、「好き」なのか佐藤本人は分からない、けれでも優に対する、心のときめきという事はわかっている。
(でも、なんで梶谷くんは私にここまで…)
「どうかした?佐藤さん」
「なんでもないよ。早くこれ置きに行こ」
(梶谷くんの本心はわかんないけど、私と同じだったら嬉しいな)
そう自分のことを整理して、優の後ろを着いていく。




